『もやしもん』 石川雅之 (イブニングKC 講談社)
東京農大の醸造科学科に通っている教え子が貸してくれました。前々から農大の醸造に興味あったんですよ。生徒にもよくすすめていました。他にないマニアックな学科なので、就職もよさそうだし、古典的でありながら最先端でもある。だいいち私、納豆とかヨーグルトとか、お酒とかお酒とかお酒とか大好きですしね。
その農大の醸造を舞台としたマンガです。だから当然面白かった。勉強になりました。全編に「菌」がうようよ。実に楽しいことになっています。そしてカワイイ。菌萌え〜ですね。
「菌」が見える男、という絶妙の設定がうまいんです。見える男の視点に立つことによってマンガと成立するわけです。いや、考えてみるとそうじゃないか。主人公の視点からではなく、実は読者の視点からも菌が見えているんだな。
「菌」は本当は見えないけれども、しかしたしかに見えるような気もする。これはおそらく万人に共通した感覚でしょう。納豆を見れば、そこに大量の元気な納豆菌を連想し、誰かが咳をしていれば、口から掃射されるいかにもイヤ〜な顔をした悪玉菌を連想する。水虫とかも。私なんかウンコ見ても、まずは菌を介してそれを擬人化しちゃいますもん。ジャーって流す時ちゃんとサヨナラって言いますから(笑)。
そういうのってありますよね。そうした隠れた共通感覚を発掘することこそ、マンガ家やその他の作家さんの仕事ですよね。そうそう蟲師なんかも似た感じかも。
で、マンガ家石川さん描く「菌」たちがカワイイんですよ。いやなヤツとかもいるんですけど、みんなカワイイ。そしてお互いがせめぎ合い、協力し合い、たとえばおいしいお酒を醸したりする。人間は実はそれに翻弄されたり、それから思わぬ恩恵を受けたりするだけ。そう、実は人間なんて、科学したり哲学したりして偉そうなこと言ったりやったりしてるけど、実は小さな小さな菌にさえかなわない存在なんですよ。
けっこう私は子どもの時からそういうことに気づいていた方だと思います。だから、今でも表皮常在菌とはとっても仲良くしているつもりです。潔癖症や過剰な清潔志向、なんでも除菌は万病の元ですよ。ちょっと臭う、いや匂うくらいがちょうどいいってもんです(笑)。
というわけで、このマンガはいいですなあ。もう一度大学に行っていいと言われたら、やっぱり農大の醸造でしょう。ホントそれは前々から言ってたことなんです。でもそれは実現できそうにないから、教え子を送り込むんですよ。頼むぞ教え子よ。いろいろ勉強していろいろ教えてくれよ。
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