『裁判大噴火』 阿曽山大噴火 (河出書房新社)
大川興行所属の芸人さんによる裁判傍聴記です。裁判のことは全然知らないんで、かなり興味深く読みました。
この本を知ったきっかけはひょんなことです。
著者の苗字「阿曽山」というのは、私の中では「富士山」のことなんです。「阿蘇山」ではない。正確には「阿祖山」と書きますが、「阿曽山」という表記も見かけます。って、どこにかというと、私がその研究をライフワークの一つとしている「富士古文献」つまり「宮下文書」にです。な〜んて、かなりマニアックなので詳しく説明しませんが、まあ簡単に言えば、富士北麓地域に残るトンデモ史書であります。いわゆる偽書と認定されているシロモノです。
それはいいとして、とにかく「阿曽山大噴火」なんて言われたら、私の頭の中では、そっち系、つまり「ムー系」の『200×年、富士山が大噴火!』なんて記事が勝手に浮かんじゃうんですね。私もかなりトンデモです。
話それまくり。さて、実際には芸人さんのお名前なわけで、それはそれでかなりトンデモとも言えますが、とにかくその方が書いた渾身の裁判傍聴記なわけです。で、その内容は…。
『裁判小噴火』でしたねえ。そう、ちょっと火山性ガスが噴き出した程度。いや、冒頭にも書いたように、なにしろ知らない世界をのぞき見するわけですから、かなり面白かったですよ。しかし、読み進むにしたがって、どうもスカッとしない。ガスだけちょろっと出て、すっきり身が出ない…(?)。
たしかに扱っているのが、オウムや法の華やスーパーフリーや石原裕次郎の弟を名乗る男なんかの裁判ですから、それなりに面白い。へえ〜、ってことがものすごくたくさんありました。裁判ってもっと堅苦しいものと思ってましたが、実際にはかなり人間味溢れるお芝居という感じなんですね。そう、そのストーリー性やアドリブ性、数人の対戦者どうしとレフェリーの存在なんかが、私にはプロレスのタッグマッチに似てると感じられました。
しかし、どうもそれぞれの章の読後感が物足りない。おそらく、実際の裁判という人権(特に被害者の)にかかわることを、徹底して笑い倒すことができないのだと思います。当然ですね。
最初は正直、筆者の筆力の問題なのかなと思いましたけれど、違いますね。最後の方になると、阿曽山さんの苦悩までが感じられるようになってきます。たぶん、それぞれの裁判について、プライベートではもっと面白おかしく笑い倒しているんだと思いますよ。こうしてパブリッシュすると、どうしても規制が働く。不謹慎と言われる可能性が高い。芸人さん、それも大川興行所属としてはかなり辛いのではないでしょうか。
しかし、たしかに私も裁判を傍聴に行きたくなりました。そうして、自分の心の中で思いっきり味わってみたいと思いました。たぶん実際には笑えないことがほとんどでしょうが(…と私も弱気になる)。
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