『日本人はなぜ日本を愛せないのか』 鈴木孝夫 (新潮選書)
昨日の寺山での「虚構」と「現実」についての考察、自分でもよくわからないことになってますね。そう、そんな雰囲気が寺山的で心地よいわけですけど。寺山的というのは、つまり「コト」的なんですね。妄想も形にする(語る)と「コト」になるわけですよ。
昨日の私は兼好だったわけです。ものぐるほし。なんだかわからん外部のモノからの影響で、思わぬコトが脳内にひらめいちゃう。多くのクリエイティブな偉人たちが経験したことでしょう。それを、ちょっとだけ体験した。低レベルだけれども。
で、そんな「ものぐるほしき」体験が、また別の偉人の「御言葉」に結びついた。かの大明神の「言霊」です。
この鈴木孝夫大明神の最新刊については、もちろんいち早くおススメしたかったわけですが、あまりに正しいことをあまりに直截的におっしゃってしまっているので、ちょっとこちらが怖じ気づいてしまっていたのでした。畏れ多いというか…。
昨年初秋、ワタクシは幸福なことに大明神と酒席を共にさせていただきました。そして、たっぷりの言霊を前身に浴びさせていただきました(その日の記事は諸般の事情で現在閲覧できなくなっておりますが、近いうちに編集して公開いたします、ハイ)。
その記念すべき日に頂戴したお話の内容が、より具体的な形で示されているのが、この本でした。日本人に日本人である誇りを取り戻させ、日本のあるべき姿を提示した内容です。「国家の品格」よりも具体的でしょう。
盲目的な欧米礼賛の悪癖をただし、日本古来の魚介型文明、植物的原理文明をもって、世界を正しい方向へ導こう、地救原理で生きよう、という、今までの大明神様の社会論、文化論、言語論、環境論などの集大成的な内容です。それを、編集部との問答調で、私たちにもわかりやすく開陳してくれています。いつもながらの、多岐にわたる具体的なエピソードと、歯に衣着せぬ痛快な語り口で、読む者の心をつかみます。
けっこう世間では問題発言と取られそうな御言葉も多いのですが、直接お話をうかがった印象からすると、それでもかなり抑え目なような…(笑)。
鈴木先生にとって、東西比較はお手のものです。いろいろなコントラストを様々なキーワードを駆使して明らかにしてくれていますが、中でも今回印象に残ったのは、「ファクト」と「フィクション」という対照ですね。
昨日の寺山で言うと、「現実」と「虚構」ということです。で、西は「虚構」であり、東は「現実」であると。つまり、ワタクシ的に申しますと、西は「コト」で東は「モノ」ということです。何度もしつこくて申し訳ないのですが、自己の内部が「コト」です。外部が「モノ」です。
「虚構」の最たるものは「理屈」だと大明神は語ります。つまり「論理」や「言語」…ワタクシ的にまとめてしまうと「(言の葉)コトノハ」ですね。いつか「コトノハ=メディア」と書きましたが、一度人間の脳を媒介したものは全て「コト」に属するんです。
鈴木先生は、一方の「ファクト」を「理屈や抽象(捨象)といった処理を受ける前の、いわば素材としてのあるがままの事物や現象」と説明しています。これは、私の言う「モノ」の定義と全く同じですね。そして、日本人はフィクションよりもファクトを重視すると。
お会いした時にも、こんなようなお話をさせていただきました。レベルは違いますが、ある意味同じことを考えているのだなあ、と感激いたしました。この本にも出てこないような、コアなお話も含めて、私の本当に大切な宝物ですね…忘れられないあの夜。
やっぱり、これからは「モノ」の時代だよなあ…。誰かの脳を通過した「コト」は、その人による編集を経ているわけですから、誰かにとって必ず「騙り」になってしまう。万人に普遍な「コト」、つまり「マコト(真・誠)」は理想であれ、現実にはありえないわけですね。
というわけで、この本は日本人なら読まなきゃ。最後は「防人」「鎖国」なんていう御言葉まで飛び出す、すごい展開になりますけれど、最初から読み進めれば、それらも自然と納得されるものとなるでしょう。
「国家の品格」を読まれた方は、ぜひこちらも御一読を。二冊合わせれば最強ですよ。
Amazon 日本人はなぜ日本を愛せないのか
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