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2006.05.21

モーツァルト 「ヴァイオリン・ソナタ集」 若松夏美・小島芳子

Mozart: Violin Sonatas Natsumi Wakamatsu(Vn) Yoshiko Kojima(Pf)
B00005jj4101_scmzzzzzzz_ 複雑な気持ちですね。しかし、美しい。今日ナクソス・ミュージック・ライブラリーで聴きました。
 この録音でフォルテピアノを演奏されている小島芳子さんは、おととしの今日、5月21日の早朝にお亡くなりになってしまいました。本当に辛い、本当に残念なことです。前年の夏、すでに体調がすぐれなかったにもかかわらず、都留音楽祭の講師をお引き受けになり、すばらしいレッスンと演奏で私たちを感動させてくださった。本当に感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。そしてその後、ご本人の遺志をくんで音楽祭に献身的に協力くれていらっしゃる、ご主人福澤宏さんにも敬意を表したいと思います。
 若松夏美さんは、私のバロック・ヴァイオリンの恩師であります。最近はちょっとお会いする機会に恵まれず、年賀状だけのおつきあいになってしまっていますが、ヴァイオリン以外でもいろいろと楽しい思い出がございますね。このところの活躍ぶりは瞠目に値します。まさに演奏家として円熟期を迎えているという感じ。
 さて、このCDは、そんな私の尊敬する、そして大好きな演奏家であるお二人が、まさに絶妙のコンビネーション、心の通ったコミュニケーションを実現した名盤です。
 モーツァルトの同作品は以前にこちらを紹介しました。そこでも書きましたけれど、私にとってモーツァルトはちょっと照れ臭い音楽というか、そうですねえ、究極のお子さま音楽…いや、お子さまじゃ失礼だな、ネオテニー音楽とでもいいますか、そう純粋なままに成熟してしまった稀有な音楽に感じられるんです。
 今日も実はこのCDをかけていたら、騒いでいた娘たちが静かになって、なぜか勉強を始めました。動物にモーツァルトを聞かせると…という話はこちらに書きましたね。得意の毒舌で申しますと、お子ちゃまでも動物でもわかる音楽なんです。
 しかし、これは実は理想的な事態なのかもしれません。人類が発見し発明してきた様々な表現の中で、子どもが、大人が、そして動物までもが、理解し、共鳴し、心地よい気分になるものなど、他にないわけですから。
 で、そういった音楽を、純真ならざるワタクシなどは、それこそ純粋に受けとることができずにいる。聴くのさえ苦手にしているんですから、演奏するなんて到底無理です。適当に弾いちゃうことはありますが、どこか真剣に取り組んでいないんですね。
 どういう演奏をすればいいのかは、漠然ながらわかっているんですよ。つまり、こういうふうに弾けばいいと。それが、このCDにおける女性お二人の演奏なんです。ただただ美しく楽しくアンサンブルすればいい。気の合う友達との会話のように、自然に屈託なくおしゃべりすればいい。そういうことなんだと思います。
 とにかくそういった意味で、この録音は実に美しい。モーツァルトの二つの楽器に対する思い入れは、ほぼ同等と言ってもいいのかもしれません。しかし、この録音を聴くと、やはりこれはピアノが主役だなと感じられます。標題にはヴァイオリン・ソナタと書きましたが、実際にはヴァイオリンの伴奏付きピアノ・ソナタと言ってもいいかもしれない。そういう本質を見事に表現した、実に美しい演奏なんですね。
 その美しさに感動すればするほど、小島さんの死は悔やまれます。また、こうした演奏を通じて心を通わせた若松さんの心痛、そしてもちろん最愛の奥様をなくされた福澤さん、またご親族の方々のお悲しみは、察するにあまりあります。しかし、私としては、ただただ小島さんが残して下さったこれら素晴らしい偉業に感謝し、そして素直に感動するしかありません。あらためまして、ご冥福をお祈り申し上げます。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

海外(ドイツ)の放送局のインターネットラジオを聞いていたら,軽妙で楽しいモーツァルトが流れてきました。これはいいな,と思ったら,なんと日本人コンビの演奏で,演奏者について調べていたらこのブログにたどり着きました。ピアノの方は亡くなっていたんですか・・・。名盤だと思います。

投稿: IO | 2008.09.03 05:18

IOさん、コメントありがとうございました。
いやあ、本当に素晴らしい演奏だと思います。
ある意味このお二人にしかできないモーツァルト世界ですね。
お二人のお人柄やご関係までもが、この演奏に見事に表れていると思いますよ。
ここまで来ると、もう時代とか国籍とか楽器とか録音とか、そういう次元ではありませんね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.09.03 08:52

夏美さんは小学校で1~4年生までクラスメートでした。利発な方で、2、3度全校児童の前でのバイオリンの演奏を聞く機会がありました。田舎育ちで大正生まれの両親を持つ私はバイオリンは別世界のものでしたが、今思うとそれだけ楽器に対して純粋な感受性があったような気が致します。その後、世界的に活躍されておいでのようでした。20代後半の頃お見かけしましたが、当時不遇な日々を送っていた私は声を掛けそびれてしまいました。銀河鉄道333のメーテルのような感じでした。
音楽にもバロックにも疎いのですが20代から聞いている冨田勲の“SPACE FANTASY”から、バッハの“Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ” が大好物です。因みに5.21は私の誕生日です。たまたま4年後のコメントとなりました。

投稿: 矢道の雪 | 2010.12.11 04:09

矢道の雪さん、こんばんは。
そうですか!夏美さん、まさに日本を、いや世界を代表するバロック・ヴァイオリニストですよ。
メーテル!ww よく分かります。
私も最近お会いしていないんですが、来年はぜひ共演を!なんてずうずうしいこと考えています。
その時は、ぜひおいでください。
ちなみに、私もバッハは冨田勲さんから入りましたよ。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.12.17 18:42

非常に蛇足ですが、昔の活発な印象もあったので「999」じゃなくて、「333」ですよ。
あっ、すみません。ちょっと懐かしかったものですから、調子に乗ってしまいました。
共演、実現するといいですね。皆さんのご活躍を期待いたしております。

投稿: 矢道の雪 | 2010.12.20 09:19

矢道の雪さん、333ですか。
こりゃまたマニアックですね(笑)。
でも、分かりますよ!

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.12.28 14:11

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