『うご町の地名 うご町の小字地名の解釈』 鈴木俊男 (書店ミケーネ)
今日もまた吹雪です。本当は雪解けの美しい山村風景を楽しめるはずなんですが、今年はちょっと特別ですね。とは言っても、昨年もこんな感じだったんですよね。今年は豪雪だと聞いていましたが、現在の積雪は昨年の半分くらいです。
ここ、秋田県羽後町軽井沢地区は、本当に美しい農村です。日本の原風景と言ってよいと思います。里山と棚田、そして茅葺き屋根の民家が見事な調和を為しています。こちらに美しい写真がありましたので、ぜひ御覧下さい。いいでしょう。私のような東京の団地育ちにとっては、本当に心のふるさとであります。
今日はちょっと古い写真などを見せてもらいました。ちょっとこれを見て下さい。これは私が4歳、まさに高度経済成長の東京、それも京浜工業地帯の横の近代的な団地で生活を始めたころの、当地の日常のスナップです。
なんというか、あまりのギャップに驚くというか。いや、遅れてるとか、そんなじゃないですよ。東京でもあんな特別の環境の中で、現代日本以外の何も知らず、バカみたいに光化学スモッグにまかれながらコンクリートの上で遊んでいた自分の、なんというかなあ、根無し草具合にものすごく淋しさを感じたんですよ。
それこそ今ごろなんだ、バカみたいと思われるかもしれませんが、私はこの軽井沢地区にものすごいノスタルジーを感じてしまったんですよ。外から来たもんがずうずうしく申し訳ないんですけど、正直がまんが出来ないほどに魅せられてしまいました。
で、私はいろいろと知りたくなってきたわけです。ある意味どこに行ってもよそ者であった私は、たとえば現在の住まいのある山梨県の富士北麓地域についてもかなり詳しく調べました。地元の人よりもよく知っている部分もあると思います。それと同じように、この土地についても、どうしようもなく知りたくなってしまったんですよ。
私はだいたいこういう時は、地名から入ります。字名を覚えたり、その語源を調べたりするんです。言葉、特に地名には歴史が堆積しています。それを調べるといろいろと分かってくるんですよ。
そこで、今日はまず町立図書館で見つけたこの「うご町の地名」という本を書店で購入し、お義父さんと飲みながら、地図を作ってみました。私のカミさんの世代になると、もうこういった小字はほとんど分からなくなってしまっているそうです。だからこそ、こうやって書き留めておきたかったんですね。
この本は、現在その町立図書館の館長さんでいらっしゃる鈴木さんが、先人の研究成果とご自身のフィールドワークや考察をコンピュータを駆使してまとめられた労作です。
こうした郷土本というのは、往々にしてあまりの郷土愛のため、こじつけや思いこみによる短絡、恣意的な資料選定などに陥りがちなんですが、この「うご町の地名」は実に珍しく客観的な内容になっています。
羽後町に残る1000以上の小字名全てを、その言語的構成要素、たとえば「山」「森」「谷」「才ノ神」などによって分類網羅しています。そうした編集方針には異論もあるでしょうが、たしかに面白い試みですし、地域ごとの分類ではないだけに、地名の本質的な性格が見えてきます。
分類方法上、同じ字名が何回も出てきたりもしますが、コンピュータでの検索結果と同様に、それによる思わぬ効用もかなりあると感じました。また、東北の地名考にありがちな、「なんでもアイヌ語」傾向に陥らず、わからないものはわからないとし、また先人の説ももれなく掲載されていて、好感が持てます。
地名の語源というのは、なかなか正解にたどりつけないものです。それぞれの思い入れによって曲がった方向に行きがちなんですよね。私も当地の近くに「仙道」とか「隠里」とか「天王」とかいう地名を見つけると、すぐに貴種流離に結びつけたくなりますし。
しばらくこの本を読みこんで、ある程度頭にインプットしたのちに、実際に山の中まで歩いてみたいと思っています。今さらながらふるさとに出会えた喜びに興奮しています。
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