『現代ジャズの潮流』 副島輝人 (丸善ブックス)
先日おススメしたキリスト教は邪教です!で解説を書いていた東大教授の松原隆一郎さん。彼は格闘技ファンとしても有名ですし、また、フリージャズ大好き人間としても有名です。たしかにフリージャズは格闘技という気もする。ちなみに松原センセイのご専門は社会経済学…かな?
そのセンセイのススメがあって書かれたというこの本。かなりまじめな論文チックな内容です。なんだかカミさんが間違えて買ってきたらしく、家にありました。で、もったいないから読んでみたわけです。
現代ジャズとはモダンジャズではありません。ポストモダンジャズのことです。つまり、60年代モダンジャズが一つの極みに達した後のジャズ。おかしな話ではありますが、モダンジャズはもうすでにクラシックになっています。実験を許す(尊ぶ)ジャズというジャンルにおいて、多数の天才・巨人たちがあらゆる可能性を模索し、実際にその成果を挙げてしまったその後に、では何が来たのか。
それは、やはり一度できあがったものを解体する作業でした。たとえばフリー・インプロヴィゼーションという形。それは結局、クラシックに対する現代音楽の流れに沿うものでした。クラシックはその流れを生むまでに1000年以上かかりましたが、ジャズはほんの数十年にしてそういった潮流を生んだわけです。それだけ、モダンジャズの歴史は急流であり、しかも滔々としたものだったということでしょうか。
さて、この本では、そんなポストモダンジャズの流れを考察しているわけですが、この本が書かれたのは1994年。つまりその当時の「現代」であるということですね。で、その「現代」の状況はどんな具合かといいますと、これが正直たよりない流れです。あっちでチョロチョロ、こっちでチョロチョロとでも言いましょうか。
筆者は本当に世界中のジャズを聴いて回っているようです。「現代」の特徴として、脱アメリカというのがあります。まあ、モダンジャズ=アメリカですから当然と言えば当然ですが。で、リポートされている、ロシア、東欧、韓国、日本などの「現代」の状況がどうかというと、つまりチョロチョロなんですね。その後10年経っても、そちらの流れは正直あまり変化なしのようです。結局、今私たちがジャズとして耳にするのは、モダンジャズの形式に則ったものか、あるいはそれとロックなどの他のクラシカルな(!)ジャンルとの融合を試みたものだけなんですね。
そんな中で興味深かったのは、やはりhip-hopの流れでしょうか。ラップというライム・トーキングと、スクラッチというまさにモダンジャズを支えたレコード文化へのアイロニカルなアプローチ。それが結局、アメリカの、最もアメリカ的であり最もアメリカ的でないニューヨークの、それも大衆文化から生まれたというのは、それこそアイロニカルなことでした。そして、実際2005年の「現代」においても、hip-hopは生き生きとしている。なるほどなあ、と思いました。
どうも最近は、日本のヒップホップを耳にすることが多いので、ちょっと自分の中で誤解が生じているようです。もう一度、本場のhip-hopを聴いてみようかな。もう10年以上前になるのでしょうか。山中湖のMt.FujiジャズフェスティバルでのUS3の衝撃。あれを思い出しました。
追伸 プロレスラーの橋本真也選手が急逝されました。彼はいわばモダンジャズの王道を守ったレスラーでした。最近のガチンコ(風)なフリージャズ、いや総合格闘技の流れを、どんな思いで見ていたのでしょうか。それにしても早すぎた…ご冥福をお祈りします。
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