『ピカレスク-太宰治伝』 猪瀬直樹 (小学館)
ここのところドラマを見たり、授業で取り上げたり太宰づいています。そんな折、ちょっとした騒ぎが。
昨日の夜、突然このブログへのアクセスが急増しました。昨晩だけで1500以上に達しました。その記事はこれです。え?なんで?という感じだったのですが、どうも2ちゃんから飛んできてるらしい。それもかなり旬なスレからでないと、このペースはない。と思ったら、ニュース速報+板からだったんです。
私の記事が引用されたのは【社会】"2ちゃんねるで、指摘あり" 少女マンガ、表現盗用で絶版・回収に…作者も謝罪★というスレでした。あのパクリ事件ですね。ニュースで御存知の方も多いと思います。たしかにあれは完全なるトレースであり、参考とかパロディとかいう次元ではない。かわいそうだけれど、非難されて当然。
で、なんで私の記事が…というのは、まあ記事を読んでもらえばわかると思いますけれど、はっきり言ってあのスレには場違いな引用であったと思います。2ちゃんに場違いも何もないわけですが。
さあ、それで、この本を読み直そうかなという気分になったのです。この本は太宰についての評伝であるとともに、彼の師であった井伏鱒二の「悪業」を暴く内容になっています。端的に書けば、大文豪井伏鱒二の、たとえば代表作である「山椒魚」や「ジョン万次郎漂流記」「黒い雨」にはタネ本がある、つまり2ちゃん風に言えば、パクリである、ということを暴いているわけです。それによって、太宰の暗部も照射されるという仕組みになっており、この『ピカレスク』は実に興味深いノンフィクション作品に仕上がっています。
全ての事実が明かされることが、文学にとって幸せなことであるかどうかは別問題です。しかし、こうした視点から作品を見直すことによって、作品が新たなメッセージを私たちに発信することになるわけですから、特に彼らのようにすでに伝説化してしまった、歴史になってしまった人たちにとっては、決して不名誉なことではないと思います。
ここで、考えなければならないのは、井伏を間接的に糾弾し、今になって猪瀬直樹さんを介して師に復讐した太宰治自身が、たいへんなブリーダー作家(私の造語です)だったということです。授業で扱った「走れメロス」や「カチカチ山」や「斜陽」を挙げるまでもなく、彼の作品には必ず種があります。それが、自分の体験であることも多々ありますが、他から仕入れた種であることも実に多い。
今回の一件がパクリとして連載中止・絶版・回収という絶望的な仕打ちを受けるのであれば、太宰や井伏についても同じ仕打ちをしなければならない、という意見もあるでしょう。たしかにほとんどトレースだと思われる部分もある。それだけでなく、あれもこれも…ということで、2ちゃんは盛り上がってるわけですが、私はいちおう表現者の一人として(たとえばこのブログのオーサーとして)、心当たりがたくさんありますので、これ以上は言及しませんし、2ちゃんにも書き込める立場ではありません。
難しいですね。どこからどこまでがパロディで、どこからどこまでがパクリか。さらにパロディとブリーディングの境目も曖昧。オマージュ?インスパイア?引用?そこに著作権の問題もからみます。いっそのこと、みんなに喜ばれるいいものであれば、なんでもいいような気もしますし。ただ、2ちゃんの書き込みでなるほどと思ったものがありましたので、それを無断引用して(笑)今日のお仕事はおしまいにします。
「ばれないと困るのがパロディー。ばれると困るのがパクリ」
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