『オタアニメ!星のフームたん』(星のカービィ 第89話)
こいつを教材に使う教師もいないだろうな。いるわきゃない。
で、そんなヤツがここにいるわけです。一応、メディアのデジタル化の問題点を語る際の資料ということにしております。ものは言いよう。しかし、いろいろと難しい文章を読んだりするより、何よりわかりやすいし、食いつきがいい。今日は1年生と鑑賞。のちディスカッション?
最初に言っときますが(って何度も言ってます)、私はいわゆるオタクではありません。オタク文化研究家…いやけっこうフツウの国語教師です。いえいえ、オタクだと思われたくないのではなくて、オタクになりきれないことをコンプレックスに思っているんですよ。だって、この歳になるまで、マンガもアニメもゲームもほとんど体験していないんですから。
と、いつもの前置きはいいとして、このアニメは人気ゲームソフトから派生した作品だそうで、テレビアニメとしてもそこそこの人気を誇っていました。土曜日の朝7時半から、つまり、今のウルトラマンマックスの枠で放送されていたんですね。ちなみにカービィのあとは例のセーラームーンでした。私も娘たちといっしょにその辺の一連の作品を見ているわけですけど、はっきり言って、この『星のフームたん』の時はぶっ飛びました。カミさんとともに開けた口を塞ぐことができず、馬鹿面のまま30分間…。
簡単に言うと、オタク3人組が現れて、萌えアニメを作っちゃう内容なのですが、かなりアニメ制作現場への風刺がきつく、もうほとんど自虐趣味的作品となってしまっています。カービィ自体も3DCGを駆使して作られているのですが、そうしたデジタル技術が旧来のアニメ制作現場を容赦なく変貌させているわけで(カービィ自身も後期はデジタルセルすら使われていない)、その点を強調して(デフォルメして)表現しておるわけです。低年齢の子どもが見る作品にしては、内容が重すぎますよ。
デデデ大王やエスカルゴン、また魔獣アニゲー(!)の変身したオワルト・デゼニー(!)の言葉はシャレにならない。
「地下牢スタジオで強制労働でげす」「制作の仕事は絶対に眠らせんことぞい」「引きこもりの仕事でちゅ」
(CGは)「革命でげす。これでセルアニメーターは大量絶滅」「アホ監督はのたれ死に」「制作期間の劇的短縮によってコストは半減、お金はガッポリ」
(「それで優れたアニメーターが育つ?夢がねえじゃん」)「夢より利益を上げなくては」
こういうセリフだけでなく、問題なシーンやらあからさまなパロディーが随所に見られますが、いちおう教材としては、上のセリフあたりがポイントですかね。最初は笑って見てますけど、そのうち痛々しくなっちゃいます。
実際、最近はCGによる制作の比率が増え、また、セルにしても海外発注が多くなっているとか。西洋の印刷技術によって、江戸の優れた摺師たちが廃業に追い込まれたのを思い出します。商業的な成功や技術者の負担減が、そのまま芸術性の向上につながらないのは、歴史が証明している通り。難しいところですね。
今や、現代の浮世絵の様相を呈している日本のアニメ。いったい今後どうなっていくのでしょう。そして、デジタル技術って、本当に私たちを豊かにしているのでしょうか。では、このブログは?う〜ん、いろいろな側面を冷静に観察し、分析する必要がありますね。
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