グルーヴァーズ 『モダン・ブギー・シンジケート』
THE GROOVERS 『MODERN BOOGIE SYNDICATE』
ある意味で、いや真の意味で、日本の最強ロックバンドはこのTHE GROOVERSでしょう。異論はないでしょう。特に業界においては。彼らほどプロに尊敬されるバンドはそうそうない。
日本ロック史を語るのは非常に難しいと言えます。これが欧米のロック史なら話は別。教科書だって作れましょう。日本のロックは、ロックとは違う情緒のもとで育ってしまったと私は考えています。また、日本独特の音楽市場の原理というものもあります。ものすごくロック的?に断じてしまうと、ちまたに流れるロック・ミュージックのほとんどが演歌かフォークか歌謡曲だということです。それはそれでまさに日本的な外来文化の受容形態であり、断じて断罪すべきものではありません(アレ?矛盾してるかな)。
では、本当のロックは日本にはないのか。いや、だからここにあるんですよ。2年半ぶりのグルーヴァーズの新譜、これはものすごい。純正ロック。
ロックって、やっぱり岩みたいにゴツゴツしてて重くて、切り刻んだり押しつぶしたりする存在であるはずなんですね。ちょっと(かなり)話が飛躍するかもしれませんが、藤井一彦さんのギターって究極の打製石器みたいなんですよ。
え?打製石器?そう打製石器です。誰ですか?打製石器って磨製石器以前のローテクなものだと思っているのは。まったく学校教育は困ったもんです。
打製と磨製、どっちが切り刻む能力が高いと思いますか。どちらが尖ってるでしょう。そう、磨製石器はあたりはずれなく平均的な能力を持っていますが、打製石器の最大能力には全くかないません。磨いたものと割れたものをイメージすれば分かりますよね。
でも、打製石器にはダメダメなものもたくさんある。つまり、究極の力を発揮する石器を作るには、実はものすごい熟練の技とセンスが必要なわけです。
一彦さんのギターは常に究極の打製石器。イメージ通り叩き割るテクはもちろん完璧ですが、それよりまずは素材になる岩をたくさん持っている。そして、出来上がった石器はいろいろなシェイプをしていて、その使い道も多彩。いろいろなものをいろいろな形で切り刻んだり押しつぶしたりします。
学校教育では、なんとなく打製よりも磨製のほうが洗練されているように教えられます。縄文式土器と弥生式土器についてもそうですね。だまされてはいけません。本当の洗練とは平均化、馴化のことではないのです。
弥生時代になっても頑固一徹、縄文式土器を作り続けた人もいたでしょう。それを単なる時代遅れとするのは、簡単なことです。しかし、時代が全て正しいわけはない。時代に流されずホンモノを追求することは尊いことです。
なんかまたとんでもない表現になってしまいましたけど、とにかくこういう感じなんですよ。現代の名工?もちろん、あとのお二人のメンバーにも同じことが言えますよ。
藤井一彦さんとはちょっとした御縁がありまして、そんな意味でも私はすっかりファンになってしまいました。いつまでもホンモノのロックで私たちを切り刻んでほしいと思います。
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