『100万回生きたねこ』 佐野洋子 (講談社)
くやしいけど、やっぱり泣いてしまう作品です。今までいろいろな形で読み、聞かせてきた作品ですが、実は今日初めてウチのものとして買いました。
本屋で3歳の下の娘が手に取って離さなくなったので、これはチャンスとばかり買ってしまいました。あまりに有名であまりに売れている絵本ですから、実は何度も感動していたのにもかかわらず、なんとなく屈折した悔しさもあって、自分では買わずにいたのですが、とうとうレジに持っていきました。
家族を持って、この絵本の内容のある一面をも、よく理解できるようになった私ではありますが、ある意味それだからこそ、これを自分の子どもに、あるいはカミさんに、どのように読み聞かせるのか、何を感じてもらえばよいのか、正直自信がありませんでした。それほど深い。読むたびいろいろなことを考えさせられる。
ストーリーは皆さんご存知でしょう。だから、今日はあらためて、自分の、そして家族の本として読んだ感想と言いましょうか、考えたことを記したいと思います。
このねこ、100万回死んだねこではない。100万回生きて1回死んだねこなんですね。
では、その100万回生きたことの意味と、1回死んだことの意味はなんなのでしょう。
いや、正確に言えば、99万9999回の生と最後の1回の生とは意味が違うかもしれません。それは誰しも想像できることと思います。しかし、最後の1回の生は、あくまでその前の生を前提としているものであって、そういう意味では、最後の1回の生にはたしかに100万回の生の価値がある。そうとも言えましょう。
輪廻の物語?たしかに前世の積み重ねが現世につながり、記されていませんが、しろねことずっと一緒にいられる来世の予感もあります。しかし、ことはそうは単純ではないような気もします。
一度単純に考えてみましょう。あるいはこれが一般論からもしれません。
「愛される」よりも「愛する」ことに生の意味がある。あるいは「経験」「名誉」「プライド」よりも「愛」の方が意味がある。そんなふうにも読めます。ソウルメイト(魂の伴侶)を見つけて、子どもにも恵まれ、幸福を得て、そして死を迎えたなら、転生への執着はなくなる。そういうメッセージ性もありでしょう。誰より自分が好きであることを知った上で、しかしそれを上回る愛情を感じる対象を発見する。そういう物語でもありえます。もっとクールに、遺伝子を残せば安心して死ねるということなのかもしれませんし。
さあ、ここからが今日の私の「読み」であり「語り」であります。
このお話は、実は「愛する立場」の物語なのではないか。
つまり、とらねこは最後生き返らなかったけれども、しろねこは生き返ったかもしれない、ということです。ということは、しろねこは以前のとらねこと同様に、パートナーに満足していなかった、もっとはっきり言ってしまうととらねこのことを愛していなかった…。
残酷ですし、いかにもワタクシ的なアマノジャク読みでありますが、しろねこのあのクールなたたずまいはタダ者ではありませんよね。怖いくらいです。
そうだとしたら、立場逆転です。とらねこは初めて、王さまや船のりやサーカスの手品つかいやどろぼうやおばあさんや女の子の気持ち、涙にこめられた「もののあはれ」が解ったのかもしれません。思い通りにならない切なさ。すれ違いのやるせなさ…。
王やどろぼうなどは実は孤独であった。その孤独をまぎらわすパートナーとしてとらねこを愛した。その孤独とパートナーを欲する気持ちを、とらねこはのらねこになって初めて知った。一人っきりになって、自分か一番好きだと言い放った瞬間に知った。
こんな感じです。う〜ん、深い。さらに深い。
じゃあ、なんでしろねこはとらねこのパートナーになって、子どもまで生んだのか。それは簡単です。とらねこがりっぱなねこだったからです。単純に雄として優秀だったとらねこのパートナーとなることが、野生のねことして選ぶべき当然の道だったのです。それは、とらねこがそれぞれの人間のパートナーになることを結局は拒否しなかったのと同じ次元での選択です。
どうでしょう。こんなふうに解釈するとは何事だ、という声が聞こえてきそうですが、私としては今日のこの考えが、今までで最もしっくり来ました。
つまり、人生とは「もののあはれ」を知るためにあると。それを知れば「生」は完結するのでありました。結局お釈迦様が悟ったことが唯一の真理ってことですか。
ま、考えすぎなのかもしれませんね。もう少し素直に読み直してみます。
Amazon 100万回生きたねこ
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