『EVERGREEN〜山田かまち水彩デッサン美術館』 (BS-i「私の美術館」)
先週放送されたものです。録画してあったのを、生徒たちと鑑賞しました。
たとえば私などは、山田かまちにものすごく共振していたんですよね。世代的なものもありますし、自分の趣味とか性格というものも含めて、かなり彼と重なる部分があったわけです。もちろん、絵においても詩においても音楽においても、彼の足下にも及ばないわけですが。
青春が、自己との、社会との格闘であった時代は、もう終わってしまったのでしょうか。深く沈潜する精神の、どす黒い輝きなんていうものは、過去の負の遺産になってしまったのでしょうか。
だいたい、青春なんていう言葉が、すでに時代の空気になじまなくなってしまった。生徒たちを見ていると、実に明るく楽しくポップに高校時代を謳歌(この言葉も陳腐か…)している。
私はそこに彼らの健全さを見つつ、しかし、なにか物足りなさを感じてきたのです。もうかれこれ10年くらいになりますかね。そんなギャップを感じ始めて。
では、彼らは山田かまちをどう見るのか。読むのか。聞くのか。これはある意味興味深いことです。
それこそ10年以上前には、ドキュメンタリービデオを観せたりすると、必ず男の子でも女の子でも、私の望む反応をする生徒がいたものです。つまり、当時の私とも共振してくれる生徒。
今16歳の彼らは何を感じたのでしょう…。
と、思わせぶりをしといて、すみません。困ったことが起きました。
私の中の半分が、困った反応を起こしたのです。これは実に意外でした。共振して共鳴して涙を流しそうになる自分の他に、もう一人の自分が、この歳になって突然登場したので、もうびっくり。
それはずばり、「痛い!」と思う自分でした。ごめん!山田かまちよ。そして若かりし頃の自分よ。いったいどうしたと言うのだ、自分…。
何か、とてつもなく「痛い」と思ったんです。「なんだこの自己陶酔野郎は…」って。
私は、今日のこの瞬間に、自分の「青春」が終わったな、と思いました。正直、それは哀しいことでもあり、また嬉しいことでもあり…。
私がきっと、感動的な、あるいは教訓的なコメントをするであろうと思って身構えていた生徒諸君!すまん。「めっちゃいてぇ奴だな…」なんて言っちゃって。
いや、いまでも彼に憧れるし、ある意味彼を尊敬します。でも、何て言うのかな、そうその「EVERGREEN」さに気恥ずかしくなったというか、これからって時になんで「EVERGREEN」になっちゃったんだっていう落胆というか、う〜ん、何とも言えない不快な気持ちがこみ上げてきてしまったんですよ。
でも、そういう自分の心の動きに、驚きつつ、たじろぎつつ、しかし少し感動してしまいました。ああ、こうしてまだ変わっているんだって。成長なんてものではないけれども、しかし、確かに数年前の自分と違う。いいか悪いかは別として、まるで高校生のように音をたてて変わっている。
なんだ、まるで「青春」じゃないですか。そこに気づいたとき、今度は心の中で高笑いが起きました。
なんか無性にBOOWY(暴威)が聴きたくなりました。氷室京介(狂介)さんや布袋寅泰さんらは、今、かまちのことをどう思っているのだろう。彼らのロックがクラシックとなった今、そのルーツを支える山田かまちの存在もまた、古典になってしまったのでしょうか。そう、私が感じた不快感は、「今」が「昔」になり、「最先端」が「古典」になるその瞬間の、私自身の軋みなのかもしれません。
車庫から久々に出てきた「山田かまち号」が帰っていくのは、私の中の別の引き込み線になるのでしょう。激しい音とともに、今日ポイントが切り替わりました。
Amazon 山田かまちのノート(上) 山田かまちのノート(下)
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2024.08.11)
- 凪良ゆう 『流浪の月』(Audible)(2024.06.25)
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「美術」カテゴリの記事
- 艮の金神のお出ましか!(2024.08.02)
- 歌川広重 『六十余州名所図会〜信濃 更科田毎月鏡台山』(2024.06.23)
- 「変身」の楽しさ(2024.05.23)
- 宮城道雄・横山大観を拝す(2024.05.06)
- COTEN RADIOショート やなせたかし編(2024.04.15)
「教育」カテゴリの記事
- 【戸塚宏】令和の今、体罰を語る(2024.08.20)
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 柔道混合団体銀メダル(2024.08.03)
- 祝! 舟久保遥香 銅メダル(2024.07.29)
- 仏様の指(2024.07.26)
「文学・言語」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
- 上野三碑(こうずけさんぴ)(2024.08.06)
- 東北のネーミングセンス(2024.07.28)
コメント
先日はどうもです。講話評判良かったようですよ。「知ってる曲だったから」というのが、
その理由のようですが…これもお約束ですね(笑)。
さて、松田優作が亡くなった時、友人である桃井かおりは「優作、歳取ることが出来なくてかわいそうだね」と思ったそうです。着物には「着崩す」ということがあって、それはやはり歳を取らないと出来ないことだと。
それが出来ない内に逝ってしまった優作への哀悼であったと思うのですが、前、尾崎豊の話をした時にもやはり
高校生のままでいることはありえないのに、商品として高校生でいるしかない辛さ、ということがありましたよね。
多分、evergreenって普通に「痛い」んですよ、この世では。
投稿: よこよこ | 2006.03.16 18:32
よこよこさん、おかえりなさいませ。
移住地は決まりましたか?
この前の打ち上げも含めてまた近いうちにパーッとやりましょう。
evergreen…昔はあこがれだったんですどね。
季節を感じながら生活すると、なんかあんまりかっこよくないなあって思うようになるんです。
常緑樹はなんかつまんない…。
ホントにここのところ、歳をとるのが楽しくて仕方ないんですよ。
どういうわけでしょう。不思議です。
やはり世は無常だからこそ面白いんでしょうか。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.03.17 07:47
初めまして。
私は「恋」と書いて【れん】と言います。(もちろん本名ではない。ちなみに歳は中1。)
山田かまちさんのことを書いていたので書き込みしました。
私は山田かまちを映画で知りました。
「かまち」という映画です。
私はその出演者のファンだったので見たのですが、いろいろと共感できる詩があって山田かまちの存在をみんなに知ってもらいたいと思いました。
「かまち」という映画はかまちの生きていた時代と現在の時代を比べてる物です。
オフィシャルサイトがあるのでのぞいて見てください。(http://www.herald.co.jp/official/kamachi/)
では、失礼します。
投稿: 恋 | 2006.03.27 11:12
恋さん、コメントありがとうございます。
映画「かまち」はまだ観ていません。
私のようなオジサンには、同世代としてのかまち像がありまして、
なかなかそれを崩せないんですね。
それで、映画もあえて観ないできました。
しかし、記事に書いたように、少し自分にも変化があったようなので、
近いうちに生徒たちと観てみよう思っています。
恋さんはLeadのファンなんでしょうか。
彼らもがんばってますね。若さには若さの良さがあるものです。
恋さんもいろいろ挑戦してください。
山田かまちを入り口にするだけでも、ホントにいろいろな人たちに出会えると思いますし。
では。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.03.27 11:33
始めまして僕はピカソやかまちに出会って絵を描き始めました
毎日毎日ふらふらになるまで絵を描いていますよかったらホームページを
のぞいて見てください
http://www.takayuki-oekakichamp.com/
「お絵かきチャンピオン小林孝至」でも
検索できますよろしくお願いします
よかったらメール(norakuro@wind.ocn.ne.jp
)&特にホームページの掲示板に書き込みも待ってます
投稿: チャンプ | 2011.09.23 08:21