『ゲイシャ・ガール、リングに上がる』 鈴木浩子 (集英社)
例の和泉元彌戦ですっかり男を上げた鈴木健想。私も本当に高く評価しました。あの時の白塗りゲイシャディーバが浩子夫人ですね。あの時はあっぱれ鈴木健想と書きましたが、この本を読んだ今なら『あっぱれ鈴木浩子!』ですねえ。
もちろん、鈴木健想選手に対する評価は変わりませんよ。尊敬します。しかし、その健想選手を陰で支えた、いや陰でコントロールしていたのは奥さんでした。まさに二人三脚であの素晴らしい芸を作り上げていたことを知りました。
月並みな言い方ですが、夫婦はお互いの欠点をカバーしあってなんぼですな。欠点にキレるでもなく、欠点に目をつぶるでもなく、積極的にカバーする。浩子さんのそういう姿勢が読んでとれます。健想選手、強そうに見えますが、意外にダメなところがあるんですね。いや、そこが男のかわいらしさムンムン?なんですよ。それを浩子さんが見事にカバーしている。でもって、浩子さんも結局はそんな健想選手の夢に引っ張られて、どんどん想定外の自己実現をしていく。大変うらやましい関係でした。
あと、この本で興味深かったのは、やはり日紐(紐育…ニューヨーク)の文化の違いでしょうか。WWE…プロレスというエンターテインメントの極致、徹底したショービジネスの世界、世界最大の団体。そしてその舞台の中心がニューヨーク。そこ紐育がアメリカ全体を象徴しているのではないことは、フロリダのエピソードの部分を読むだけでもよくわかります。ニューヨークは特別。そこにおけるビジネス感覚、人間関係、人生観などが、プロレスというメディアのおかげで、非常に鮮明に読み取れます。不思議なところですね、ニューヨーク。
ニューヨーク文化には憧れも感じますし、一方でこれが本当に人間らしい営みなのかなあ、と正直疑問に思うこともあります。自由と機会の平等の代償として明日の保証がないわけですよねえ。あるいは明日の保証がないからこそ自由を得られるのかも。やっぱりニューヨークはアメリカの一部ではなくて、一つの国であるように感じました。私はとてもやっていけないですねえ、あの国では。
さて、鈴木夫妻、彼らもまた突然WWEを解雇されてしまいました。しかし、WWEでトップクラスを張ったというステータスはやはり一流です。そしてもちろんニューヨークのステータスは実力があることの証明であります。技術的な面だけでなく、精神的な面においても、彼らはものすごい成長を遂げたことでしょう。彼らはこれからも世界を股にかけて活躍することでしょう。今後のご活躍をお祈りします。そして私も応援させていただきます。
あっぱれ!鈴木夫妻!
Amazon ゲイシャ・ガール、リングに上がる
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