『鬼』
今日は節分ですねえ。冬と春の境目。いわば大晦日ですか。本当はちょっと違うらしいけれども、気分的には明日正月ということです。
節分と言えば「鬼」ですね。今日はいろいろなところで駆逐されてるんだろうなあ。鬼もたいへんです。ウチでは「福は内、鬼も内」です。世間では負とされるパワーをも味方につけちゃいます。ウチでは「艮の金神」を祀っていますからね。艮の金神様、いろいろいらっしゃるウチの神仏の中でも結構中心的存在です。艮(うしとら)は鬼門です。鬼門の神様ですので、鬼も内。オニさん(出口王仁三郎)もそのゆかりです。
鬼と言えば、仮面ライダー響鬼も節分を前に終了してしまいました(ローカル局ではまだ生きてますけど)。鬼からカブトムシに格下げです。響鬼はなかなか良かった。たまにしか観ていませんでしたが、和の説話的テイストが効いていて好感を持ちました。カブトムシはどうでしょう。あれ?ライダーってバッタじゃないの?
「おに」の語源はよくわかっていません。「隠」の音読みがなまったのだとか平安時代の何かに書いてあったと思いますが、あてにならない説ですね。謎です。和語に語源を求められないということは、結構新しめの外来種だということでしょう。
「鬼」という字、古くは「モノ」と訓んでいました。万葉集など見るとやたらと「鬼」の字が出てきます。みんな「モノ」と訓ませているんですね。これは興味深いことです。中国では「鬼」と言えばだいたい「亡霊」のようなものを指しました。つまり、私のモノ・コト論で言うところの「外部」「未知」「不随意」的存在です。「コト(ミコト)」と対立する存在ですね。「ミコト」を奉じている人々にとっては、まさにモノノケであり、駆逐すべき存在の象徴であったわけです、「鬼」は。
仏教的無常観と結びつく以前の、日本的「モノ」は、以前書いたように、どちらかというと道教的、陰陽道的「物」と「鬼」を足したような領域に近かったものと思われます。それで、「物」や「鬼」を「モノ」と訓んだ。私はそう考えています。いずれにせよ、認識不可能な、あるいは分節不可能な「外部」であったと。
そういう自分の思いのままにならない、なんとなく恐い存在を排除するというのは、近代化の特徴ですよね。そういう「まつろわぬもの」を克服していく、いや征服して意のままに操ろうとしたのが、すなわち近代化であり、あるいは現代のデジタル化であると思います。
しかし、人間なんて勝手なもので(あっ、そうそう、なんで人間を「者」と呼ぶか…私は「ミコト」に対する謙遜だと考えてます)、幽閉した「鬼」にもちょっとノスタルジーやらシンパシーやらを感じたりするわけです。だから、たとえ悪役であっても昔話には欠かせない。なんとなく親しみすら感じているわけです。また、そういう何か恐ろしいげな存在というのもどこかで待望していたりする。そう考えると、仮面ライダー響鬼はヒーローでしたから、民俗学的にもなかなか興味深い存在と言えましょう(その響鬼も再び幽閉されてしまったわけか…)。
で、再び節分です。節分…ひっくりかえせば分節だなあ(?)。鬼(モノ)を退治するといことは、人間にとって、この世をまさに分節(コト)することでした。ちょっとこじつけですけれど、今日はそんなことを考えて、やっぱり「鬼も内」と言いながら、豆を撒き(食べ)ます。
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