シンポジウム『萌えてはいけない。』
非常に興味深いシンポジウムが昨日行なわれました。今、私が興味を持っている「萌え」や「オタク文化」についての、まじめな?議論が繰り広げられたようです。
それにしても、パネラーがすごすぎる。どっかで見たことのあるメンバーですな。いしかわじゅん、大月隆寛、岡田斗司夫、夏目房之介、笹峯あい、杉山知之、富野由悠季。特にスペシャルゲスト富野氏の登場には、会場も大興奮したようです。そりゃそうだ。オタク文化の象徴、ガンダムの生みの親ですからね(ちなみに私はガンダムを観たことがない…)。
もうこのメンバーを見ただけで、私は萌えちゃうんですよ。そして彼らに「萌えてはいけない」なんて言われたら、もう余計に萌えちゃいますよね。カリスマシェフの料理を前に「食べてはいけない」って言われるようなもんだ。いや、物理的に食べないことは可能でも、心理的に萌えないのは難しい。かなりの修行を要します。
で、私はガンダムすら知らないわけで、仕方なく非オタクを自認しているのですが、考えてみると、こうして萌えてはいる。つまりオタク萌えなわけで、オタクヲタとも言えるのでは。直接的な対象よりは、その属性や手段に萌えるという意味では、真性のオタクとも言えますな。
で、今回のシンポジウムの内容は、下記のリンクから確認してください。ここでは、いつものごとく局所的な感想と持論を展開させていただきます。
まず、私の萌えのツボにはまったのは、「うる星やつら」は萌えではないというアンケート結果。萌えではないということに萌える私も変ですが、私もこの結果には全く同意します。この前書いたように、アニメうる星は男の手によって作られた「もののあはれ」の物語ですので、萌え(=をかし)ではない。いろいろな意味で萌え(オタク文化)の萌芽(お〜、字の如しですなあ)にはなりましたが、萌え自身ではまだない。そのきわどさ、マージナルな部分、ある意味両性具有的なところが、あの作品の魅力だと思います。富野さんも語ってますが、この作品をいまだに誰も超えられない。
次の萌えのポイントは、例のNRI(野村総研)のオタクレポート関連です。勇んで登場し、自信満々で発表した(と思われる)NRIスタッフに対して、いしかわ氏が「こんなのこの会場にいるやつなら、誰だってわかってるよな? もっと面白いことを聞きたかったよ」と一喝したと。これは萌えますねえ。私も書きましたが、ちょっと部外者が調子に乗って、コアな世界を語りすぎた。これは失笑と反発を買います。内心「ざまあみろ」であり、内心「オレもやばいな」でありまして、ああなるほど、萌えとは共感をベースにした感情なんですな。瞬間の思い入れでしょうか。やっぱり「をかし」だな。
続きましては、富野氏の「多数の人間が関わって制作しているアニメにおいて、自分のセンスだけで方向付けするな、××!!」という爆弾発言ですね。これにも萌え(共感し)ました。××が誰かは知りませんが、私がここで書いた「オーケストラの指揮者」発言と同じ意味の爆弾でしょう。
くりかえしになりますが、こうして書いてますと、自分にとっての「萌え」の本質が見えてきますね。「共感」…それも、刹那的な局所的な共感。本質に対する理解や実感というよりは、属性や手段や感情に対する共感。居心地の良さというか、座り心地の良さというか、しっくり来て、結局自分の居場所があるというような。つまり、共通感情に支えられた自分の存在。少々特殊であっても、ある種の社会性に身をゆだねられる自分への安心…。オタクは決して孤独ではない。いや、孤独だからこそ強まる共感の絆なのでしょうか。
そう考えると、つい最近も養老さんにインスパイアされて書きましたが、やはり無常観をベースにした「もののあはれ」とは違いますね。「もののあはれ」からの逃避の手段なのかもしれません。生身の人間の生と向き合うのではなく、変化しないヴァーチャルな「こと」に向かう。オタクの常套手段「分析」というのはどんどん微分していくってことなんです。微分していくと、限りなく恒常に近づける。デジタル化はそれを助長しました。「萌えてはいけない。」…なるほど深い言葉ですな。
いずれにせよ、「萌え」を単に美少女系キャラに向かう特殊な感情としてとらえるのではなく、日本の歴史や伝統に照らし合わせて考えるべきだと思いますよ。いずれ本でも出そうかな。だめだめ、調子に乗ると失笑と怒りを買うよ。
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