『人にはどれだけの物が必要か−ミニマム生活のすすめ』 鈴木孝夫 (中公文庫)
おとといのことがまだ夢のように感じられる今日の昼下がり。すみません、また大明神ネタで書かせて下さい。
言語社会学者としての鈴木孝夫先生はあまりにも有名です。その関係の御著書はたくさん書店に並んでいますし、その手の堅い本としては、実際かなり売れているようです。また、昨日も書いてように、国語の教科書や入試問題の定番出典筆者としても昔からかなり有名ですので、多くの日本人は、どこかで先生の文章に接しているものと思われます。
そんな中で、隠れた名著として私がおススメしたいのがこの本です。隠れた名著とは失礼かもしれませんね。でも、言語と文化、社会に関する知見の卓越した方との認識があまりに強いために、このミニマム生活実践者、つまり環境問題に対する有言実行者としての先生を知らない、という方も多いのではないかと思うのです。
私はこの本が大好きです。この本の内容は目次を見れは分かるでしょう。下のAmazonのリンクからお確かめください。
ここに書かれていることは、絶対に正しいことです。しかし、その絶対に正しいことを実践するのは、社会的には非常に難しい。この時点で、我々のような普通の人間は意志が萎える。だから実際には何もできない。世の中に流される。ところが、先生は、その持ち前の強靱な意志と行動力、そして自由な智恵とユーモアの精神をもって、それをぐいぐいと実行してしまうんです。
そんな、有言実行のドキュメンタリーとして大変興味深い内容になっているわけですね。難しいことを、シャレてイキに実現してしまう。まったくステキです。おとといも、別れ際に、御自身の背広のネームを見せてくれました。もちろん「鈴木」ではありません。「渡部」でした。もらいものなんですね。実はズボンも…と言いながら脱ごうとおどけてみせる…なんともおちゃめな。
私はこの本の「地球は私のもの」という考えに、つくづく感心させられました。「地球はみんなのもの」ではないんですよ。この街も、この木も、この鳥も、はたまたあそこのキレイなお姉さんも、全部自分のもの。自分のものだからこそ、大切にするし、整えようとするし、心から心配もする。きれいごとで、地球はみんなのもの、愛は地球をなんたら…なんていう浮ついた言葉を吐いても、実際何も変わりません。
仏教的な考えにもつながりませんか。世界の全てが縁でつながっているとすれば、自分と世界は同価値である。だから、「地球は私のもの」であり、「私は地球のもの」であると。
あと、この本でもそうですし、おとといも強く感じたことなのですが、先生は、ご自分の意見を決して人に強要しません。人それぞれの考え方があるし、境遇もある、そういう言葉がお話の節々に聞かれました。そこが先生の魅力の一つだと感じました。
この本は、人類、特に先進諸国の人々(特にアメリカかな…そんな話もやっぱりたくさん出ましたよ)必読でしょう。この本は、地球を救う、つまり結果的に自分を救う大きなきっかけになる力を持っています。鈴木先生は、今までの人生で、5、6回自分を革命的に変えてこられたとおっしゃっていました。人間は変われるのですね。それは、自分に対しても、地球全体に対しても、希望となる事実です。そんなことも、強く強く感じることができる鈴木大明神の言霊でした。
Amazon 人にはどれだけの物が必要か
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