ムジカ・アンティクワ・ケルン 『テレマン フルート四重奏曲集』
Musica Antiqua Koln 『Telemann Flute Quartets』
4日、日本でもようやくiTunes Music Storeのサービスが開始されましたね。まだまだ品揃えは万全とは言えませんが、とにかく何かを買わねばと思うのが人情(なのか?)。最初に何を買うべきかいろいろと迷いました。最後の最後に、坂本冬美にしようかMAKにしようか迷ったあげく、結局MAKのテレマンにしました。最初は大好きなビーバーの「技巧的で楽しい合奏音楽」にしようかと思ったのですが、こちらは2枚組価格ということで、CDを買った方が安い。というわけで、だいぶ安上がりなテレマンの「フルート四重奏曲集」にしました。1500円です。音質もまあまあですしねえ、なんとも便利な世の中になりました。こちらのコメントで音楽のデジタル化を憂いていながら、結局恩恵にあずかってる自分がなんとも自分らしい。
しかし、たぶんCD屋さんにこのCDが置いてあっても買わないだろうな。1500円でも。こういう無駄な消費を促すんですよ、コンビニエンスってのは。便利とは目的達成のための障害が少ないという意味だと思っていたら、違った。人間から迷ういとまを奪うものだった。それでも、たまには買って良かったと思う場合もあるでしょうし、セレンディピティーとの遭遇もあり得る。
で、聴いてみました。結論。まあなかなか良かった…のですが、やっぱり買うほどのことはなかったかな。だいたい全部知ってる曲、というか、全部弾いたことのある曲でした。思えば古楽歴もそろそろ20年(都留音楽祭が今年20回目だもんな)、テレマンの室内楽もいったい何曲やったことやら。それこそ20年前には想像すらできない未来でした。
もともとテレマンは大好きでした。高校時代なんかバロックの作曲家の中で一番好きだったのでは。何度も書いているように、私はELOからバロックに移った人間なので、ポップな作品をたくさん書くジェフ・リンとテレマンが頭の中で見事にリンクしていたのです。すごく深いわけではないけれども、分かりやすい上質なポップチューンを職人技でどんどん生産する。深刻なのがあんまり好きでない私には両者の音楽はピッタリだったわけです。その後両者に物足りなさを感じた(つまり背伸びして難しい音楽を聴いた)時期もありましたけれど、今の自然体の自分にとっては、やはり二人の音楽は生活に欠かせない存在です。
テレマンの、というより録音文化やコンサート文化のなかったバロック時代の音楽は、一回性が重視されていました。聴く方はもちろん、演奏する方にも違う意味での一回性、つまり練習しないでいきなり本番的な一発性みたいなものを要求されていたんですよね。演奏者も楽しく、聴き手も楽しく、そして楽器も喜ぶ。そういった作りの曲を、テレマンはたくさん書きました。演奏者個人としては適度に簡単で適度に難しく、アンサンブルはしやすく、そして楽器の特性やクセを活かす。できあがった音楽はそれなりに聴きごたえがある。これを徹底的に実現したのが、テレマンでした。
お友達のバッハはどうも反対の方向に突っ走っちゃったみたいですな。持って生まれた性格の違いということでしょうけれど、なんとも対照的な二人でした。でも仲よかったんですよね。不思議だ。バッハはそんなテレマンにちょっと憧れてたみたい。息子にフィリップって名前つけたりして。嫉妬はしてないような気がします。
そんなテレマンの特性がよく表れたこの「フルート四重奏曲集」。フルートと言っても、リコーダーでもトラヴェルソでも、どっちでもいいわけで、実際この演奏でも両方使われています。MAKの演奏もいつも通り生き生きと楽しく、ライヴ感あふれるものでした。
いちおうCDに焼いてみましたけれど、どうでしょうねえ、これから何回聴くでしょうか。もしかすると、弾く回数の方が多いかもしれません。まじで。iTMSの使い方気をつけないと。自宅に音楽の自動販売機があるようなもんだからなあ。
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