『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』 山田真哉 (光文社新書)
借りて読んでみました。今日はたまたま古文の授業中、「た〜けや〜、さおだけ〜」という声が聞こえてきまして、生徒にこの本の話をしたんです。私も皆様と同様、「さおだけ屋」については不思議に思っておりましたから、それなりの答えが得られ、その点に関しては私も生徒も満足でしたね。
この本のうまいところは、そのタイトルにつきるでしょう。いつかも書きましたけれど、潜在意識の中の共通感情の掘り出しこそが、人の興味をそそるわけですから。ただ、あとがきで告白していますとおり、このタイトルはご自身が一人で決められたわけではない。不特定多数のアイデアの集積ということのようです。商品名を決定するという感覚でしょうかね。それがビジネス的な成功を招いた。
さおだけ屋の話は最初だけでしたが、私は会計学を本当に知りませんでしたし、数字にも弱い典型的なタイプですので、全編通してかなり興味深く読むことができました。そして分かったことは、私はやっぱり会計的なセンスがない、ということです。どんぶり勘定の権化みたいな人間ですから。私の会計学は「損したことを気にすると精神衛生上よくないので、損したことに気づかないようにする。逆に得したことは必要以上に強調して自分を盛り上げる」ですからね(笑)。
こういうタイプの入門本は、私のような完全なる門外漢にとっては、非常に有用な「いい本」になりえます。しかし、その道の方から見ると、それこそ「ダメ本」になってしまう。これは仕方のないことです。私も自分の専門分野には厳しいですからね。そうしたマイナスの評価なんていうものは、私なら無視、あるいは気づかないようにするわけですが、きっと筆者なら、それは予想された損失であり、まあ全体として利益が上がればいいと考えるでしょう。
それにしても、この会計学の本も、他の分野の本と同様に、人生を象徴しているところが多々ありましたね。「ゴーイング・コンサーン」が人の生涯の究極テーマであるのはもちろんです。また、お金を「価値」と読みかえれば、「チャンス・ゲイン」や「チャンス・ロス」、「ローリスク・ハイリターン」やら「フリー・キャッシュ・フロー」なんて言葉も重みを持って迫ってきます。ということは、私のは「どんぶり勘定人生」か…。資金繰りがショートしないようにしなくちゃ、ですね。
ところで、この本で関心したのは、筆者の文章です。さすが、文学部出身ですし、塾の現代文の講師だった方です。特に名文というわけではありませんけれど、そつなくリズム良く、読んでいて疲れない文体でした。ひと言で言えば、押し付けでない相手を思いやる文体ですね。
あ、そうそう、今日のニュースでやってましたね、カネボウの粉飾決算の件。山田さん、例の大手会計事務所にお勤めされていたんですね。おやめになって正解だったかも。
Amazon さおだけ屋はなぜ潰れないのか?
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