ルイス・クラーク 『透視画法』
Louis Clark (per-spek-tiv)n.
ものすごい名盤?それとも迷盤?ジャンルを超えた壮大な音絵巻…私は好きです、これ。
今日は卒業式でした。国立の結果も出ていないし、本校の伝統として、生徒とは一生のつき合いになるので、別に感傷的になるわけでもありません。ちょっと面倒な行事がつつがなく終了した程度の感慨です。
では、自分の高校卒業式はどうだったろう…と思い出そうとしても思い出せません。別に認知症になったわけではありせまんし、当時登校拒否していたわけでもありません。卒業式がなかったからです。いや、あったのかなあ?とにかく出席しませんでした。なんとわが母校では、国立の2次試験の日に卒業式が行われたのです。よって、ほとんど国立志望者で占められているわが母校では、だ〜れも出席できないようになっているのでした。つまりやる気、元からなし。なんと卒業アルバムもありません。なんともあっさりとした学校です。それが伝統であり、校風であったのでした。
その頃の私が聴いていた音楽はどんなものだったのでしょう。高校3年の頃は、すでにロックやポップスは卒業し(のちに再入学しますけど)、いっちょ前にバッハなんぞに傾倒していたような記憶があります。ある意味暗い受験生ですなあ。フュージョンからジャズへの流れも始まっていたかもしれません。
さて、そんな頃、本当によく聴いていたアルバムがこれです。私のロックからクラシックへという流れの中で、実に絶妙な位置につけているこのアルバムなんですが、いったい何人の日本人が持っている、いや知っているのでしょう。私は、国内盤(もちろんレコード)が発売されてすぐに買い求め、それをオープンリールのテープレコーダーに録音して、自作のオーディオで聴いておりました(う〜む、時代を感じる)。もちろんカセットもあった時代ですが、私は特にお気に入りのレコードに関しては、父親から譲り受けたソニーのオープンリールに録音していたんですよ。それも超高級なオープンリールDuad(Fe-Cr)にね。今のデジタルオーディオからすれば、なんじゃ?という世界ですが、こだわりのアナログオーディオには、「気持ち」が入りますからね。数値では表せない「いい音」がするんです(自分には)。
昔はそんなふうにかなりのこだわりを持っていた私も、今ではアナログレコードをCDと交換してしまうくらいダメ人間になってしまいました。ですから、当然このアルバムも全然聴いていなかったんですよ。しかし、ふとしたことから急に(四半世紀ぶりに)聴きたくなりまして、地下室からひっぱり出してきました。しかし、レコードプレーヤーは10年以上前に故障して以来、一度も回転しておりません。というか、どこに埋没しているかもわからないんです。かと言って、このアルバムのデジタル盤を持っている人なんか、身近にいるわけない。だからこの前のように、交換を申し出るわけにもいきません。で、仕方なく輸入盤CDを最近購入したのです。そして今日、若かりし頃を思い出そうかと、聴いてみました。
このアルバムの内容及びルイス・クラークにいつては、ELO関係のカリスマ的存在TKJさんのこちらの記事に詳しいので、ぜひ御覧下さい。そこにもありますように、ルイス・クラークさんは、ELOを特徴づけるあの壮大なストリングスのアレンジを担当していた人です。いや、そう言うよりも、クラシック名曲メドレーである「フックト・オン・クラシック」シリーズの人、と言った方が分かりよいかもしれません。
というわけで、ここには、ほぼ四半世紀ぶりに聴いた私の、率直な感想を記しておきましょう。あの頃よりはかなり私も音楽に詳しくなりましたので、やはりそれなりに聞こえてくる音も違ってきます。
いや、だから最初に書いたように、これはとんでもない名盤ですよ。トンデモの一歩手前と言えば言えないこともありませんが、なかなかハイレベルな音楽的挑戦、実験であったと思います。
有名なクラシックの作曲家のメロディーも時々出てきますけど、基本的には彼のオリジナルメロディーが延々と展開されています。A面、B面ともに全てインストゥルメンタルです。ロックバンドとオーケストラが共演して、ロック・シンフォニーをやっちゃった、それもボーカル抜きで、って感じですかね。
ここでのルイス・クラークの作曲能力の高さは並みではありません。オーケストレーションはもちろん、美しいメロディーを創ることにも成功しています。録音当時、彼はまだ30歳そこそこだと思います。なかなかやるな。
あと、今回家族も初めて聴いた(聴かされた)んですけど、子どもはけっこうノリノリでしたし、カミさんはなかなか鋭い指摘をしていました。つまりこういうことです。曲想が変わるたび、彼女はいちいちこう言いました。「ELOじゃん」「アニソンじゃん」「戦隊もののオープニングじゃん」「演歌じゃん」「80年代歌謡曲じゃん」「NHKの子どもの歌じゃん」「ボンドじゃん」「女子十二楽坊じゃん」「奥田民生じゃん」「小林武史じゃん」「フィギアスケートの曲じゃん」…。な〜るほど〜、言われてみればそうかもしれない。
たしかに、ルイス・クラークのオーケストラ・アレンジメントは、直接間接問わず、現代の日本、いや世界のポピュラー・ミュージックにものすごい影響を与えているかもしれない。たとえば、ビートルズにおけるジョージ・マーティンやフィル・スペクターのアレンジとは一線を画す、どこか大衆的な弦の響き。そのアイデアとテクニックの全てが、彼のこの最初で最後のソロアルバムに詰め込まれているような気がしてきます。いや、冗談抜きで、ELOという壮大なスケールのバンドに乗って、ルイス・クラークの遺伝子は世界中にばらまかれたのかもしれません。
正直、演奏は、アインザッツがめちゃくちゃだったり、リズムがバラバラだったり、とんでもなくアナログなことになってます。まあそれは良しとしましょう。打ち込みオケ隆盛の今となっては、それが逆に魅力的に聞こえるくらいですから。
う〜む、これは再び聴き込んでみたいアルバムですねえ。もう一度こういうコンセプトのアルバムを作ってくれると、ホントうれしいんですけど。たぶん日本でも2枚は売れます!
Amazon (per-spek-tiv)n.
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