『永遠の歌姫 美空ひばり』 (NHK BSまるごと全集)
昨日に続きましてひばりさんです。
う〜む、すごい。今さらこんなこと言うのもなんですが、本当に上手いですね。もしかするとホントに世界一のパフォーマーかもしれないなあ。
たとえば、あの表現を楽器でせよ、と言われても絶対に無理です。今日もギタリストの村治佳織が出てましたけど、いろいろなプロの演奏家から「美空ひばりが理想」という言葉を聞いてきました。たしかにそうですね。私が人前で弾く機会の多いバロック・ヴァイオリンなんかも、ああふうに表現できればいいでしょうねえ。語るように歌い、歌うように語る…誰かがそう言ってました。
まず無駄な力みがない。軽みがあるんですね。あの表現はくどすぎるとか言う人もいますけれど、よく聴いてみると、ひとフレーズずつ歌詞を生かす歌い方をしてるんですよね。そういうふうに言葉と歌唱との有機的な関係を感じながら聴けば、まったく過剰な点はないことに気づきます。そういうことを気づかせてくれるだけでも素晴らしいパフォーマンスなんですよ。
音程の正確さもよく指摘されますが、これもよく聴くと、正確というよりも完全なコントロールなんですよね。そして、アーティキュレーションやディナーミク、声色も含めれば、音名としてはたった一つになってしまう音も、彼女にかかればほとんど無数の可能性を持つことになる。その無限の可能性の中から、瞬時に、即興的に、最適な音を探し出して、いや探しているわけじゃないな、自然に見つけて正確に表現してしまうわけです。
こういう能力というのは、音楽に限らず、文学や絵画などにも共通するものです。天才とはそういうものです。まず無限の可能性を持っている。変なこだわりがないから無限である。そして、そこからその場で最適なもの選び出す。さらにそれを完璧にプレゼンテーションする技術。
あと、今回お宝映像を見ていて発見したのは、彼女のリズム感ですね。彼女の歌唱を支えているのはリズム感ですね。あらゆるジャンルに対応できた彼女ですが、それぞれに固有のリズムを完璧に自分の体で表現しているすんです。歌はその体の動きに乗って絶妙にスウィングしてました。どの歌でも独特の心地よいスウィング感のようなものがあるんですね。あれはコピーしにくい。歌でも楽器でもちょっときついなあ。ひばり節とはあのリズム感のことだったんだ!
いやあ、やっぱり音楽には映像が必要ですね。つまりライヴです。最近そのことを強く思います。録音文化ってやっぱり特殊だ。そういう意味でもNHK素晴らしかった…なんて、実はNHKとひばりって微妙な関係なんですよね。NHKには、ある時期のひばり映像がないはずです。そういう意味ではNHKと民放が組んで特集しなくちゃ完全じゃありません。いずれそういう時が来るかもしれませんね。
この番組が終わったあと、サタデーライブでブルース・スプリングスティーンやってました。それはそれで良かったんですけど、やっぱりどっちかと言うとひばりだなあ。それこそ「もののあはれ」が分かるようになったんですね、私も。日本人て偉いなあ。不随意、自分の思い通りにならないものに「美」を見出すのですから。萌え=をかし(オタク文化)はネオテニーと言えますが、その裏にはやはり「もののあはれ」を感じる「大人」な何かがあるんだと思いました。ある意味それがあるから、それを意識するからこそ、あえて「子ども」ぶるのかもしれませんね。その両者が相矛盾するのではなく、止揚されて存することこそ、日本文化の特徴なのかもしれません。
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