『問題な日本語』 北原保雄 (大修館書店)
いちおう、私も国語学を専攻して、今国語の先生をやっているわけですし、こうして毎日日本語で文章を書いたりしているので、かなり言葉には敏感な方だと自負しています。
ふだんはこの類の本は買わないんですけどね。安易な日本語ブームには眉をひそめてきたのです。特に、少し古い日本語と比較して今の日本語は乱れているというタイプの本には、本当にうんざりしてきました。言葉の本質を無視した暴論だと感じてきました。たった1000年前の平安時代の日本語と今の日本語が、これほどまでに違っているということすら無視した、それこそ問題な日本語観です。
しかしこの本はちょっと違いました。さすがは北原先生と、辞書を作るスタッフのみなさんです。言葉は変化するもの、そしてその理由も意味もちゃんとあるということをよく知っておられる。問題な日本語たちも、将来普通になる可能性があることを述べているわけです。当然です。文化とは、言葉とはそういうものです。
さてさて、ここでこのブログの日本語についてちょっとことわっておきましょう。これは北原先生に言わせれば、とりあえずは問題なヤツに分類されるでしょうね。それを承知であえてこの文体…私は「講演起こし体」と呼んでいるんですが…で書かせていただきます。この文体こそブログというメディアに最も適した文体だと思うのです。
私はTPOに適ったものこそが正しい日本語だと考えています。決して絶対的な正しい日本語があるわけではない。例えば、方言では日常的に敬語が存在しないこともよくありますし、2ちゃんねるでいわゆる正しい日本語で書き込むと大変なことになる。常に「乱れていない」日本語を使い続けることが、どれほど危険なことかは、少し考えればわかりますよね。つまり「空気を読む」というやつです。空気を読んだ上でその空気に適した日本語を使う。これが、正しい日本語以前の正しい人の道です(?)。
私は田舎の若者と日々接する仕事をしていたり、2ちゃんの住人でもあったりするからでしょうか、問題な日本語たちにそれほど「違和感を感じません」。それどころか、彼らによってどれほど日本語の世界が広がったことか。人間と同じで「問題な」ヤツらを排除したり、矯正したりするだけでは、なんの解決にもならないということです。
明日「続弾!問題な日本語」もおススメします。そこで続きを書かせていただきます。では。
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