« 「仏」と「食玩」 | トップページ | 『マイケル・ジャクソン IN ネバーランディングストーリー』 »

2006.04.27

タモリ 『第一回テーブル・ゲーム世界選手権大会(於青森)』

B00005gi5o01_ou09_pe0_scmzzzzzzz_ 天才タモリ再臨!むか〜し聴いた衝撃が数十倍になって帰ってきました。四半世紀ぶりくらいかなあ。大学生の頃誰かの下宿でレコードを聴いた記憶があります。
 今度例の「歌謡曲バンド」が初ライヴやります。お稲荷さん春の大祭で奉納演奏です。あと1ヶ月しかない、早く練習せねば、ということで、メンバーが耳コピ用音源のカセットを送ってきてくれまして(耳コピにはやっぱカセットが一番)、その中にオマケとして入っていたのです!この天才芸が。
 もう、こんなことされたら、耳コピなんてやってる場合じゃなくなっちゃいますよ〜。ホント超久々にカセットの音に耳を澄ましました。そして涙涙。爆笑以前に感激です。
 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、これは70年代、デビュー以前及びデビュー当時のタモリが得意とした「物まね」ならぬ「言まね」ネタであります。中国人と北朝鮮人(韓国人じゃないな)、アメリカ人及び日本人がテーブル・ゲーム(麻雀)をしている様子を模写…いや正確には模写ではないな、贋造…でもない、とにかくそれらしく演じているんですね。もちろん、その中国語やハングルや英語はニセモノです。いかにも中国語らしく、ハングルらしく、英語らしく聞こえるわけですが、実際はメチャクチャ。で、最後はケンカになる。
 で、やっぱり私やカミさんが一番はまったのは、日本語ですね。日本語はある意味ホンモノです。そう、青森弁。いや、正確に言うと、青森の人が標準語で難しいことをしゃべろうとしている。いや、もっと正確に言うと…

寺山修司

なんです!
 ある意味、日本語が一番メチャクチャになってる。最もホンモノらしいはずなのに、最もニセモノっぽくなってる。寺山の言語スタイルというのは確かに独特です。青森の人が標準語彙で話そうとする時点で、もうすでに外国語世界に足を踏み入れている(とカミさんは申しております)。たとえば太宰はそこまでだった。しかし、寺山はそこをさらに突き抜けます。難解な哲学用語や文学用語を、さも難解なように高尚なように多用するのです。それが、彼の意識だったのか無意識だったのかは、正直私にはまだわかりません。しかし、事実としてそれが彼の作風、彼のイメージになったことは確かです。寺山は壮大な実験に成功した。
 タモリの寺山マネは寺山トリビュートCDやテレビ番組でも聴いたことがありますけれど、もう最高っすね。寺山の実験を最も客観的に観ていたのは、あるいはタモリだったのかもしれません。当時圧倒的な人気を誇っていた彼の実験の本質を、こうして見破ってしまった上に、さらにその先にまで進んでしまった。演劇性をさらなる演劇性で破壊し再構築してしまった。おそるべき天才です。森田の実験もまた成功した。
 最近の司会者タモリしか知らない世代には、ちょっと信じられない芸でしょうね。当時のタモリには、赤塚不二夫宅に居候していた頃のある種鬱屈した輝き、内に向かう爆縮力がありました。とても大衆向きの芸ではなかった。彼はテレビに殺されたんだと思います。あるいは経済システムに。今のタモリはすっかり大人になってしまいました。
 このテーブル・ゲームが収録されているのがデビュー・アルバムです。上の写真ですね。今やなかなか手に入らないレア盤になってしまいました。その後のアルバムもそうですが、かなりギリギリな芸が満載ですからね。このアルバムもCD化された時、多少編集が施されたと聞きました。ましてやテレビでは本当のタモリは出せませんね。彼自身が社会に編集されてしまったということでしょうか。
 あっ、そうそうこのテーブル・ゲーム芸、ネットで聞けるんですよ!!ぜひぜひ聞いてみて下さい。メチャクチャなはずなのにしっかりとストーリーが見えてくるから不思議です。あと、やっぱりこれってラジオ文化ですよね。北京放送、平壌放送、極東放送(FEN)、そしてラジオドラマ。耳を傾ける。耳を澄ます。想像をふくらます。いい時代でしたね。

第一回テーブル・ゲーム世界選手権大会(於青森) mp3

Amazon タモリ

不二草紙に戻る

|

« 「仏」と「食玩」 | トップページ | 『マイケル・ジャクソン IN ネバーランディングストーリー』 »

芸能・アイドル」カテゴリの記事

文学・言語」カテゴリの記事

ラジオ」カテゴリの記事

コメント

前略 蘊恥庵御亭主 様
赤塚先生の御葬儀での御弔辞は
とても心打たれました。
「恨みは水に流して 忘却せよ
 恩は石に刻んで 留むべし」
愚僧の父の口癖です。
タモリ様の 義理堅く情厚い 
「おひとがら」。
愚僧も 受けた「御恩」を忘れず
に精進してまいります。
合唱おじさん    拝

 

投稿: 合唱おじさん | 2008.08.10 19:39

赤塚先生の入院費もタモリさんが払っていたとか。
あの弔辞、アドリブだったとも言われていますね。
お父様のお言葉、素晴らしく重いですね。
私もさっそくそのお言葉を胸に刻みます。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.11 08:17

この御父様の口癖というお言葉、響きました。
世の中格言は多々あれど、すべては受け取る側次第と思っていましたから、
響いたという事実が大事と思います。
つまりは自分の心の様がそうであったということに気付かされたのですね。
還暦過ぎてて情けなや。
タモリさん、番組「わらっていいとも」終了後は’失われた時を求めるが如く’
休養を楽しまれるのでしょうが、視聴者側としてはレギュラー番組が無いのは寂しいです。

投稿: チャットベイカー | 2014.03.14 12:16

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: タモリ 『第一回テーブル・ゲーム世界選手権大会(於青森)』:

» お笑いの殿堂/タモリ [ロックな毎日]
今回はタモリの1977年作1stアルバム 『TAMORI』です。 そうタモさんですよ~! このアルバムは1995年に今はなき、 アルファミュージックから初CD化されてるのですが、 残念ながら既に廃盤で入手困難です。 手に入れるにはほぼヤフオクしか手段がありません。 相場は大体コンディション普通で、 6000~8000円くらいのプレミアもんですけど、 どうしても欲しい人は買って損はない一品なんですよ☆... [続きを読む]

受信: 2006.05.04 06:59

« 「仏」と「食玩」 | トップページ | 『マイケル・ジャクソン IN ネバーランディングストーリー』 »