『続弾!問題な日本語』 北原保雄 (大修館書店)
さて、昨日の続弾です。
『続弾!問題な日本語』も読んでみました。面白いもので、問題になる日本語のほとんどはクッションなんですよね。これは日本語古来の特徴であって、ある意味今さら問題化するべきことでもない。
「〜円からお預かりします」にせよ「〜のほう」にせよ「〜のかたちで」にせよ「ワタシ的には」にせよ、つまりは直接的な表現を嫌うという日本人の心性に基づいている現象ということです。ちなみに私は敬語も婉曲法の一つと考えています。
最近では、国際化の波に流されて、日本人はもっとはっきりものを言えとか、主語をはっきり示して責任の所在を明らかにしろとか、いろいろと言われていますが、もともと、日本人は他者との対立を避けたい、自分が我慢してでも相手を立てたい、というような気持ちが強いわけでして、それ自体は決して悪いことではないと思います。なんでもはっきり言うために、いらん対立の火種をまきちらす某国のようになる必要はありません。国際化の時代だからこそ、日本的コミュニケーションを広めるべきですよ…と言いたいところですが、そんなこともなんとなく言いにくい世の中になってしまいましたな。
まあ、古文なんて読んでると、まったく問題な日本語だらけですよ。朧化、婉曲、比喩、示唆、象徴…。全然はっきりしてない。そこがいいわけでしょう。それを勉強しているわけですよね、学校で。問題な日本語から空気を読むリテラシーというのも大切です。
ちなみに、このブログでも問題な日本語が多用されています。それは、不特定多数の読者の方々と軋轢が生じないようにしているためです。きついことを言う時も、オブラートでくるんでノシをつけています。これはワタシ的には守りでもありますが、攻めでもあるのです。多くの人に受け入れてもらうためのストラテジーの一つです。
さてさて、昨日も書いたように、このシリーズにおける北原先生とそのお仲間の皆さんのスタンスには好感を持てます。上述した日本人の心性をよく理解していらっしゃいますし、問題な日本語に対する先生方の愛情すら感じます。愛があるからこそ、苦言も呈しますし、誤解を生む可能性も指摘します。くりかえしになりますが、ただただ若者の言葉を「乱れている」と評する年寄りじみた本とは一線を画しています。
ただ、どうでしょう、まじめに分析しすぎているために、ちょっと文法的な内容が多くなっているような気がします。また、文豪も使っていたから…のような論調はあまり適切ではないと感じました。
あっ、あと、下欄にある別コーナーは違うページにまとめた方が良かったかも。ちょっと集中できない。挿入されているマンガの方はとっても面白くてグーでしたね。最近の本はいろいろと工夫されてますね。こういう「本」の変化も、全く問題ないどころか、どんどん進めるべきだと思います。読んでもらうための守りであり攻めであります。
Amazon 続弾!問題な日本語
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