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2005.07.05

『危ない大学 消える大学 '06』 島野清志 (エール出版)

4753924238 これは逆説的におススメですわ。これはひどい本です。危ない本です。消えるかどうかはわかりませんが、消えてもいい本でしょう。私学人の一人として、これは糾弾しておかねばなるまい。
 結局、筆者が言いたいのは、偏差値の高い大学へ行け、ということ。それは日頃、私も口にする言葉ですし、それが可能な人たちにとっては意味のあることでしょう。しかし、予備校発表の偏差値が低い大学が、則ち危ない大学であり、消える大学(つまりダメな大学)であるという理由はほとんどありません。統計的にはある程度の関係性は認められるでしょう。しかし、そういった統計だけで片づけられないのが教育です。
 なんか、まじめに論陣張ってしまいそうなので、少しクールダウンしましょう。とにかく、学校と会社をいっしょくたにしてしまってはいけないのです。筆者のような視点も確かにあると思いますし、それと同じ視点で大学を選び、大学に行く人々にとっては価値のある本かもしれません。また、筆者が暴くような杜撰きわまりない経営をしている大学もあるにはあるでしょう。でも、でもそれらとそれ以外のフツウの学校とを十把一絡げにしてほしくない。もし、絡げられるのなら、とっくに学校なんか経済原理に呑み込まれて、学校じゃなくなってますよ。
 私がここまで言うのには、実は理由があります。この本の頭の方に、筆者の質問状に対するF大学のT学長さんの回答文書が掲載されています。実は、この学長さんとは個人的に何度がお話させていただいたことがあり、学長さんのお考えやお人柄など、それなりに分かっているつもりでおります。ですから、学長さんの書かれたことを読んで、これは決してウソではなく、ほとんど事実であると実感しました。その内容は、教育に対して常識を持っている方なら、実にまっとうなものであると感じるものです。そういう意味で、自信があったからこそ、公開前提に回答をなさったに違いありません。もちろん、筆者はその回答に対して、「とても承服し難い」「抽象的である」「大学はより良い就職先や資格取得のための機関になっている現実を理解していない」と決めつける。ほとんどヤクザですな。はたして、学長さんのお人柄が分かるまで直接話し合ったことがあるのでしょうか。全ての大学に足を運んだのでしょうか。もしもFAXや書簡で取材をすませていたとしたら…ライター失格です。
 教育はもともと抽象的なものです。具体的にどこそこの企業に合格させます、なんていう理念の方がずっとうさんくさい。たまたま知り合いが攻撃されているから感情的になっているということもありますけど、教育の根幹を見誤った筆者の言には「とても承服し難い」。
 しかし!さてさて、このワタクシは自他共に認めるトンデモ本愛好家。トンデモにも五分の魂。私はそのトンデモ魂に意味を見出します。ハナっからダメだしはしたくない。というわけで、この本は買いです!(なんなんだ?)読者自身の教育観、ひいては人生観を測るのには逆説的な意味で最適なテキストです。また、怒りや呆れを超えて楽しんじゃえるか。楽しめればトンデモ愛好家の仲間入りです。まあ世の中、必要悪っていうのもありますからね。極端な話が世の中を正しい方向へ動かすということも多々ありますし。
 普段はそういったトンデモ的な世界が大好きな私ですが、矛先が自分の専門分野に及ぶとつい感情的になってしまう。それじゃあ先方と同レベルか。そんな自分に気付くこともできましたし、自分の教育観というものの再確認もできました。また、私学における経営の問題についても考えるきっかけを与えて下さりました。結局筆者に感謝しなくてはなりませんな。筆者はデーヴァダッタを演じているのかもしれません。定方さんと同じように。深い慈悲心をもって。そうだとしたら頑張ってください。フリーライターって大変ですね。喰ってくためではないんですよね。世の中を変えるためなんでしょ。皆さんもぜひ下のリンクから買ってあげて下さい。他のシリーズもぜひ。

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コメント

これはひどいコメントですわ。まさに程度の低い3流高校教師がスペースシャトルにツバ吹きかけてる程度の攻撃っぷり。こんなものを堂々と公開出来るとは御見それしました。
是非これからも楽しい楽しいおススメを疲労して下さい。

投稿: あ | 2006.02.24 20:00

ナイスなコメントありがとうございます。
まあそのとおりですわ。
頑張って疲労しますね。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.02.24 20:10

ほんとに島野っておめでたい奴ですねw

投稿: 危ない島野 | 2006.03.12 01:24

私立大学は三校だったか四校だったか潰れましたね。そういう学校の関係者の方たちはこのページを見たとき。この記事の筆者様に同調され、この本と著者様の考えにはっきりと否定できるでしょうか・・・?少なくとも私のような一学生の目から見たとき、あまり認めたくありませんがこの本は正しいかと思います。というのも確かに偏差値礼賛というと聞こえは悪いですが、難関大学に入った→それだけ努力したということで企業からの評価は実際高いのです。島野氏はおめでたいでしょうか?私はまったく「w」という気分にはなりませんけどね・・・。

投稿: ぷー | 2006.04.04 18:01

ぷーさん、コメントありがとうございます。
ぷーさんのおっしゃることもよ〜くわかります。
ものごとは見る立場によっていろいろな見え方があるということです。
弱小私学で命がけで仕事をしている私の立場と、島野さんの立場では見えている世界が違うのは当然ですよね。
それでいいと思いますし。
私も島野さんも、教育について真剣に考えているんでしょうし、自分にかかわった高校生たちが幸せになってほしいという思いは、おそらく一緒ですから。
ただ、その熱が高すぎるのか、お互い大人げない物言いになっているんだと思いますよ(笑)。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.04.05 07:30

本当にビックリしました。私と同じ福岡の大学がつぶれるなんて!私学から鞍替えしてたので命拾いをしました。情報って大事ですね。これからは大学も危機管理の時代ですね。

投稿: 丁字路 | 2006.12.12 03:36

丁字路さん、コメントありがとうございます。
とうとうそういう時代が来たということですね。
私も他人事ではありません。
情報と危機管理、たしかにそうだと思います。
それは当然ですが、やっぱりこの本の物言いはなあ…。
来年度版ももうすぐ出ますね。
いろんな意味で楽しみです。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2006.12.12 06:48

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