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2006.06.20

『弁護士のくず』 井浦秀夫 (小学館)

409187361801_pe00_ou09_scmzzzzzzz_v55333 「光市母子殺害事件」の最高裁判断、まあ日本の司法の良き前進ととらえておきましょう。それにしても本当に言葉にできないくらい辛い事件でした。ここではっきり申しておきますが、私は死刑制度に基本的に賛成の立場をとっています。もちろんいろいろな迷いを経て今の位置に到達しました。授業でも何度も取り扱ってきましたし、そのたびに生徒のいろいろな意見も聞くことができました。やはり制度としての死刑は必要です。死刑という制度はあっても、それを処すに該当するような犯罪が起きないことを理想としたいところです。
 今回の弁護人たちは、ある意味有名な死刑制度廃止論者です。そこに私などはやや違和感を覚えるのですが、まあ、たとえそうでなくとも、今回についてはいかに死刑を回避するかという法廷闘争になることは理解できます。弁護士さんのお仕事が、はたから見ると、まるでゲームの戦略家に見えてしまうのも事実ですし、「法」というそれこそ「ルール」の中でどう戦うか、いかに依頼主に有利に裁判を進めるかが、実際のところ彼らの仕事というわけですから、そこは責められませんけれど、なんというのかなあ、私の「法」への違和感というものはぬぐい去れないんですよね。皆さんもそうだと思いますけど、結局、論理と感情と倫理とのせめぎあいなんです。教え子は何人か法学を勉強しに大学に行きましたが、私にはちょっと無理っぽいですね。弱い人間なんで。校則を守らせるのも一苦労です(笑)。
 さて前置きはこのへんで。今日はそんな弁護士さんのお仕事を描いた『弁護士のくず』を、生徒に借りて読んでみました。今テレビでもドラマ化されて放映中ですが、そちらは私は観ていません。原作であるマンガの方は、たいへん面白かった。井浦さんの作品ではAV烈伝を少し読んだことがありましたが、かなり違うイメージでしたね。まあ、スケベというテーマにおいては重なっている部分もありますが。
 まずは大変勉強になったということです。個性的な(スケベな)弁護士九頭元人が独特な手腕で弁護活動を繰り広げ、難問を解決していくという、ある意味典型的なストーリーですけれど、それらの裏側に見え隠れする人間模様や社会問題を、実に上手に読者に示している。いろんな意味で勉強になりますよ。
 そして感じることは、やっぱり自分には弁護士は無理だなってこと。必ずしも弱者の味方というようなものではありませんし、もちろん勧善懲悪でもありません。守るべきが、自分の、また依頼人の何なのか。さっき挙げた三つ、論理(ルール)なのか、感情なのか、倫理なのか。そんな次元で悩むような仕事を、私はできません…って、教育もその三つのせめぎあいじゃないの?…(笑)。
 ところで、主人公の九頭元人、ビートたけしそっくりですね。トヨエツじゃないなあ。それから、このごろのマンガって画力はほとんど問われないんですね。それだけ文学に近づいたということだと思いますが。

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コメント

欧米のやぅに(って映画でしか知りませんが)司法取引で裁判を迅速化する方向になっていくのでしょうね。

漫画の絵が汚くレベルの低い物になっていくのは
幼い頃の『少年』や『漫画王』のファンとしては
残念な事です。

山口の被害者の男性、今少しひとなつっこく訴えてくれたほうが共鳴者も増えると思います。

あれだけの被害に遭われた方に対して、そして自分の人生までも裁判と世間との戦いに方向変換された方に酷な言い方かもしれませんね。

マスコミもいつものやぅに喉元過ぎれば・・・・

投稿: ricanikanmuri | 2006.06.21 14:46

ricanikanmuriさん、コメントどうもです。
全く困った世の中ですねえ。
まあ自分も含めてですけど、結局他人は興味の対象でしかなかったりして。
私の仕事もそうですが,弁護士さんなんかも、他人事が自分の仕事なんですよね。
いや、仕事ってみんなそういうものか。
マンガについては、ホントやばいですよね。
ここのところ読んだものがほぼ全てダメ絵でした。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.21 17:07

先生こんばわ。今回の「母子殺害」に関しては本当に腹立たしい事件ですね。加害者の親のコメントは「昔の手紙の内容を今更裁判の資料とされても・・・」という信じられないコメントでした。
手紙の内容は友人に宛てた内容で「男は女を求めるもの・・・」。この親にしてこの子ありと思わざるを得ません。被害者の旦那さんは選ばれた人間なのかなぁっと思いました。子を持つ親としては加害者の男性は当然の罰を受けるべきと思います。毎回テレビで見る度に泣けてくるのは私だけではないと思います。

投稿: もりやま | 2006.06.21 23:29

もりやまさま、いつもどうもです。
あの父親なんですか!?
まさにDQN親子ですねえ。
ついついこちらの心まで汚くなってしまうほど、
ホントに腹が立ちます。
腹が立つというより、なんか哀しい、
むなしいような変な気持ちになっちゃいますね。
あの事件が起きた時、娘が殺されたお嬢さんと同じくらいの歳だったものですから、ニュースを見れませんでした。
胸が苦しくて苦しくて。
ありえませんね。
でも、時が経つにつれて、そこまでの不快感はなくなってしまった。
旦那さんの苦しみは全く変わっていないでしょうに。
前のコメントにも書きましたけど、結局自分のことではないんだなあ、と思うとまた妙な虚しさに襲われます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.22 06:08

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