ステファン・グラッペリ&ミシェル・ペトルチアーニ 『フラミンゴ』
『Flamingo』 Stephane Grappelli & Michel Petrucciani
ちょっと前にグラッペリ翁とマッコイ・タイナーの不思議な共演のところで予告しました完璧なコラボレーションをいよいよ紹介しましょう。
もうこのアルバムについては、私の言葉では何も表現できません。本当に完璧です。
何も言えないと言っておいて、こんなことは書くべきではないかもしれませんが、どうしても書きたいことがあります。これは、世界にとってものすごく重要なメッセージだと思うからです。ふだん、どちらかというとこのような物言いを嫌う私ですが、今日はあえて書きます。
グラッペリはこの録音の時、すでに87歳。ミュージシャンとして充分高齢です。しかし、彼のヴァイオリンから溢れる音楽は、ますます豊かで、洒脱で、優雅です。音楽には、いや人生には、必ずしも加齢がハンディにならないことを美しく語ってくれています。
一方、ペトルチアーニは、先天的な骨の病気のため身長1メートルほど。しかし、彼のピアノから溢れる音楽は、力強く、生き生きとし、幸福に満ち溢れています。音楽には、いや人生には、必ずしも肉体的障害がハンディにならないことを雄弁に語ってくれています。
もちろん、そんなことを抜きにしても、ここに存在する音楽は充分に素晴らしいのですが、しかし、やはり彼らの互いに対する尊敬と思いやりがあってこそ、この奇跡は起きたのだと信じます。一聴、フランス人どうしの何気ないおしゃべりのようにも感じられましょう。そう、本当にさりげないダイアローグが交わされているんです。ところが、聴けば聴くほど、そこから崇高な光が発せられていることに気づかされてゆきます。
このアルバムによせられたペトルチアーニの言葉のほんの一部を紹介します。
「ジャズはあなた方を愛している(私たちはジャズに愛されている)」
95年に、この完璧な作品を残したお二人は、すでにこの世に存在しません。お二人とも亡くなられました。グラッペリは97年89歳で、ペトルチアーニは99年36歳でこの世を去っています。年齢はあまりにも違いますが、二人とも死の寸前まで音楽を愛し、音楽に愛されていました。音楽に愛されている喜びと感謝の気持ち。お二人それぞれの崇高な心が、この奇跡的な録音を可能にしたのに違いありません。人類の遺産です。私は、グラッペリ、ペトルチアーニ、それぞれのベストアルバムに挙げてもいいと思っています。
最後に一つ付け加えますと、ドラムのロイ・ヘインズの存在も忘れてはなりません。何度も聴いていると分かってきます。彼もまた、ジャズに愛されていると。
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コメント
こんにちわ♪先日はコメントありがとうございました。
蘊恥庵庵主さんも地元が静岡なんで
すか。奇遇ですねぇ。その上、俺と同じ何ちゃってプレーヤーなんですね(笑)
お互い頑張りましょう!!それでは。
投稿: ヨウイチ | 2005.12.07 23:52
ヨウイチさん、どうもです。
お互いなんちゃってをきわめましょう!
いつかすみやでお会いできるといいですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.12.08 15:16