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2005.09.09

「文學ト云フ事」 片岡K演出作品 (フジテレビ)

mbg1 今日は現代文の授業で「文學ト云フ事」を観ました。総集編です。もうかれこれ11年くらい前に、フジテレビの深夜枠で放送されていたものなんですが、実は今でもコアなファンが多いとか。私は当時、知り合いにビデオをいただきまして、まとめて観たのですが、とにかく非常に面白くためになりましたので、今でもこうして教材として使っております。
 この番組、簡単に言えば、いわゆる文芸作品の予告編(だけ)を作っちゃおうというものでした。映画の予告編が、その本編を観たくなるように作ってあるのと同じように、本編である小説を読みたくなるように、文学の予告編を映画の予告編の形態で作ったわけです。まずはこの発想が面白い。
 で、やっぱり本編を観てみたくなる。でも、実際には映画はありませんから、結局は本屋さんで本を買って、一生読まないだろうなという古くさい文芸作品を読むことになる。こういう構図ですね。実際私もほとんど原作にあたりましたし、生徒も「文學」に対する認識を改めるようです。
 このような番組こそ、ぜひ続けて放映してほしいですね。国営放送さんでも、少しは「文學」を予告するような番組を作っていますが、やっぱりこのような映画の予告編形式が一番効果ありますよ、きっと。
 まず、取り上げられていた作品及び出演者を御覧下さい。

 武者小路実篤 『友情』 (村島亮・井出薫・袴田吉彦)
 夏目漱石 『三四郎』 (大沢健・井出薫・北島道太)
 川端康成 『みずうみ』 (大高洋夫・井出薫・宝生舞・角口明美・星野衣厘)
 太宰治 『人間失格』 (大沢健・浅野麻衣子)
 森鴎外 『雁』 (桜金造・井出薫・袴田吉彦)
 谷崎潤一郎 『蓼食う虫』 (段田安則・緒川たまき・清水昭博・柾木良子・二瓶鮫一)
 田中英光 『オリンポスの果実』 (中山博子・村島亮・星野衣厘)
 田山花袋 『蒲団』 (清水昭博・浅野麻衣子・二瓶鮫一)
 安部公房 『箱男』 (緒川たまき・長谷川大作・遠山俊也)
 伊藤左千男 『野菊の墓』 (井出薫・村島亮・橘雪子)
 太宰治 『斜陽』 (緒川たまき・小木茂光・大川栄子・浅見真公人)
 三島由紀夫 『美徳のよろめき』 (椎名桔平・水島かおり)
 夏目漱石 『夢十夜』 (真島啓・宝生舞・後藤久美)
 岡本かの子 『老妓抄』 (大川栄子・椎名桔平・井出薫)
 川端康成 『朝雲』 (井出薫・緒川たまき・五十嵐五十鈴)
 森鴎外 『青年』 (清水邦彦・柾木良子・井出薫)
 室生犀星 『或る少女の死まで』 (大高洋夫・ ともさかりえ)
 二葉亭四迷 『浮雲』 (井出薫・袴田吉彦・村島亮)

mbg2 どうです?なかなか興味深いでしょう。作品もなかなか強者ぞろいですけれど、出演者も今見るとスゴイ!何しろ11年前ですからね。井出薫も、宝生舞も、袴田吉彦も、段田安則も、緒川たまきも、椎名桔平も、ともさかりえも、ほとんど無名でしたからね。それから笑えるのは、バナナマンの日村勇紀が真面目な顔で(でもやっぱりキモい)出てることですかね。もちろん、当時は無名も無名。役者志望だったのかな。私は緒川たまきの上品な美しさにすっかりやられてました。
 この番組がこれだけレベルの高いものになったのは、もちろん片岡K氏の力によるものだと思います。彼の初監督映画「インストール」もある意味文学作品を扱ったものでしたが、あれもかなり深夜枠テイストを効かせてましたね。好き嫌いが分かれる映画でした。
mbg3 で、文學の予告編、それぞれの作品の中に必ず「恋はあまりにも○○だった」というコピーが入るんですけど、まあ○○が「残酷」とか「不可解」だとかの内はよかったのですが、だんだんネタが切れてきて、しまいには「恋はあまりにも近代だった」ってのはどうかと…。まあ、浮雲ってそういう存在ですけどね。生徒も爆笑してました。でも、とにかく傑作番組ですよ。総集編はただ予告編をつなげただけですけれど、それぞれの回では、なかなか渋い方々による解説もついておりました。それもまた良かった。音楽のセンスも抜群でしたね。ぜひまたやってほしい番組の一つです。
 ちなみに、井出薫さんは、今片岡Kさんの奥様になっております。なるほど〜。

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コメント

誰かが言ってました。

「予告編ほど面白いものはない。」

私もそう思います。限られた条件の中で如何に対象の関心を惹くか、よく練られていることが多いです。逆に言えば本編が冗長でつまらないと言うことなんでしょうね。(今回取り上げられていた作品に関してはそうでもなさそうですが...。なにせ半分以上の作品を未読なので。)
当然短ければ良いわけでもなく、一方でハリウッド映画のように全編めまぐるしいほどの展開も疲れますが、やっぱり面白いことが一番大事なんだと思います。
予告編の方が面白いと思わせる作品は、やはり失敗なんでしょうね。
話題が逸れましたが、私、この番組は非常に見たかったです。

投稿: LUKE | 2008.08.05 08:46

LUKEさん、おはようございます。
予告編ほど面白いものはない…
なるほどですね。
そう考えるとこの番組はとってもよくできてますよ。
ぜひご覧下さい。
ご入り用の際はメールにてご連絡下さい。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.06 09:19

>ご入り用の際はメールにてご連絡下さい。

お気遣いありがとうございます。
お手を煩わせるのは心底恐縮いたします。
その機会に“その情報”と巡り会えるかというのも
なにかの“縁”と思いますので、
今後機会がありましたらということで。

この度は心より感謝いたします。

投稿: LUKE | 2008.08.07 13:16

LUKEさん、これに限らず、
どうぞご遠慮なく。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2008.08.08 08:19

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受信: 2005.09.28 16:32

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