『三びきのこぶた』 イギリス昔話 (福音館書店)
今日は富士河口湖町の図書館で読み聞かせがありまして、私は急きょ効果音などの担当になり、チェロをかついで行ってまいりました。
いろいろと内容盛りだくさんだったのですが、メインは人形劇「三びきのこぶた」。子供たちはけっこう舞台に引きつけられておりました。
もちろん、私もこの話、小さい時によく聞いたり、読んだりしてました。でも、ディテイルとなると、ちょっと自信がなくなっていたんですよね。そんなわけですので、今日は適当に演奏しながら、内容を復習してみようと思っていたのです。
それがですねえ、どうもしっくり来なかったんですよ。なんか、自分のイメージと違う。あれ?こんなに軽いお話だったかなあ、という感じ。
今回は乳幼児が対象ですから、当然ソフトにしているんでしょうね。それはわかります。ん?でもなあ。
今回の人形劇では、三びきのこぶたちゃんは最後までみんな健在でした。おおかみ氏も最後はお尻に火がついて火傷など負われたようですが、ご存命のようでした。こんなにノホホンとしてたかなあ?
というわけで、早速調べてみました。私が読んだ(聞かされた)のは1967年発行の福音館書店版のようです。ちょうど発行された頃に読んでもらっていたみたい。
これによると、まず、こぶたちゃんたちが家を建てることになった理由がリアル。母親が貧困のため、子供たちを捨てざるを得なかった。母子家庭だったんですね。三人の兄弟を育てるのは無理だった、と。
で、こぶた1とこぶた2は家を吹き飛ばされた末、おおかみ氏に食べられちゃうんですね。こぶた3は悪知恵を働かせて危機を切り抜け、最後には一発逆転でなんとおおかみ氏を鍋でぐつぐつ煮て食べちゃう…。
本当の意味での弱肉強食の世界です。特に寓話として考えると、人間世界では腕力だけではなく、また単なる知恵だけでもなく、結局は悪知恵に優れたヤツが生き残る、ということを象徴しているようで面白い。
ところで、藁の家と木の家がダメで、レンガの家が最も優れている、というのは、実にヨーロッパ的な価値観ですな。私も小さい時、そう覚え込んでました。木の家よりコンクリートの家の方が優れていると。言うまでもなく、日本では通用しないですね。日本版三びきのこぶたでも書いてみようかな。
あ、そうそう、「おおかみ鍋」の雰囲気、太宰も紹介していた甲州に伝わる「カチカチ山」の「ババ汁」に近くて好きですね。こっちもいまやカットされてますけど。
Amazon 三びきのこぶた
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コメント
こんばんわ。気の抜けた童話は関心しませんねえ。
ところで、TBが二重になってしまいました。ご迷惑おかけしてすみません。お手空きのときに一本消しておいていただけますか。
ではでは。
投稿: かわうそ亭 | 2005.08.24 22:57
以前「ちびくろサンボ」という名作がありましたが差別用語とか内容がよろしくないということで廃盤になっていました。そしたらどこかの教育学者が「ちびくろさんぽ」という黒い犬が主人公の作品にしたてて出版していました。図書館でみつけて読んでみたのですが病的で気持ちがわるくっていただけなかったです。「ちびくろサンボ」の復刻版がでるようになったので子供のために買って読んですっきりしました。
子供の教育のためによくないからとかいって御伽噺とか童話とかを病的に軟弱なものにするのはかえって逆効果のような気がします。
御伽噺は面白いのでたまに読みますがシャルル・ペローの「赤ずきんちゃん」では、最後の場面で赤ずきんちゃんはおおかみに食べられてしまいますが、なぜかいっしょに寝るために裸になってベッドにはいろうとします。17世紀ナポリの文人ジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ』は奇想天外な内容でバロック的な表現がたくさんでてきていちばんすきです。岩波文庫の金田鬼一訳のグリム童話は傑作で、すばらしい日本語でおかしくって多分原文よりも優れているとおもいます。
投稿: 龍川順 | 2005.08.25 00:06
かわうそ亭ご主人様、龍川さん、どうもです。
そうなんですよね。差別だとか、残酷だとか、かわいそう、とか言うことによって、そういう視点を作りだしてしまうってこと、よくあるんですよね。
実に野暮なことです。隠せば隠すほど顕れる。
童話とかおとぎ話って、やっぱり「なまはげ」みたいな効果があったと思うんですよ。それをねえ…、近代人はおバカですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.08.25 07:59