『枕草子』に見る「空気嫁」&「痛杉」

ずいぶん前から、自分の物語論(もちろん「萌え=をかし」も含む)を検証するために、いろいろな古典を読みあさっております。なんて別に研究してるわけじゃないので、まあ趣味ですな。それで、いろいろ読んでるとプチ・セレンディピティーが結構ある。今日はこれを紹介しましょう。ある意味「萌え=をかし」の正反対のベクトルです。
いやあ、昔から空気読めないヤツっていたんだなあ。痛すぎ。
「かたはらいたきもの、よくも音弾きとどめぬ琴を、よくも調べで、心の限り弾きたてたる。 客人などに会ひてもの言ふに、奥の方にうちとけ言など言ふを、えは制せで聞く心地。 思ふ人のいたく酔ひて、同じことしたる。聞きゐたりけるを知らで、人のうへ言ひたる。それは、何ばかりの人ならねど、使ふ人などだにいとかたはらいたし。旅立ちたる所にて、下衆どものざれゐたる。にくげなるちごを、おのが心地のかなしきままに、うつくしみ、かなしがり、これが声のままに、言ひたることなど語りたる。才ある人の前にて、才なき人の、ものおぼえ声に人の名など言ひたる。ことによしともおぼえぬわが歌を、人に語りて、人のほめなどしたるよし言ふも、かたはらいたし」
我流の現代語訳しましょうか。かなりの意訳です。まあ空気感のためですね。
「痛いヤツ。ちゃんと弾けもしないギターを、ちゃんとチューニングもしないで、自己陶酔してガンガン弾きまくるヤツ、痛杉!こっちが大事なお客に会ってしゃべってんのに、奥の方でお下品なことへーきで言ってんのを、やめさせられないで聞いてる時の気持ち…ムカッ、空気嫁よ!好きな男がえらく酔っぱらっちゃって、何度も同じこと言ってるのは、さすがに…いたたたた。本人がそこにいて聞いてるのを知らないで、そいつの悪口言っちゃってるヤツ!おいおまい、く、く、空気嫁!それって悪口言われてるヤツが上司に限らず後輩とかでも、そこにいるものにとっちゃ、めっちゃ辛。たまに行った都会で、田舎もんが大騒ぎしてんの!空気嫁や!全然かわいくない赤ん坊を、自分の愛情にまかせてやたらかわいがって、その子の声のトーンまでまねして、言ったことを人に伝えてるヤツ、うう…痛杉!教養ある人の前で、知ったか野郎が物知りぶって、人の名前なんかを言ってるの!空気読んでんのか?大していいとも思えないオリジナル曲を人に聞かせて、誰かがほめてくれたりしたこと(お世辞に決まっとるやんけ)を語ってるヤツ!痛杉!逝ってよし!」
どうですか、1000年前も今も、日本人の感性は大して変わっていませんよね。「空気嫁」的感情を、「かたはらいたし」、つまり「傍らにいると痛い」と表現しているわけで、これは今の「痛い」と全く同じ感覚と言えます。
こんなふうに読み直してみると、堅苦しい古典作品も実に生き生きとした楽しいものになりますよ。
それにしても、清少納言って毒舌っすね。2ちゃんねらーだったのかなあ。
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コメント
この現代語訳面白すぎ!!!
こーゆー風に全部ねらー現代語訳してくれたら、古典の勉強も楽しくできたのに。。。
投稿: 3期生 サヤカ | 2006.06.22 13:22
いや全部こうしたいんだけどね、受験でこれ書いちゃったらおしまいでしょ。
まあそのうち本でも出すから、買ってくれよ。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.06.22 13:44