『北羽南朝の残照』 大坂高昭 (無明舎)&『近世に於ける妙心寺教団と大悲寺』 笹尾哲雄 (文芸社)
今回の秋田訪問は、いろいろと勉強になることが多くありまして、ワタクシといたしましては、かなり貴重な体験となりました。それにつきましては、昨日までいろいろと書いてまいりましたが、ある意味、今回の最大の収穫はこの2冊の本を手に入れることができたことかもしれません。
ほとんどの方には全く関係がなく、また興味を持つこともないジャンルでありましょう。ところが私はこの2冊を、『電車男』以来の集中力をもって読破してしまいました。いやあ、面白かった。
いえいえ、とにかくある意味超マニアックな内容ですから、多くは語りません。ご安心下さい。
『北羽…』の方は、つまり南朝の皇族や武将が秋田方面に逃れてきた形跡を追ったものです。私が住む富士北麓も南朝色の極めて強い地方であり、いわば関東の陸奥的な土地柄です。縄文色、アイヌ色も強いですし。山窩色も。実際、秋田とこのあたりでは、長慶天皇やら藤原藤房やら、共通した人物の伝説が確認できます。そのあたりの興味も尽きないところですし、また、秋田のカミさんの実家付近の習俗や字名などにも、流浪する皇族の匂いがするものですから、私にとってはたまらない内容なのです。実際とても面白かったし、ためになりました。
『近世…』の方は、禅宗の一つ臨済宗の中でも、最大の集団である「妙心寺派」というものが、どのように全国チェーンを図り、それを実現したかを考察した、実に興味深い論文です。今、奉職している学校の母体である月江寺というお寺さんも、以前は向嶽寺派であったのが、まさに近世に妙心寺派になっています。その辺の話はこちらにちょこっと書きました。一般の皆さんにはどうでもいいことでしょうけれども、先ほども出た当地の南朝の問題を考える時に、どうしても避けられない部分なのです。
自分でも、なんでこんなことに興味を持つのか分かりません。たぶん、私の気質だと思いますよ。判官贔屓なんですよ。負けたり、消えたり、いじめられたりするものの肩を持ちたくなる。だってそうじゃないですか。アステルとかWINJとか。マイナーな車に乗ったり。Mac使ってるのもどちらかというとねえ。少数派に属していたいんですよね。古楽もそうかな。
まあそんなことはどうでもいいとして、一つ述べておきたいことがあります。この2冊の本の著者は両方とも秋田のお坊さんです。『北羽…』の方は曹洞宗、『近世…』の方は臨済宗の僧侶であります。お二人とも本当に勉強熱心で感服します。秋田って、歴史的に見ると華々しい偉人さんはいないんですが、地道な勉強家さんは多いんですよね。そういう落ち着いた土地柄だと思います。また、冬場は雪に閉じこめられますから、勉強するには最高でしょう。一方、勉強のしすぎなのか、自殺率も異様に高いんですけどね。
というわけで、次回秋田に訪問した際には、両寺を直接訪ねて色々とお話をうかがいたいと思います。
Amazon 近世に於ける妙心寺教団と大悲寺
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コメント
縁があって、分家である我が家は妙心寺派のお寺にお墓を建てさせていただくことになり、父はそこに眠っております。静岡県には妙心寺派のお寺がとても多いですね。山梨県も禅宗が多い。大月に道場を開いた大森曹玄老師のところで一度座禅を組ませていただいたことがあります。
しかし、接点が多いですね。過去の貴ブログを読ませていただくたびに、そう実感いたします。
投稿: 貧乏伯爵 | 2006.12.29 20:57
本当に不思議な御縁ですね。
ネットのすごさでもありますね。
リアルではここまでの話はできませんよ。
こういうご縁を大切にしていきたいと思います。
大森老師と言えば、山梨が生んだ格別な方です。
武道の面でも興味津々ですね。
というわけで、なんかやりましょう!
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.12.29 23:56