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2006.05.11

『フツーを生きぬく進路術 17歳編』 新しい生き方基準をつくる会 (著), 中西 新太郎(監修) (青木書店)

425020511801_ou09_pe0_scmzzzzzzz_ この本はいいですねえ。生徒・先生・親必読でしょう。こちらで私の書きっぷりを見事に予言していた(?)中西新太郎先生が監修した本です。執筆は若手の若者研究家の方々のようですね。
 進路ということでは、例の「危ない大学 消える大学」が強烈な印象を残していますけれど、こちらはそちらとはかなり違うことを述べております。当然私はこちらに賛成ですね。
「『いい大学に行ったら、いい就職ができる』と、偏差値で進路や学校を選ぶのは古い時代の考え方です。ほんの一握りの超頭のいい人たちを除いて、いい大学がいい就職に結びつく時代ではないのです。新しい時代の考え方は、ずばり『成績がよくても、そこそこでも、職業に結びつく学校を選ぶ。力をつけることのできる学校を選ぶ』という考え方です」
 第1部進学編では、この考え方をベースにして、大学(理系・文系)、専門学校、短大、職業訓練校、それぞれの実態(これがリアル)、長所と短所などを、実際の学生や職員の言葉も豊富に交えながら紹介しています。あくまでも現代社会における若者の立場に立った記述であり、それもいろいろなタイプの若者を想定していますので、たいへん有用です。日夜現場で彼らに接している私でも、「そうそう」とか「なるほど〜」とか「知らなかった!」という感じですからね。本当によく取材・研究していますし、高校生(17歳)に優しい語り口も素晴らしい。
 第2部仕事編も勉強になりましたね。
「『フリーターより正社員』という仕事選びは古い時代の基準です」「正規であっても、アルバイトであっても、どの仕事がよりマシか、それを見抜いて就職するのが賢い仕事選びの新基準です」「解決するトラブルは解決する!もらえるお金をちゃんともらう!」
 このような考えをもとに、かなり具体的にその方法が述べられています。ある意味この第2部は先生がよく読んだ方がいい。何度も言ってますが、先生は世間のいわゆる仕事を知らなすぎます。もちろん私も含めてです。生まれてこのかたずっと社会に出たことないんですからね。学校しか知らない先生がほとんどです。
 良心的な先生なら、第1部のような姿勢で進学指導することはできるでしょうが、その先の実際の就職についてははっきり言って「わからない」先生も多いんです。まあ、自分も含めて「とりあえず進学決めて卒業させりゃいい」と思ってしまう先生がいるんですね。大学や専門学校にまかせちゃう。おそらくそんなふうに小学校の先生は中学に、中学の先生は高校に…という感じで責任の先送りをしてるんでしょうね。それ以前に親か…。
 とにかくみんな勉強不足だし無責任なんですよ、大人は。生徒の人生を預かっているのにね。子どもも大人を信用して頼る時代ではないのかもしれません。それもなんとなく寂しいことですが、まずは自分で調べたり体験したりするというのは、失敗も含めて大切だったりしますから、まあいい面というのもあるのかなあ…。
 そうそう、タイトルにある「フツー」ですが、これは「勝ち組」でもない「負け組」でもないという意味です。この「フツー」という認識は非常にいいですね。政治家やマスコミや親や先生たちがお馬鹿な二分法でものを言うのはやめてもらいたいんです。おそらく人間の99%以上は「フツー」でしょうから。「勝ち」「負け」ってなんなんですか?それはどんな競技での話であり、また、その勝負はいつ決まるんでしょう。だいたいいつから日本人はそういう闘いを強いられるようになったんですか。そんな馬鹿げた言葉にだまされない生徒を育てたいところですな。

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