『ブッダは何を教えたのか―人生の智慧、自分らしく生きるヒント』 ひろさちや (パンドラ新書 日本文芸社)
『弱肉朝食』…ブッダは何を教えたのか?
そう、本書の172ページにこうあるのです。
シッダールタ太子が抱いた問題意識は、
−この世は「弱肉朝食」である−
−人生には「老・病・死」という苦しみがある−
私は考えました。なぜ「弱肉強食」ではなく「弱肉朝食」なのか。「強」ではなくて「朝」なのか。
私はふざけているわけではありません。たしかにそう印刷されているからです。ネットの書き込みならわざと誤字することもありますが、新書の初版第1刷と言えどもいちおう「本」ですからね。まさか間違いではないでしょう。いや人間の所業ですから、万が一には間違いもありえますね。ですから、百万歩譲って、私はいくつかの可能性を考えました。
1 ブッダ自身が「弱肉朝食」と言った。
2 ブッダの弟子が「弱肉強食」を誤って「弱肉朝食」と筆記した。
3 ブッダの教えが日本に伝来する間に恣意的にゆがめられた。
4 手書き原稿においてひろさちやさんが「弱肉強食」を「弱肉朝食」と筆記した。
5 ワープロ原稿においてひろさちやさんがタイプミスした。
6 タイピストが「弱肉強食」を「弱肉朝食」と記憶しており躊躇せず「弱肉朝食」と打ち込んだ。
7 タイピストがタイプミスした。
8 私の目がおかしい。
まず8について。8であれば問題は簡単に解決しますが、残念ながら私以外の複数の目にも「朝食」と映っているようです。したがって8の可能性は限りなく低い。
続いて7。タイピストが「き」を「ち」と打ち間違う可能性はどうでしょう。ローマ字入力であれば「K」と「C」あるいは「T」との距離から考えて、その可能性はやはりかなり低いと言わざるを得ないでしょう。平仮名入力であったとしても「き」と「ち」は遠いですね。では、タイピストが私のように親指シフト入力者だったらどうでしょう。ニコラ配列においては、「ち」は「き」のすぐ右上にあります。しかし親指シフターの方ならお分かりになると思いますが、こうしたタイプミスは実際には起きにくいものです。「ギャハハハ」を「ギコハハハ」と打つことはあっても…ギコ猫( ゚Д゚)の誕生譚の一つですね…、「きょうしょく」を「ちょうしょく」と打つことは経験上ほとんどないと言ってよいと思います。
6は単なる思い違いですね。しかし、学校教育において頻出の四字熟語であり(○肉○食=焼肉定食という古典的なギャグも含めてね)、普通の日本人であれは、こういう勘違いは起きにくい…と思います。
5はあくまでひろさんが原稿をワープロで打つと仮定した場合です。その場合も7の考察と同様にあまり可能性は高くありませんね。特に本書のキーワードでありますから、たとえタイプミスしたとしても気がつかれるでしょう。
4は結構問題です。実はそれまで、またその後はちゃんと「弱肉強食」と印刷されているので、この仮説が正しいとすると、ひろさんはこの部分だけ意識的に「朝食」と書いたことになります。そこにブッダの教えを超える宇宙的なスケールのメッセージをこめたのか、もしくは同様のスケールの「ギャグ」を飛ばしちゃったか、どちらかということです。どちらにしても問題です。あのひろさんが、そんなことをするとは思えません。同じひろでも「つのだ☆ひろ」さんだったらわかりませんが。
3はどうでしょう。恣意的ってどういう「意のほしいまま」でしょうねえ。「強食」を「朝食」とするメリットって?伝来過程を考えると、たとえ中国とは言えども、やはり朝食から肉料理モリモリでは胃に負担がかかる、だから弱めにということでしょうか(よくわからん)。
2はありえないことはないかもしれません。当時のインドのキーボードの配列を調べると、「きょ」と「ちょ」の発音に当たる文字が隣どうし並んでいることがわかっています。ですから、この仮説の可能性は意外に高いかもしれません…なわけはない!
そしてついに1です。2〜8までの可能性の低さを考えると、やはり1の信憑性が増します。では「弱肉朝食」とはどういう意味なのでしょうか。先ほど3の検証の際に書いたような生活習慣に根ざした軽々しい意味ではないと思います。「焼肉朝食」とか「豚肉朝食」とかだったらある意味解りやすいわけですが、どうしてブッダは「弱肉朝食」などというレトリックに満ちた表現をしたのでしょう。
ブッダはこの世が「弱肉朝食」であることに気づいた。そしてそれを乗り越える智慧を悟られた。この文脈からして、「弱肉朝食」はこの世に蔓延する悪の一つであることがわかります。ん?そうか。「朝」は「morning」ではないのか。「朝」には「政治」という意味もありますね。朝廷とかササン朝ペルシャとかいう時の「朝」です。
そう考えると、この言葉は深いですね。「弱肉強食」とは「弱い者が肉となって強いものがそれを食べる」というのが基本的な意味です。ですから、「弱肉朝食」とは「弱い者が肉となって政治(政府)がそれを食べる」ということではありませんか。
そうです、これはブッダの聖なる予言だったのです。そしてその予言が現実のものとなりつつある現代日本において、ブッダはこの本を通じて警鐘を鳴らしたのです。奇跡的な誤植という形をとって。おそるべし、ブッダ。
ふぅ、書いててかな〜り疲れました。何やってんだオレ。まあうまくまとまったからいいや。書いてる途中は結論が見えず不安だったんですよ、実は。
さて、そんなどうでもいいおふざけはいいとして、この誤植はいかんでしょう。いや、最近多いんですよ。新書の誤植。今や校正という作業は存在しないのでしょうか。不思議です。少し話がそれますが、今入試シーズンじゃないですか。各大学のホームページ、「出題ミス」のお詫びが満載なんですよ。チェック機能ってどうなってるんでしょう。
この本、本当に素晴らしい内容なんです。人生が変わるほどいいんです。だからこそ、こういうおふざけはしたくなかったんですが、あまりにも「痛い」ので、こちらが壊れてごまかすのです。だって1ページ前にも明らかな誤植があるんだもん…。痛杉。
Amazon ブッダは何を教えたのか
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