『世界の中の日本絵画』 平山郁夫・高階秀爾 (美術年鑑社)
最近、生徒と「絵」のお勉強をしております。そっち関係の大学に行きたいということで、あらためて「絵とは何か」というところから考え直しております。
テーマは「輪郭線」。本来存在しない輪郭線が絵にとってどういう意味を持つのか。ネタばらしはできませんが、ちょっと記号論的解釈を試みています。今まであんまり深く考えたことがなかったので、非常にエキサイティング。生徒のおかげです。いい仕事ですね。
みなさんもご存知と思われますが、原初的な絵は「輪郭線」です。「輪郭線」そのものが絵です。子どもの絵を考えればわかりますね。西洋や中国では、その輪郭線のウソに気づいて、そのウソとホントのはざまで、画家たちは大いに苦しみました。ダ・ヴィンチなんかも言わなきゃいいのに、「輪郭線なんてもんはホントはないぜ!」なんて言って「モナリザ」を描いちゃった。その後も印象派の誰かさんとかも、無理やり線を排除したりした。
じゃあ日本ではどうだったかと言うと、結局原初のまま何千年、何万年もやってきてしまった。ずっと子どもだったわけです。いや、野暮なことを言いださなかったのは大人だからかな?まあ、とにかく輪郭線のない絵なんて、土俵のない相撲みたいなもんで(すんません、今テレビでやってるので)見てても全然面白くねえや、てな具合で今まで来た。今まで来ちゃったどころか、マンガやアニメの隆盛までも産んでしまったわけですね。
そんな、日本絵画といわゆるフツウの絵(西洋絵画)を実際に並べて比較し、その表現法の違いを際立たせ、あるいは共通点を見出し、結果として日本絵画が世界的に見ていかに優れたシロモノであるかを、非常に強い口調で訴えているのが、この本です。学校の図書室にあったので見てみたのですが、なかなか面白かった。平山さんと高階さんの対談もまあまあ面白い。ものすごく新しい内容はありませんが。
なんといっても、この本は、その日本画と洋画のペアリングがすごい。いちおうテーマ的、内容的に似た者どうしを並べています。よく探したなあ、と感心するくらい面白い。いや、面白いんですよ。笑っちゃう。あんまりまじめにこういうペアリングをすると、なぜか逆に笑えちゃう。なんていうかなあ、同じ舞台で能とバレエを一緒にやるとか、弓道のとなりでアーチェリーやるとか、そんな感じかな。だって、「麗子像」と「モナリザ」を並べちゃまずいでしょ。勝負は見えてる。どう考えても麗子さんの方がインパクトがある。
てな具合で、大量のミスマッチが展示され、非常に学術的にまじめに解説されています。これは勉強になる上に、大いに笑えます。さすが平山さんと高階さんだなあ。
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