ボブ・ファン・アスペレン チェンバロ・リサイタル(NHKBS2)
先月ハイビジョンで放送されたのですが、録画をミスって鑑賞できなかった番組です。BS2で再放送されたので、今度は確実に録画。ようやく観る(聴く)ことができました。
アスペレンは今やチェンバロ界の重鎮。今までソロでの来日はなかったのでは。本当は生で聴きたかった。特に、今春の来日では、私もゆかりが深い「山梨古楽コンクール」のマスターコースの講師として、これも因縁深い(14年ほど古楽科に通いました)「聖グレゴリオの家」で公開レッスンをするということで、なんとか聴講だけでもしたいと思っていました。しかし、平日ではやはり無理。涙をのんで断念したわけです。
それが、こうしてNHKさんのおかげで聴く(観る)ことができる。ありがたい限りです。そして、3ヶ月待って目の前に現れたアスペレンさん、その演奏は、それはそれは素晴らしいものでした。
実は少し前にFMでほんの少しだけ聴いたのです。車の中でラジオをつけたところ、聞き慣れた響きが。でも、それが何の曲か一瞬分からなかった。知りすぎるほど知っているはずなのに。それが、アスペレンさんの編曲によるバッハの無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番よりシャコンヌだったのです。あっ、と思ったらもう最後の16小節くらい。うわ〜、全部聴きたい!チラリズム(失礼)が、私の欲求をかきたてる!
そんなわけで、スウェーリンクやフレスコバルディも実に美しかったし、フランス組曲も華麗でしたが、なんといっても、そのシャコンヌの素晴らしさたるや、本当に筆舌に尽くし難い!
まず、編曲が見事です。前日にも放送された「復元結婚カンタータ」でも、バッハもの?の編曲の難しさを感じましたし、シャコンヌに関して言えば、ブゾーニはもちろん、レオンハルトでも納得いかなかった(曽根麻矢子さんのはまだ聴いてません)。それが、このアスペレンさんの編曲は、まさにバッハならこう弾いただろう(実際一度は弾いていると思う)と思わせる、非常に自然なものでした。本当に、知識、経験、才能、愛情の全てが揃わないとこうはいきませんよ。感動してしまいました。
その演奏も完璧。舞曲としてのリズム感を感じさせる部分と、ほとんど抽象絵画を感じさせるような部分のコントラスト。自由だが有機的なテンポの揺らぎ。効果的なアーティキュレーションと装飾。熱狂と瞑想の絶妙なバランス。オリジナル曲をヴァイオリンで弾いた演奏では、奏者が楽曲(バッハというより曲自体)に負けてしまうことがほとんど。しかし、アスペレンは全く互角!互角というか、完全なコラボレーション。まいりました。完璧な「縁」の創造。私も含めてヴァイオリニストはもっとしっかりしなくちゃ!
本当は、ここにMP3でも置いて、みなさんに聴いていただきたいのですが、著作権のこともありますしね。下にあるCDでお聴き下さい。でもライヴは特別ですよ。生で聴かれた方々に嫉妬します。
あとは、結局「シャコンヌ」のすごさの再確認ですね。これだけ深遠な曲を、あまりに制約の多い条件で創ってしまったバッハって、やっぱり人間ではありませんね。妻マリア・バルバラの追悼のために作曲されたという新説にも、自然とうなずかれます。人間の命(ブッダによれば、つまりそれは宇宙全体とつり合う存在なわけですけれど)の崇高さ、複雑さ、美しさ、もろもろのものを表現しているように感じられますね。そんな音楽を身近に感じることができることに感謝したいと思います。ちょっと弾いてみよう、という気はしませんけれど。
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