« 『網野善彦を継ぐ。』 中沢新一 赤坂憲雄 (講談社) | トップページ | 『アインシュタインの宿題』 福江純 (知恵の森文庫) »

2005.08.06

ムジカ・アンティクワ・ケルン 『テレマン フルート四重奏曲集』

Musica Antiqua Koln 『Telemann Flute Quartets』
UCCA-1049 4日、日本でもようやくiTunes Music Storeのサービスが開始されましたね。まだまだ品揃えは万全とは言えませんが、とにかく何かを買わねばと思うのが人情(なのか?)。最初に何を買うべきかいろいろと迷いました。最後の最後に、坂本冬美にしようかMAKにしようか迷ったあげく、結局MAKのテレマンにしました。最初は大好きなビーバーの「技巧的で楽しい合奏音楽」にしようかと思ったのですが、こちらは2枚組価格ということで、CDを買った方が安い。というわけで、だいぶ安上がりなテレマンの「フルート四重奏曲集」にしました。1500円です。音質もまあまあですしねえ、なんとも便利な世の中になりました。こちらのコメントで音楽のデジタル化を憂いていながら、結局恩恵にあずかってる自分がなんとも自分らしい。
 しかし、たぶんCD屋さんにこのCDが置いてあっても買わないだろうな。1500円でも。こういう無駄な消費を促すんですよ、コンビニエンスってのは。便利とは目的達成のための障害が少ないという意味だと思っていたら、違った。人間から迷ういとまを奪うものだった。それでも、たまには買って良かったと思う場合もあるでしょうし、セレンディピティーとの遭遇もあり得る。
 で、聴いてみました。結論。まあなかなか良かった…のですが、やっぱり買うほどのことはなかったかな。だいたい全部知ってる曲、というか、全部弾いたことのある曲でした。思えば古楽歴もそろそろ20年(都留音楽祭が今年20回目だもんな)、テレマンの室内楽もいったい何曲やったことやら。それこそ20年前には想像すらできない未来でした。
 もともとテレマンは大好きでした。高校時代なんかバロックの作曲家の中で一番好きだったのでは。何度も書いているように、私はELOからバロックに移った人間なので、ポップな作品をたくさん書くジェフ・リンとテレマンが頭の中で見事にリンクしていたのです。すごく深いわけではないけれども、分かりやすい上質なポップチューンを職人技でどんどん生産する。深刻なのがあんまり好きでない私には両者の音楽はピッタリだったわけです。その後両者に物足りなさを感じた(つまり背伸びして難しい音楽を聴いた)時期もありましたけれど、今の自然体の自分にとっては、やはり二人の音楽は生活に欠かせない存在です。
 テレマンの、というより録音文化やコンサート文化のなかったバロック時代の音楽は、一回性が重視されていました。聴く方はもちろん、演奏する方にも違う意味での一回性、つまり練習しないでいきなり本番的な一発性みたいなものを要求されていたんですよね。演奏者も楽しく、聴き手も楽しく、そして楽器も喜ぶ。そういった作りの曲を、テレマンはたくさん書きました。演奏者個人としては適度に簡単で適度に難しく、アンサンブルはしやすく、そして楽器の特性やクセを活かす。できあがった音楽はそれなりに聴きごたえがある。これを徹底的に実現したのが、テレマンでした。
 お友達のバッハはどうも反対の方向に突っ走っちゃったみたいですな。持って生まれた性格の違いということでしょうけれど、なんとも対照的な二人でした。でも仲よかったんですよね。不思議だ。バッハはそんなテレマンにちょっと憧れてたみたい。息子にフィリップって名前つけたりして。嫉妬はしてないような気がします。
 そんなテレマンの特性がよく表れたこの「フルート四重奏曲集」。フルートと言っても、リコーダーでもトラヴェルソでも、どっちでもいいわけで、実際この演奏でも両方使われています。MAKの演奏もいつも通り生き生きと楽しく、ライヴ感あふれるものでした。
 いちおうCDに焼いてみましたけれど、どうでしょうねえ、これから何回聴くでしょうか。もしかすると、弾く回数の方が多いかもしれません。まじで。iTMSの使い方気をつけないと。自宅に音楽の自動販売機があるようなもんだからなあ。

不二草紙に戻る

|

« 『網野善彦を継ぐ。』 中沢新一 赤坂憲雄 (講談社) | トップページ | 『アインシュタインの宿題』 福江純 (知恵の森文庫) »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ムジカ・アンティクワ・ケルン 『テレマン フルート四重奏曲集』:

» iTMS(アップル音楽配信サービス)が日本でオープン! [GIZAファンのためのページ。]
6月7日の記事「iTMS(アップル音楽配信サービス)が日本で8月にオープン!」にて書きましたが、iTuneによる音楽配信サービスがとうとう、日本でも開始されました。 (オリコンさんも何故か4日から「MUSIC DOWNLOAD」における一部配信曲の販売価格を値下げしています。(...... [続きを読む]

受信: 2005.08.06 22:55

» 押し寄せた波(iTunes Music Store)はかなりデカい! [原型製作記]
昨日、、iTunes Music Storeが日本で開始されましたが、このビッグ [続きを読む]

受信: 2005.08.11 03:17

» テレマン作曲、四重奏曲第5番 [yurikamomeの日記と無手勝流思いこみ音楽ブログ]
 台風一過の抜けるような青空、お約束の猛暑。  写真は今朝早朝7時過ぎの片瀬山龍口寺の仏舎利殿とそこからの景色。でも風と空はもう秋の気配がしている。  今日は鎌倉腰越A邸~大桟橋~横浜病院。お仕事に関しては、醜いことが多く、残念ながら今日も語るべきことがございません。  今日は、テレマン作曲、四重奏曲第5番。有田正広とトウキョウ・バロック・トリオ。 バロック・アンサンブルの傑作。コスモスやマリーゴールド、ダリアのお花畑。池や噴水もあったりして、そよ風に吹かれてお昼寝タイムです。 バッハやヘ... [続きを読む]

受信: 2005.09.08 15:57

« 『網野善彦を継ぐ。』 中沢新一 赤坂憲雄 (講談社) | トップページ | 『アインシュタインの宿題』 福江純 (知恵の森文庫) »