『1リットルの涙』(劇場版)
生徒が観て、「久々に来たぁ。泣けた」って言ってたんで、ちょっと借りて観てみました。私はテレビドラマの方も観ていませんし、原作も未読です。
こういう映画をどうおススメするか…これは非常に難しい問題です。たしかにいろいろな方に観ていただきたい作品ではありますが、では、どういう意味で勧めるのか。これは、自分がこの作品のどのような鑑賞者になるかを表明することですから…だから難しいのです。
ですから、まずはあえて内容に立ち入らず、映画としての作りから…とも思いましたが、やっぱりそれではここに書くほどのことではありません。
しかたありません。正直に書きましょう。
私は、単純には泣けませんでした。涙腺はたしかに何度か刺激されましたが、そこで実際に涙を流すのは躊躇されたのです。「かわいそうだ」とか、「自分はまだまだ幸せだ」というような、いかにもありそうな気持ちに基づく涙は、なぜか拒否したい気持ちになりました。
自分に当てはめても考えてみました。中学3年生の時に突然“脊髄小脳変性症”という不治の難病を告知されたら…。そして、日に日に体が動かなくなっていったら…。待っているのは死だけ。しかし、そこで生まれた哀しみや絶望や怒りや、また希望や感謝の予感にしても、やはり当事者のものではない。また例えば、病気によって、いろいろな人と出会い、恩恵を受けて、そして、作品を残して後世の人たちの心を動かすこと、それを幸せだと考えることもできたとしましょう。でも、それも所詮は第三者の都合の良い想像にすぎません。
なんか、そんなようないろいろな矛盾が自分の中に渦巻いていたわけです。戦争物を観る時も同じです。単なるおセンチに陥りそうなのをこらえると、結局今の矛盾にぶつかる。
いや、自分だったらと想像するだけでなく、もしかすると自分も本当に当事者になるかもしれません。あるいは家族が、ということもあり得ます。そうした時、どういう当事者になればいいのか。これも考えてもわかりません。想像しかできないのです。
皆さんはどうなんでしょう。感動しました!って言えるんでしょうか。感動していいものなんでしょうか。
さあ、気を取り直して、違う視点から。木藤亜也役の大西麻恵さん、本当に見事な仕事してます。そこには正直感心しました。お母さん役のかとうかずこさんはじめ、他のキャストの方も大変立派な演技です。
あっ、今気がつきましたが、私が上記のようにいろいろな迷いを生じたのは、映画の作りのせいかもしれませんね。いや、出来が悪いのではなく、監督さんはじめ皆がいい仕事をしているからです。どこかのドラマのように(勝手な想像ですけど)安易な感動を作り出すのではなく、どこまで現実を描くかにこだわったような気がします。もちろんドキュメンタリーのようにはいきませんけれども、充分に誠意を感じさせる出来であると思います。
う〜ん、なんとも辛い気持ちです。鑑賞者としてだけでなく、教育者としてどう向き合うかということについても。また、ここのところ医学部進学の指導が多いものですから、医師のあり方についても考えさせられました。いずれにせよ、安っぽい同情だけでは、結局偽善的な自分に不快感を抱くだけなんですよね。
Amazon 1リットルの涙
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コメント
わたしは、今週のココログガイドで紹介されている者です。これは一年前のを再掲しています。他のブログが閉じたとき、アクセスしてくれる人が古いものへ多かったので、それで再掲を考えました。「あきの70路を語る」の先頭は上記のURLです。ここは424回になっています。明日ここにあなた様のブログの紹介をしたいので一応お断りをさせていただきたくコメントしました。どうかよろしくお願いします。尚、わたしの先頭ブログは1日のアクセス300ほどです。
投稿: 寺山あきの | 2006.01.18 09:37
あきの様、おはようございます。
あきの様のブログ、私もガイドの方から拝見しておりました。
味のあるいいブログだなあ、と思っておりました。
そこに私の愚ブログを紹介してくださるとのこと。
紙面汚しになりませんでしょうか。心配です。
まずはご連絡ありがとうございました。
これを機会に、今後ともよろしくお願い申し上げます。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.01.18 09:56
がっかりさせるといけませんから、もう一度明日の件です。もちろん、こうした内容のブログはぜひ読ませていただきたいと思います。
ところがわたしの明日の紹介は猫なのです。
ごめんなさい。
投稿: あきの | 2006.01.18 13:35
いやいや、それはめでたいことです。
猫マニアにとっては最もうれしいことであります。
逆に安心しましたよ。
では、よろしくお願いいたします。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.01.18 13:42