『MD現代文・小論文』 有坂誠人・辻本浩三 他 (朝日出版社)
今までも、高校生向きの書籍で、これは社会人にも有用だな、というものを紹介してきました。これとかこれとかですね。本当にこれらのおかげで、私も少しは大人になりました(恥)。
今日紹介する本も非常に素晴らしい内容です。MDとはミニ・ディクショナリーのことだそうですが、小さな辞書というよりも、読みごたえのあるれっきとした教養本であると思います。全904ページ。ものすごい情報量です。もちろん、私も全部読んだわけではありません。しかし、どこを開いても面白いし、勉強になります。
教養については、以前にずいぶんと悪口を書いた記憶があるのですが、実はそれは、教養と言われるものすら理解できない凡夫の遠吠えに過ぎなかったことを、ここに告白します。いや、教養は分かっても分からなくても嫌いではないのですが、いわゆる教養主義はあんまり好きになれない私なのでした。
で、この本には20世紀の教養がどっさり詰まっています。21世紀に入って少し経ちましたので、多少の変化は見られるようになりましたけれど、大学入試として課せられる現代文の試験や小論文の内容は、依然として20世紀の知についてのものが多い。だんだんとそれらを反省する空気は感じられるようになりましたが、やはり20世紀は人類にとって特別の思い入れがあるんでしょうな。そういう雰囲気がいまだに大学の先生方の間にあるということです。
で、で、この本は、21世紀を生きる若者(受験生)たちのために、いろいろな大手予備校のそうそうたる講師たちが集い、受験辞書という形を借りて理想の20世紀教養書を作ってしまったものです。裏表紙には次のようにあります。
1 過去の入試データをもとに4000語の重要語句を収録、辞書と〈現代用語〉が一冊に。
2 受験生を迎え入れる大学側が、「これだけは知ってほしい」と思う最重要テーマ〈自由〉を徹底考察する講義録「もうひとつの〈自由〉」。
3 「小論文−入試でねらわれるテーマ20」「入試問題キーワード」「アカデミズム入門」で小論文対策は万全。
4 「現代文・小論文のキーパーソン」(人と作品、約200人!!)をまとめた。
5 「語彙力アップ・テスト」「覚えておきたい略語リスト」で不安を解消。
6 河合塾の人気講師・亀井和子先生の特別実戦講義を5回分収録。
まあ、こんな中身なわけで、いかにも勉強になりそうなのですが、私がまず面白いと思ったのは、2です。これは、京都大学の助教授大澤真幸さんの講演の記録でして、これだけでも70ページに及ぶ充実の内容です。全体を大きく「リベラリズムの勝利=敗北」「自由の可能条件」「責任論」の3部に分けてお話をされています。大澤さんは若い学者さんですから、少し21世紀的20世紀解釈になっていて(1998年の講演です)、なかなかエキサイティングでした。3ももちろんためになります。でも4が面白かった。人物からふりかえる20世紀もオツなものです。「解説」として紹介されている各人物の代表著書だけでも読んでおこうかなあ。もちろんかの大明神も選ばれてました。
私も結局は20世紀に育てられた人間ですから、こういうもので勉強することによって、自分という不可思議なものに迫ることができるような気がするのです。だから、この本、実は受験生よりも大人に読んでもらいたいんですよ。いや、読んでもらいたい、ではないな。読むと自分が見えてきて面白いですよ…かな。
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