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2005.08.07

『アインシュタインの宿題』 福江純 (知恵の森文庫)

4334782396 昨日、今日と模擬試験の監督が入っていて、時間がたっぷりありましたので、同僚の理科の先生の書棚からこの本を拝借して読んでみました。
 この本を選んだのには理由があります。昨日は広島被爆60年の日でした。みなさんご存知のように、原爆の理論的裏付けになったのは、アインシュタインの特殊相対性理論です。また、本意は別のところ(対ナチスでしょう)にあったとはいえ、時の大統領ルーズベルトに原爆製造を進言したのもアインシュタインらです。今年はその特殊相対性理論発表からちょうど100年、また彼の死後50年という、なんとも因縁めいた年であります。
 そんなわけで、目に付いたこの本を読んでみたわけです。
 アインシュタインの相対性理論を知ったのは小学校5年生くらいのときでしたか。将来は、天文学者か物理学者になるんだと勝手に決めていた少年(ワタクシ)は、何冊かの本を読んでいました。その中に、子どもでもとてもイメージしやすい良書があったのですが、書名も著者名も忘れてしまいました。本の大きさや色合いや質感というのは覚えてるんですけどね。
 その後、どういうわけか真性文系になっちゃった(なりさがった?)ワタクシでありますが、こうして国語の教師になっても、アインシュタインは特別の存在に変わりありません。それはやはり、彼自身の魅力による部分が大きい。アインシュタインはヴァイオリンを弾きましたし、ユーモアのセンスも抜群。そして、彼が大の日本びいきであったことも重要なポイントです。しかし、何と言っても、彼の姿勢、ものを見る、そして考える時の姿勢。常識にとらわれず、自由に、そして自然に、なんだろう、なんでだろう、本当はどうなんだろう、という姿勢。簡単なようで一番難しいことです。それが彼の宗教観、文化観にもつながっています。思いっきり惹かれますし、憧れますね。
 さて、この本ですけれども、アインシュタイン本としては、近年なかった良書だと思いますよ。ワタクシのようなフツーのオトナにとって、難しすぎず易しすぎず。今までの本は、そこのところのさじ加減がうまくいっていなかった。著者の専門は、天文学であり、宇宙物理学であるようですが、さすが教育大学で教鞭をとっていおられるだけのことはある。実に教え方、いや語り方が上手です。
 章ごとのオープニングにあるマンガも軽妙ですし、話題に突如登場する、ガンダムやエヴァンゲリオンの挿話など、なんとなくこの方のキャラクターがしのばれて、思わずニヤッとさせられます。「おわりに」はもっとすごいことになってますよ。
 実際語られていることは、相対性理論に関する全く常識的なことであり、特に目新しいことは何もないのですが、アインシュタインの生きた言葉と、彼が発見した宇宙の公式たちを通じて、彼が残した我々人類への宿題を考え直す、というコンセプトは、なかなか功を奏していると思います。その宿題にアプローチすることは、先ほど述べた、彼の生き方、考え方に学ぶということになるのでしょうね。
 いろいろな意味で日本と因縁の深いアインシュタイン。彼が来日の際に残した数々の日本礼賛の言葉を読み返すたび、彼が愛した日本や日本人はどこに行ってしまったのだろう、と考えさせられます。そしてもちろん、広島・長崎という、結果として彼が日本に残してしまった「生涯における一つの重大な過ち」。本書に書かれていない意味においても、アインシュタインは多くの宿題をこの日本に残したと思います(例の予言についてはあえて触れません)。
 私にとって、今年の夏休みの宿題の一つはこれでしょうか。真剣に考えてみたいと思います。
 
Amazon アインシュタインの宿題

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