『「みろくの世」―出口王仁三郎の世界』 出口王仁三郎言行録刊行委員会 (編集) 上田正昭(監修) (天声社)
もういっちょ、偉人関係。こちらもある意味西洋文明と格闘した?いや、格闘じゃないな。完全に呑み込んじゃった。これもうまい、あれもうまい、これとこれを混ぜてもいける、って感じで、全部胃の中に放り込んで、それで血肉にしちゃった。胃潰瘍や神経衰弱とはとんと無関係。おそるべし。
そう、私の中での最大最高のカリスマ、出口王仁三郎です。まあ、この人ほどスケールの大きな人は、世界史上にもいない。なのに、いろいろな事情により、正当に評価されていない、いや、それ以前に不当に知られていない人物です。
やっぱり教科書に載ってないというのと、マスコミでとりあげにくいというのが、その原因でしょうね。いちおう宗教が絡みますし、皇室や軍部との微妙な関係なんかもありますからねえ。崇高・高尚よりもエロ・グロ・ナンセンスの方が目立ちますし。難しいのはわかりますけれど。
でも、知る人ぞ知るなんですよね。また、至るところ、宗教界はもちろん、経済界、政界、芸術界なんかに、大きな地下水脈ができてますからね。今の日本を支えている一人なんです。オニさんも、それでいいと思っているでしょう。
で、この本は、人類愛善会創立80周年記念として出版されたものでして、オニさんの言行や、その周辺の人々のオニ評などを集めたものです。全体を通読しますと、初めての方でも、オニさんの人生と思想、そして業績なんかの全体像が、なんとなく見えるようになっております。入門には最適でしょう。私には座談会録が特に面白かった。
ふだん私は、肩書きとか権威みたいなものを前面に押し出すのを好まないのですが、今日はすみません、ちょっとそれらを使わせていただきます。なにしろ、オニさんのことを説明するのは非常に難しいんで。コマーシャルな宣伝風に行かせていただきます。
この本(帯も含めて)で、王仁三郎について語っている人を、その言葉のエッセンスとともに紹介しましょう。つまり、こういう人たちが口を揃えて「すごい」と言ってるということです(なんか手抜きですけど)。肩書きは現、元、当時いろいろごちゃまぜです。宣伝ですから。
吉川英治(作家)…千年に一人出るか出ぬかという人物だ
島薗進(東京大学教授・日本宗教学会会長)…器が大きすぎて、呑み込まれずに近づくのはむずかしい
上田正昭(京都大学名誉教授・小幡神社宮司)…すぐれた芸術家であり、傑出した思想家であり、しかも世界屈指の宗教者であった
真渓涙骨(中外日報社主・僧侶)…羽目のはずれた脱落超凡の超人的野人 えたいのわからぬ怪物
牧野虎次(同志社総長)…輪郭があまりに大きく、尋常の規矩では、到底測り知ること能わない
今東光(作家・中尊寺貫首)…天馬空をいくというのに当たっている
柴田実(京都大学教授)…茫漠としてとらえどころのない、それでいてどこか人を魅するところのある不思議な人間
高山義三(弁護士・京都市長)…会えば会うほど大きい人物
前川佐美雄(歌人)…王仁三郎は詩人である これほどの詩人はめったにない
谷川徹三(法政大学総長・哲学者)…彼はどこまでも創造者である
木村重信(大阪大学教授・兵庫県立美術館長)…(ようわんについて)その破格の美に衝撃をうけた
梅棹忠夫(国立民族学博物館顧問)…あまりにも破天荒で、強大な牽引力をお持ちだった (ようわんについて)完全にお手上げ 甲を脱ぎました
山折哲雄(国際日本文化研究センター名誉教授)…不世出の宗教家 自分を演出するという芸術家的な資質を持つ人間
いやはや、そうそうたるメンバーですね。私も受け売りでなく、全く同じ感想を持ちます。みなさん、偉い方々なんですけど、言ってることが…。
そう、出口王仁三郎、そろそろ学問的な研究対象になってもいいはずですが、なにしろスケールが大きすぎて、どこから手を付けてよいか、また、どの分野からアプローチしてよいやら、さぱ〜りわからないという状況なんですね。「コト」にならない「モノ」。言葉にならない「もののけ」。
私など、いちおう専門である日本語や物語論から「霊界物語」を料理してみたい、なんていう衝動にかられるわけですけど、目前の素材が、すでに素材以前の「モノ」、つまり自然というか世界そのものの様相を呈しているので、もう呆然とするしかないのであります…トホホ。
もうこうなると、その世界に身をゆだねて、そこに遊ぶしかないんですね。遊びつつ学んでいく、なんか自分が子どもにかえったようになるわけで、そこに実に日本的な母性を感じるのでした。うん、やっぱり日本って、王仁三郎って、母なんだよなあ。そういえば、女装?もけっこう好きなんですよね、オニさん。
ぜひ、皆さまも一度、この布袋様のような母のおなか?に抱かれてみてはいかがでしょう。
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