『ザ・ワン』 マイケル・ジャクソン (DVD)
『The One』 Michael Jackson
今年になってからも何かとお騒がせなマイケル。しかし天才であることには変わりありません。お騒がせこそ天才の証。
さて、そんなマイケルの新しいDVDが発売になったということで、職場のマイケル信者の先生から借り受けました。私は彼女ほどではありませんが、マイケルを高く評価している一人だと自認しています。ウチのカミさんも結構好きですね。カミさんは私とは10年ほど世代の違いがありまして、たとえば音楽の趣味などもかなり違います。しかし、唯一共通した愛聴盤がありまして、それがマイケル・ジャクソンの「オフ・ザ・ウォール」です。
私にとっては、その「オフ・ザ・ウォール」が始まりでそして終わり、つまり私にとってのマイケルはそこに全て入っているわけでして、実はMTV以降のマイケルについてはあまり興味を持たずに来たのです。まあ、好きではなかったというより、自分が他の音楽やら何やらにかまけていたということでしょう。
「オフ・ザ・ウォール」はホント今聴いても全く古くない、どころか常に新しい。とんでもない名作です。クインシー・ジョーンズのプロデュース力による部分が大きいとは言え、音楽の世界の色を完全に塗り替えてしまうパワーは、やはりマイケル自身に宿っていたということだと思います。
さて、そんなわけで、久々にマイケルの優れた業績のダイジェストを見てみました。そうですね、見るということを音楽に持ち込んだ、いや取り戻したというのが彼の業績の一つでしょう。私はMTVの音楽界にもたらしたマイナスの効果ばかり感じてきましたけれども、こうしてあらためてその端緒となったマイケルのパフォーマンスを見ると、彼のそれは全く許される、いやそれこそ原初のスタイルを取り戻したという意味においては、非常に高く評価できると感じました。録音文化が生んだ、特殊な音楽の状況に対して、いわば本来の音楽的な場(それは呪術的であり、祝祭的であった)を、ビデオという形で思い出させてくれたのです。
そのような意味も含めて、私は彼のパフォーマンスを「ボーダー・クリアランス」であると考えています。特に近代化が招いたオルタナティヴ(二者択一)な状況に対する、オルタナティヴ(代替案)の提示ではないか。例えば、「黒と白」「大人と子ども」「男と女」「音楽とダンス」「ロックとソウル」「商業と芸術」「善と悪」…。彼の行動や表現の数々を見ると、結局彼なりの方法で、これらを乗り越えようとしているような気がします。その彼なりの方法というものの基本に、アメリカ的な市場経済のシステムがある、というところがまた面白い。金の力で、上記の色々な壁を乗り越えていくわけです。
まあ、また妙に難しそうな講釈に終始してしまいましたが、とにかく、彼は天才であり、最高のパフォーマーであるということです。好き嫌いは別として、誰もまねができないことをしているのですから。
あと、彼に残されたボーダーは「生と死」ではないでしょうか。これを超えたら、彼は神になれるでしょう。それをどう実現するのか、それとも最後には我々凡人と同じ結末を迎えるのか。今から楽しみです。
Amazon The One
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 全日本プロレス祭 アリーナ立川立飛大会(2024.08.17)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
コメント