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2005.07.10

『BSふれあいホール』(つのだ☆ひろ・長谷川きよし・つのだたかし)

nfg_11 NHKに「BSふれあいホール」っていう渋い音楽番組がありまして、その番組の先週金曜日放送分をビデオで観ました。これが実に面白かった。
 出演は、つのだ☆ひろ、長谷川きよし、つのだたかしのお三人。ひろさんとたかしさんはご存知の通り、天才つのだ兄弟の五男と四男(まちがってたらごめんなさい)。ちなみに次男は漫画家つのだじろうさんです。
 ひろさんとたかしさんが共演するのを見たことがなかったので、もともと私の興味はその兄弟対決にありました。音楽的にはジャズ、ブルース、ロック、ポップスのひろさんと古楽中心のたかしさんということで、ちょっと違うことをやっていらっしゃるわけですね。けれども、音楽祭(の特に宴会)でご一緒させていただいているたかしさんは、音楽的にも性格的にも(失礼)まじめな古楽の枠を軽くはみ出していらっしゃるので、いったい兄弟がいっしょにやるとなると、どんなジャンルをどんなふうに料理するのか、非常に興味があったわけであります。
 というわけで、この番組でそのジョイントの様子を初めて拝見拝聴したわけですが、これが予想通りというか、予想以上の面白さ。会場のオジサン、オバサンたちをそっちのけで、見事な宴会が催されました。そして、つのだ兄弟もさることながら、その間をとりもつ長谷川きよしさんのすさまじさ。これにはビックリしました。
 宴会トーク(うちわの盛り上がり)が炸裂しまくり、ホントにお客さん、あるいは視聴者をおいけてぼりにして、つっぱしります。いや、それが最高のエンターテインメントになってるわけですから、全然OKなんですが。私もプロの方々と音楽をやらせていただくことが多い、たいへん幸せなアマチュアなわけですけど、やっぱり音楽家どうしの楽しみ、つまり音楽家が一番生き生きと音楽する瞬間って、実は宴会芸なんですよね。プロの方々と一緒にいて学んだのはこのことです。ふざけているのではなくて、実はとても大切な本質をついている事実だと思っています。つまり、ミュージシャンどうしも、またお客さんも本当の音楽の楽しみを共有している瞬間なわけです。コンサートなんていう、いろいろなところに壁があるものではなくて、真の音楽的空間です。
 先日、私たちの歌謡曲バンドがスタートしましたけれども、これもある意味そういうノリです。かっこつけず、本当に好きな音楽を、ちょっと気楽にやっちゃおう、聴いてる人もきっと楽しいぞ、というノリです。ある意味、これが最も幸せな音楽のあり方ではないでしょうか。いつからなんでしょうねえ。音楽が高尚なもの、非日常的なものになっちゃったのは。
 さてさて、それでこの番組ですが、演奏された曲目を御覧下さい。あ〜楽しい。
  星の流れに(日本のブルースの代表)〜これはひろさんのヴォーカルソロ
  グリーン・スリーヴス(イギリス古謡)〜これはたかしさんのリュートソロ
 (ここからトリオです)
  バナナ・ボート・ソング(ハリーベラフォンテア)
  コメ・プリモ&オンリー・ユー(トニー・ダララ&プラターズ)
  お百度こいさん(和田弘とマヒナスターズ)
  達者でな(三橋美智也)
  ビアーナへ行こう(ポルトガルの曲)
  別れのサンバ(長谷川きよし)
 こんな感じです。すごいでしょ。
 それぞれ、演奏よりしゃべりの方が長い長い。それも、たとえば「達者でな」は対位法だとか、三橋美智也のヴィブラートは上向きだとか、まあ音楽家どうしでなきゃわかんないようなトークばっかり。もう、最高です。お客さんを置いてっちゃってるって書きましたけど、実際にはそんな楽しそうなミュージシャンの方々を観るだけで、お客さんは楽しいんですよね。わかるとかわからないとかじゃなくて、楽しい!を共有すればいいんです。
 それにしても、長谷川きよしさん、唄がうまいのはまあ当然として、彼のギターはすごいですねえ。右手も左手も妙な弾き方なんですが、ものすごくうまい!自己流(失礼)もあそこまで極めるとホンモノですな。世の中にはすごい人たちがたくさんいるものです。
 こんなふうに、笑わせて楽しませて、最後は「すごいな〜」と思わせるのが、本当のエンターテイナーだと思いますよ。プロ中のプロです。
 あと、最後に。みなさん、音楽的なベースはラジオにあったということ。つまり、デジタルオーディオ全盛の今とは違って、好きも嫌いも関係なく、ジャンルも関係なく、とにかく聴かされていたのです。そこから豊かなものを学んだ。そう考えると、今のコンビニな音楽事情もちょっと心配ですね。

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