『東大オタク学講座』 岡田斗司夫 (講談社)
オタキング岡田斗司夫センセイが東京大学で行なった講座の講義録です。知る人ぞ知る基本文献の一つですね。
発行された1997年ごろですかね、一度読んでるんですけど、当時の私は「オタク学」にほとんど興味がなく、また、書かれている内容についても、偽史の部分以外、ほとんどチンプンカンプンでして、全くと言っていいほど印象に残っていませんでした。しかし、今日久々に読んでみると、まあなんと面白いことか。話の内容はまあ今でも半分くらいしかわかりませんが、やはり文化論として首肯される部分が多い。それだけ、私のオタク化が進んだということですかね。
とりあげられているのは、ゲーム、アニメ、マンガ、疑似科学、超科学、超能力、現代アート、やおい、ミリタリー、変態性愛、ゴミあさり、などなど。そして、それぞれの回のゲストの濃いこと、濃いこと。こりゃ途中退席の学生も出るわ。
昨日の「宇宙意識」もある意味サブカル臭がしますけれど、やはり日本人のトンデモレベルとは比較になりませんね。それでも、無理やりくっつけて考えてみましょうか。
え〜、岡田センセイは、冒頭でファンとマニアとオタクの違いを述べておられます。ファンとは対象が好きでたまらない状態、マニアはその愛情が一度裏返って愛するための手段=収集や研究という客観的なスタイルへ走ってしまった形、そしてオタクはそれらに加えて対象と自分との関係を振り返ることができる、高度な知性でもって対象が自分にとってどういうものなのかを考えて再配列できる人々のことを言うのだそうです。
なんとなく、納得できるような、いや実態とはちと違うような…。もう10年近く前のことですしね。たとえば、「萌え」という言葉は出てきませんし。まあ、それはいいとして、この三者の分類ですけれども、「宇宙意識」のあれに似ていませんか。そう、こういうことです。
ファン=単純意識
マニア=自己意識
オタク=宇宙意識
…なんて思いつきで書いてみたら、とんでもないことになったな。いかんいかん。ただ、どうでしょう、多少納得行く面もないですか。ファン的な感情は動物にもありそうです。マニア的な感情と行動は、たしかにある程度の成長を必要としますね。対象への複雑なアプローチは自己同一性獲得(ある意味他との差別化)の願望とリンクしているような気もします。しかし、あくまで自己完結して広範な社会性は得られ難い。そして…。
え〜?やっぱり真のオタクは世界を救う!ってことかな。たしかに全ての対象と自分の関係を考え尽くせば、ブッダになれるかもしれない。と言うことは、結局「真の」というところが難しいわけです。それでもマニアを突き抜けつつある真性オタク予備軍みたいな人々は増加しているらしい。これはやっぱりバックの言う進化の過程なのでしょうか。う〜む、なんか違うような気もしないでもない(笑)。「萌え」=「をかし(女性ファン的感情)」だという私の最近の説に従えば、退化しているとも言えますよね。うぅ、わからん。
てな感じで、進学合宿中なのに、受験勉強にいそしむ生徒そっちのけでわけわからんことずっと考えてしまった。いかん。まあ、東大の講義内容だし、高度な知性を要するらしいし、世界平和につながることらしいので、よしとしますか。なんてまた自己意識が肥大した。
さて、芸術学部と医学部の小論文指導しなくちゃ。すっかり頭ん中があっちの世界に行っちゃってるよ〜。
Amazon 東大オタク学講座
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