« 『「超」読解力』 三上直之 (講談社+α新書) | トップページ | 池田屋 『ぴかちゃんらんどせる』 »

2006.02.18

『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』 安部司 (東洋経済新報社)

4492222669 これは良書です。国民の教科書ですね。絶対におススメです。
 久々に原理主義的でない本を読みました。最近売れる本は、たいがい極端な論調のものが多い。そんな中、この本は非常にバランスのよい内容でした。
 食品添加物の元トップセールスマンにしかわからない、添加物の危険性、食品加工現場の恐ろしい風景…。これだけなら、いつぞやの「買ってはいけない」のように、単純に恐怖をあおるだけの内容になっていたでしょう。この本でもたしかにそういった恐怖はいやというほど味わえますよ。しかし、この本の素晴らしいところは、そこで終わっていないということです。
 なぜ、添加物が必要なのか、そしていかに我々が添加物の恩恵を受けているか、そういった点についても詳しく説明されています。また、食品業界に「情報公開」を求めることも忘れません。「天然」「手作り」と言った言葉の裏側の危険性も指摘されています。
 そして、何と言っても、この本の中心的主題は、最終章にあると思います。ただ単に添加物を敵視することなく、自分がどういうスタンスでそれらとつきあっていくべきか、その決断を読者に迫る内容になっているのです。子どもの味覚が壊されていく。食の乱れは食卓の乱れ、食卓の乱れは家族の乱れ、家族の乱れは社会の乱れ、社会の乱れは国家の乱れ。そうした現代において、私たちは真に賢い消費者になるべきであり、賢い親になるべきであるのだと痛感させられます。
 実は最近の私、添加物アレルギー気味なんですよ。一日一食生活を初めて、そろそろ2年になりますけれど、かなり体の中が浄化されたようでして、体に悪いものが体内に入ると、覿面に反応するんです。しかし、一方では花粉症が治ったりしていますから、単純に異物は排除しようとしているわけではないようですね。なんとも人間の体は不思議なものです。
 大学生から結婚するまで、私はほぼ15年間一人暮らしをしていました。その間食事はほとんど全てコンビニ弁当。ものすごい量の添加物を摂取したと思います。保存料が体に蓄積しているのでオレは死んでも腐らんぞ、なんて冗談を言うほどでした。
 それが、今はもう、あの添加物名の並んだラベルを見るだけで、顔が汗を噴くんです。つまり精神的なものもあるわけですが、とにかく体も心も添加物を拒否するようになってしまったんですね。
 この前、外出したついでに、久々に昼飯を食べました。それもマックです。そうしたらなんと「スーパーサイズ・ミー」よろしく、1時間後に全て吐いてしまいました。これも半分は精神的なものだと思います。しかし、とにかく今の私にはマックは必要ないということだけは確かなようです。
 「食品の裏側」は本当にいろいろなことを私たちに教えてくれます。食品における添加物と同じような存在は、他の分野にもいくらでも見出せますよね。そこまで思いを馳せると、この本はまさに現代と現代人のあり方を問う内容であることに気づきます。ただただ、安く早く簡単に、そして大量に。本当にそれでいいのでしょうか。本書にもありましたが、交通事故が起きて多くの人が亡くなるからと言って、車を廃止することはできません。原始時代に戻ることはほとんど無理なのです。では、私たちは、現代の「光と影」、「功と罪」、「便利と危険」などとどうつきあっていけばいいのでしょうか。そのヒントを安部さんは提示してくれています。この本の最後の最後にこうあります。
 「いったい私たちは、何を得て、何を失っているのか。本書が、それを考えるささやかな契機になることを、願ってやみません」

Amazon 食品の裏側

不二草紙に戻る

|

« 『「超」読解力』 三上直之 (講談社+α新書) | トップページ | 池田屋 『ぴかちゃんらんどせる』 »

グルメ・クッキング」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

心と体」カテゴリの記事

コメント

一応、生活クラブ組合員です。私のまわりにはあまり
原理主義っぽい方はいませんが、極から極に行くのは、易しいと言うか同じことですよね。
江戸時代のことやなんかよく引き合いに出されるけど、
もう戻れないのだから、ノスタルジーではなくて、
現実に適用可能な方法やあり方を探さないといけない
のですよね。
そう考えると、オリジナル楽器、原典版至上主義も
原理主義的ですね。
なぜ、そういうドグマティックな方向で古楽の世界が
進んで来てしまったか。いずれまた同じことが
繰り返される…のでは切ないですね。

投稿: よこよこ | 2006.02.20 18:30

よこよこさん、どうもです。
そうなんですよ、なんでも大きくスイングする方が楽なんです。
セクトに所属していた方が心強いですしね。
中庸というか、両方OKというか、いいかげんというか、
そういうのって大切だと思います。

そうそう、(業務連絡ですが)来月の二日にそちらの学校にうかがって、
出前授業みたいなのをします。
さっきのような話もしようかなって思ってます。
その日もし出勤なさるのであれば、何かやりませんか?

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.02.20 18:52

初めてHP見ました、食品添加物の裏側の検索からここにきちゃいました。あの本はすごいですね・・・何を食べていいか分からなくなります。
でも、たくさんの人があの本を読んで意識が変われば安全な物もででくれると嬉しい次第です。
スーパーサイズミーも見てました!
世の中恐ろしいです!でも、もっと怖いのはやっぱり日用品は化粧品からの経皮毒ですよ!
海や川も汚れるし。。
みんながもっと見てる方向が変わればいいですね!

投稿: KOTO | 2006.06.08 18:55

KOTOさん、コメントありがとうございました。
ホント恐ろしい世の中ですよねえ。
やっぱり市場経済至上主義がまずいんだと思います。
金もうけのためなら人をも殺す、ってことでしょう。
やっぱりそういうウソにだまされない賢い消費者にならなくちゃ。
私は教師としてそういうことを教えていきたいと思ってます。
微力ですけど。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.08 19:09

確かに、今の世の中変わってきましたよね。
格差社会が見えないところで、どんどん広がってきてる。若年増加の「キレる」も食べ物からの添加物や皮膚からの経皮吸収なども原因の一部ではと聞いています。賢い消費者。本とにその通りだと思います!子供は親が買うのしか食べれませんし使うこともないでしょう。微力ではありませんよ、一人が一人に気持ちを伝えれば必ずみな、きずいてくれるはずです!!

投稿: KOTO | 2006.06.10 11:23

KOTOさん、こんにちは。
経皮毒もこわいですね。
あんまり神経質になりすぎるのも問題ですが、
必要以上に摂取・吸収しないように気をつけています。
やっぱり自然が一番ですね。
日野原先生の本にありましたが、
現代人の病気のほとんどは自分で作っていると。
そのとおりだと思いました。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.10 14:45

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』 安部司 (東洋経済新報社):

« 『「超」読解力』 三上直之 (講談社+α新書) | トップページ | 池田屋 『ぴかちゃんらんどせる』 »