『おそらにはてはあるの?』 佐治晴夫(文) 井沢洋二(絵)
先日ご紹介いたしました佐治晴夫さん。いろいろな著書があるのですが、私はこれをイチおしします。素晴らしい。
「おそらにはてはあるの?」…こういう疑問、あるいは子どもは持たないかもしれません。大昔の人々が思ったように、「おそら」自体が面であって、つまり「はて」であると考える方が普通でしょう。
もし、「おそら」を宇宙という空間としてとらえている子どもがいるすれば、それは大人からのなんらかの情報を基に思考した結果だと思われます。
つまり、この本は、子どものための絵本であるかのようですが、実は宇宙を知っている大人のためのものなのです。実際、私はこの絵本を読んで、たいへん心揺さぶられました。一方で、「おそら」にかなり興味を持っている5歳の娘は、その面白みを理解できないようでした。
ここで語られているのは、有名な「オルバースのパラドックス」です。「宇宙に果てがなく、無限の空間だとすれば、無限の星が存在し、結果として夜空は明るくなってしまう。しかし、実際には夜は暗い」というものです。宇宙論の世界では、すでにこれがパラドックスでもなんでもなくて、単にオルバースの仮説の前提が間違っていたということになっています。しかし、私は、それがたとえ間違いであっても、オルバースの不名誉にはならないと考えています。絵本になってしかるべきであると思います。
つまり、オルバースのような視点・観点を持つことが大切だということです。私たち大人や、その大人が発する情報に翻弄される子供たちは、自分たちをとりまく世界の常識というやつ(結局それは大人が作り出した情報そのものなわけですが)を疑うことをせず、自ら「これは何?これはなぜ?」と考えることを停止しがちです。科学的思考=哲学的思考を忘れるんですね。「これ」が物質や現象であれば科学的思考、「これ」が精神や思想であれば哲学的思考です。
おそらくこうした発想の大切さを、佐治さんは訴えたかったのだと思います。もちろん、子供たちに知ってほしいとも思ったでしょう。子供たちがそういう考えのできる大人になるきっかけにしてほしいと願ったことでしょう。しかし、それ以上に、私たち大人への強いメッセージが存在するように、私は感じました。
単にオルバースのパラドックスを解決するためには「はて」が必要だ、とか、そこから発展してビッグバンに代表される現代の宇宙論に興味を持ってほしいとか、そういうことではありません。佐治さんは最後に神様を登場させています。つまり、オルバースのように疑問を持ちなさい、そしてそれを解決しようと努力しなさい、そしてその結果に素直に驚きなさい、そしてその驚きがほとんど無限ではてのないものであったら、神(サムシング・グレート)に感謝しなさい、ということではないでしょうか。私にはそう読み取れました。
佐治さんはそのような生き方をされているのだと思います。私はそうした佐治さんの生き方に感動するのです。そういう意味で、この絵本は私の大切な宝物になるでしょう。そして、その宝物を子供たちと共有できる日の早く来ることを楽しみにしています。
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