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2005.10.23

『どこ?つきよのばんのさがしもの』 山形明美 (講談社)

4062120194 半年ほど前に、娘のために買ったのですが、今やすっかり私のお気に入りになっています。もちろん、本屋さんでちらっと見て、これは面白いな、と思いましたよ。赤いリボンの黒猫ちゃんが主役ですし。各ページに無数のオブジェが並んでおり、いろいろなものを探して楽しみます。単純に『ウォーリーをさがせ!』みたいとも言えますが、安野光雅さんの『旅の絵本』のようでもあります。ただ眺めていてもいい。
 これはジャンルは何なんでしょうねえ。いちおう絵本のコーナーに置いてあるのですが、正確には絵ではないので、絵本ではないような。実際山形さんは絵本作家ではありません。造形作家です。
 私が見るところ、基本的に粘土のような素材を使ってオブジェを造っているようです。まずはそのそれぞれのデザインが秀逸ですね。粘土(のようなもの)ならではの、曲線を主調とした柔らかい造型。その歪んだ世界が、現実との適度な距離を感じさせます。そこが気持ちいい。
 そしてジオラマとしてのデザイニングもお見事。それぞれのページごとのコンセプトやアイデアに絶妙な変化があります。そして非常に立体的なアレンジメント。照明を含む写真撮影の技術も素晴らしい(ちなみに撮影は大畑俊男さん)。それこそ片目で見ると、もうホントに自分もファンタジーワールドに立っているように感じられますよ。ぜひお試しあれ。
 それにしても、この作品を造るのに、いったいどれほどの時間をかけているのでしょうか。一つ一つがものすごく精緻に造られています。見れば見るほどびっくり。『旅の絵本』や『ウォーリー』も大変だろうなあと思いますけれど、こちらはもっともっと手間がかかってますよ。えらいなあ、山形さん。
 つまり、単なる絵本として片づけてしまうにはもったいない作品です。絵本にはそういうものがたくさんありますけれど、これは本当に新しい美術作品として、大人の観賞にも充分堪えられます。絵でもなく、写真でもなく、単なるジオラマでもなく、人形でもなく。
 でも、やっぱり基本にあるのは、自分が小さいときにこねた粘土の世界なのです。自分だけの不思議な世界を造った経験というのを、誰しも持っていることでしょう。それです。自分の手で新しい世界が創造されていく。自分だけがその世界に迷いこむような、夢のような感覚。それを思い出させてくれるのではないでしょうか。
 大人になってしまった皆さんに強くおススメします。うん、すばらしい。

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