『頭がいい人、悪い人の話し方』 樋口裕一 (PHP新書)
最近、職場で「ベストセラーをぶったぎる」のがはやっております。つまりは、現今の出版業界のあり方、およびそれに躍らされる読者を憂えるわけです。この前読んだ齋藤孝の「段取り力」はひどすぎました。いやはや段取りが悪すぎる内容で思わず失笑。編集者が集めてきた他書の引用ばかりでサイテーな本でした。高校の先輩とは言え、やはり糾弾しときます。あれを売っちゃいかん。
で、こちらのベストセラーも面白かったですよ。つっこみどころ満載。
なんででしょうねえ。こちらにも書きましたけど、看板に偽りがある本が多いんですね。これは詐欺罪とかにならないんでしょうか。この本もタイトルに反して、「頭のいい人の話し方」が一つも出てこない。つまり、タイトルとしては「頭の悪い人の話し方」だったら許せる。まあ「頭の悪い」なんて差別用語をタイトルに使っちゃいけません。「バカの…」も同様。だいたい、本文の中で「差別は絶対にいけない!」みたいなこと力説してるじゃないですかあ。
あと、最初のうち妙に気持ち悪いなあと思ったのは文章です。だって、各章全てが小論文なんだもん。それも樋口流全開。「もちろん…だが」とか「たしかに…しかし」とか、いわゆる「とりあえず譲歩」ですね。あと、「論理的」のつもりなんでしょうけど、実に潤いに欠ける表現、型にはまった展開に小学生レベルの接続詞たち。なんでも連発したら、それこそ頭が悪い。読む人に不快感を与えます。
ところがですねえ、いやいやながら読み進めるうちに、なんか笑えてきたんですよ。そう、内容的には結構スパイスの効いた毒舌なんですが、それを、あの能面みたいな小論文調で書いているわけでして、その対比がだんだん面白くなってくる。妙なミスマッチを40も読まされるわけですから。もしかして最高のギャグ?そうだとしたら、筆者の筆力はやはり神様級でありまする。
ギャグということでは、章ごとに挿入されている、しりあがり寿さんのイラスト。これがまたいい味出してますね。樋口さんの小論文をあざわらうかのような見事な作品たち。ギャグ化を助長して、樋口さんを救っています。しりあがりさんも高校の先輩なんですけど、こちらの先輩はいい仕事してます。
ところで、文は人なりと申しますが、文の中でも、最もその人の人柄を表すのは話された文であります。つまり、話し方は人柄そのものであるということです。だから、この本のタイトルは「頭のいい人、悪い人の人柄」…いや、内容的にはずばり「頭の悪い人の人柄」とした方がいいですね。そうすると、詐欺罪にも問われない。
で、なんとなくひらめいたんですけど、この本て、とっても有用だと思うんですよ。こんなふうに。
あなたにとって、いやなヤツにこの本を貸すんですよ。「この本なかなか面白かったですよ」とか言って。上司にも「面白い」本だったら貸せますよね。そうして、この本に代弁してもらうんですよ。で、間接的に気づいてもらうってのはどうでしょう。これは効果を期待できますよ。
はっきり言って、40のバカの話し方の中に、必ず自分にあてはまるものがあります。だってそういうふうに書かれているんだもん。自分の主張してもダメ、人に迎合してもダメ…なんて調子で。誰でも、あっこれ自分だ、って思う章があるでしょう。樋口さんも自分がモデルになっている部分もあるとカミングアウトしています。
な〜んて、私もずいぶんと頭の悪い文章を書き連ねてますな。頭も悪いし性格も悪い。文は人なり…かあ。
ん?ちょっと待てよ。そう言えば、この本、職場の後輩が私に貸してくれたんだ…ということは…。
Amazon 頭がいい人、悪い人の話し方
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