3月9日再び〜「縁」と「恩」
今日は3月9日。レミオロメンを聴きながら涙しております。
いちおう我がクラスの諸君の受験も一段落しました。全員、希望通り、あるいは希望以上のところに決まってくれまして、安心しました。
今日は中でも嬉しい報告がありました。国立医学部に現役合格が出たのです。センター出遅れでしたので、本当に2次で満点取ったとしか思えない大逆転劇でした。私立も全滅でしたし、ちょっと厳しいなあ、と思っておりましたが、奇跡は起きました。
彼女は中学もろくに行っていないような奴だったんですが、一緒にやってみるか、という感じで本校に誘ったのでした。その後もいろいろと波乱万丈ではありましたが、こうして奇跡を起こしてくれました。本当に嬉しく、またありがたいと思います。
彼女を見ていて思うことがあります。この前の講演でも話したんですけど、「縁」と「恩」のことです。彼女はある意味わがままですし,いろいろと人に迷惑をかけてきた人物です。しかし、最近思うんですよね。「報恩」って言いますけど、別にその人に返さなくていいんじゃないかって。そう思うとお互い楽ですし、自然でいられるんですよ。
たとえば親に対する恩なんて、そのまま返せませんよね。親も子どもにそんなことを期待している訳じゃない。その子が自分の子どもに返せばいいのかもしれない。そうして、連続していく。それが普通なのではないか。それが「縁」ではないか。
人は、「こうしてやった」とか「なんでわかってくれないんだ」みたいに思うこと多いじゃないですか。それって、まるで市場経済みたいなんですね。単なる1対1のgive&take。対価を期待して「恩」を提供する。それこそ「恩」を売るですよ。
もし、「恩」の世界もそんなんだとすると、連関していかないじゃないですか。つまり佳き「縁」の連鎖はなくなってしまう。
彼女、お医者になって、いろいろなところからいただいた「恩」を、いろいろなところにばらまいてくれればいいと思うんです。たぶん、意識しなくても、彼女はそうしてくれるでしょう。それでいいと思うんですね。
私も、教師として若い頃はつい対価を求めてしまいました。それで、自分も相手も苦しめた。割に合わない仕事だとも思っていました。そんな間違いを諭してくれたのは、卒業していった生徒たちだったんですね。もちろん直接そんなことを教えてくれたわけではありません。生き様で見せてくれた訳です。
お釈迦様の説いた「縁起」「智慧」「方便」というのは、こういうことなんじゃないでしょうか。経済システムもそんな「報恩」のしかただと平和なんだけどなあ。そういえば「仏教経済学」ってのもあるんだよなあ。
レミオロメンの「3月9日」も「縁」と「恩」の歌です。歌詞をごらんください。ここで歌われているように、相手に対する「報恩」の気持ちはもちろん大切です。でも、「あなた」を世界中の全ての人だと考える方が、もっと普遍的な意味を持って心に響きますね。そして気づいたことは、一人じゃないってこと…うむ、まさにお釈迦様の悟りだ…。
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コメント
こんにちは。ちょっとご無沙汰してました。
とてもよい内容だと思います。
恩には感謝で応えるのが良いのではないかなと、私は思います。
感謝の気持ちがあれば、自分を省みて、謙虚になると思います。
そこから他人への思いやり、誠実な行為が出てくると思います。
誰にも迷惑をかけない人間はいないし、誰の世話にもならないで成長した人間もいない。
自分に恩を施してくれた人にもやはり恩人がいて、その人にもまた恩人がいる。それが何処までも何処までもつながっている。
世の中は順繰りだと思います。
相変わらずの駄文、すみません。
投稿: kobayashi | 2006.03.10 21:41
kobayashiさん、すみません、約束なかなか果たせなくて(汗)。
なのにコメントありがとうございます。
kobayashiさんのおっしゃる通りですよ。
なんか、最近しみじみ感じるんです(歳のせいかな)。
自分もずいぶんいただいた「恩」をそのままにしてしまってるんで。
その恩人の方々、もう何人もこの世を去られてしまいましたし…。
仏教における「食」の考え方…というか、私たちの食生活だってそうですよね。
「いただきます」とは言えるけれども、直接その命にお返しはできません。
食物連鎖なんて言うと、堅苦しいですけど、結局それですよね。
自分もそろそろたまった恩をばらまく歳になったような気がするんです。
というわけで、仕事の方もおかげさまで、だいぶ落ち着きましたので、また連絡しますね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.03.11 13:51