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2006.05.19

珍説?「ありがたきもの」(枕草子)

17ghoo 授業でやりました。珍しいことです。こういう普通の教材使うの。
 まあよく知られた段ですね。たしかに面白い。けれど、一般に言われている解釈やら、学校で教えられている現代語訳だと、ちょっと違和感があるんですよね。私にかかると古典作品も全てギャグになってしまいます。生徒もかわいそうだなあ。
 で、いちおう普通の解釈もしつつ、また真面目に文法の勉強なんかもしつつ(これがまた困ったチャンなんですよね、学校文法ってやつ)、こんな話もしました。あくまでネタとしてですよ(実は本人はいたって本気なんですけど)。
 この「ありがたきもの」、皆さんご存知のように「有難きもの」であり、つまり「めったにないもの」を列挙しているわけですね。それには異論はありません。姑によく思われる嫁とかね。たしかに現代に通じて面白い。上司の悪口言わない部下とか。
 で、実は一番面白いのは最後のところでして、そこは私は「レズ」の話だと思ってるんですよ。宮中のドロドロですよ。「契り」とか「語らふ」とかね。そこんとこもいろいろと書きたいところですが、今日は少し真面目に、その一つ前のところを取り上げます。まずは原文と一般的な口語訳をどうぞ。

 物語・集など書き写すに、本に墨つけぬ。よき草子などは、いみじう心して書けど、かならずこそ、きたなげになるめれ。
(物語や歌集などを書き写す時に、原本に墨をつけないことはめったにない。よい草子などは、たいそう注意して書くけれど、かならずきたなくなるようだ)

 まあ、こんな感じでしょうかねえ。言いたいことはよくわかります。平安時代にはコピーがありませんからね。最近でも、昭和時代には、レコードを借りてキズつけたり、なんてこともありましたな。それももう古典の話か。
 さて、それでですねえ、問題は「めれ」なんですよ。「めり」っていう助動詞が已然形というやつになってるんです。「こそ…已然形」、係り結びですよ。懐かしい響きでしょう。
 で、もとの「めり」なんですけど、世間では「推量」とか「推定」の意味だとか言われてるんです。「ようだ」「らしい」と訳すべきだって。まずそこに異議ありなんです。細かいことは省略しますが、私の経験によるともっとはっきりしてるんですね。結構確信してる。「…と見た!」って感じのような気がするんです。「見え+あり」で視覚的根拠による断定。私の感覚だと、「けり」とか「なり」とかの「+あり」型の助動詞って、現在の状況判断なんですよ。ま、誰もこんな感覚に賛同してくれないだろうけど。
 それでは枕草子のここの部分はどうなんだということですが、つまりこういうことです。
 清少納言はここで実にセンスの良い遊び心を発揮してるんです。彼女らしいユーモアであり、いたずらです。
 当時はコピーはありません。だからみんな書き写していた。実際枕草子には古今にわたって多くの写本が残っています。例えば上の写真は17世紀江戸時代に写されたもののようです。今も教室では生徒たちがノートに写本していますね(私はやらせませんけど)。
 つまり、この「ありがたきもの」も何度も写されてきたわけです。もちろん引用部分も。で、皆さんも写している立場になって読んでみて下さい。「よ き 草 子 な ど は…」って書いてくわけです。そうすると、最後に「必ずこそきたなげになるめれ」って写すことになるんですよ。で、結論。清少納言の真意は…、
 「すばらしい草子(大人気の枕草子)を写す時は、細心の注意を払うだろうけど、ゼターイ!汚くなると見た!」
であります。
 そう、写している人はここで「ギクッ」です。そこにいないはずの清少納言が後から見てて、「おい、さっき墨飛ばしただろ」ってツッコミ入れるんです。なにしろ、当時は汚さないことは「めったにない」わけですから、みんな「ギクッ」です。
 借りたレコードにちょっと傷つけちゃって、まっ黙ってりゃわかんねえかって思ってたら、いきなり「おい、さっき俺のお気に入りのレコードに傷つけたろ!」っていうセリフが入ってたという感じ。
 「かならずこそ」っていう言い方も特別な感じですし、とにかく「めり」のニュアンスを生かさないと。今、清少納言が見てるんですよ。そこんとこ、いいかげんに訳しちゃいけません(笑)。
 きっと、私の背後で、清少納言が「やっと私の真意が伝わったわ」って喜んでます。
 今日はこんな「めづらしき」説を紹介しました。ちなみに古語では「めづらし」は「愛づらし」、すなわち「すばらしい」っていうことです。ハハハ。

『枕草子』に見る「空気嫁」&「痛杉」(かたはらいたきもの)
『をかし』の語源…『萌え=をかし論』の本質に迫る!

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