『バッハ以前のドイツ室内楽』 ムジカ・アンティクワ・ケルン
『Deutsche Kammermusik vor Bach』 Musica Antiqua Koln
今日は楽しかったですぞ。考えてみると、かなりマニアックな事態です。
ご近所のチェンバリスト森洋子さんのお宅に、ベルギーから一時帰国しているヴィオラ・ダ・ガンバ奏者村田りかさんが遊びにいらしてまして、そこに私がお邪魔して、急遽アンサンブルする運びになりました。本来は、村田さんの日本帰国計画についていろいろとお話するのが目的だったのですが、お互いの自己紹介もままならぬ内に、大初見大会が始まってしまいました。音楽家どうしというのは恐ろしい(笑)。
演奏した曲は、私が寸前にここからダウンロードした「ブクステフーデのトリオソナタ」。もうその時点でマニアックすぎます。考えてみれば、このド田舎にチェンバロとガンバとバロック・ヴァイオリンと、それぞれの奏者と、ブクステフーデのパート譜がそろっていることがあり得ない!縁とは不思議なものであります。
さて、こうして奏でられた音楽は…。う〜む、面白い。私以外のお二人はプロとは申しましても、いきなりのブクステフーデはきついですよね。それでも何曲か弾ききっちゃいました。今日は妙に湿度が高いこともあってか、みんな汗だく。ほとんどスポーツですね。
ブクステフーデ、私は昔から結構好きでして、オルガン音楽やカンタータなどよく聴いてきました。バッハが尊敬していたというだけあって、なかなか安定感のある音楽を構築しています。今日もみんなで話しましたが、やっぱりドイツっていう感じなんですよね。ちょっとキチッと作り込み過ぎているところもある。もちろん、それは民族的趣味の問題ですから、全然OKなわけですけど。
あと、弾いてて感じたのは、これはプログレしてるな、と。先ほど述べた構築感もそうですし、意外な動きをするメロディーや和声、テンポ、劇音楽のように急変する風景。これはプログレだ。かっこいい。
それで思い出したのが、このプログレをロックしちゃった名演奏、名盤です。知る人ぞ知る、知らない人は全く知らないであろう、ムジカ・アンティクワ・ケルンの1982年の録音です。グラモフォン・アウォードを獲得したこのアルバム、バッハ以前のドイツの渋い作曲家たちに新しい光を当て、いきなり超個性的な解釈で現代に甦らせたものです。3枚組のアナログレコードの中で取り上げられている作曲家は、ブクステフーデ、パッヒェルベル、ラインケン、ローゼンミューラーなど。バッハの影に隠れさせるにはもったいない優れた作品のオンパレードです。
若かりしころの私は、MAKの演奏が大好きでした。ロック上がりだからでしょうか、お行儀のよい演奏より、ちょっと過激なくらいの演奏の方に萌え、いや燃えちゃいました。このころのMAKのメンバーはものすごいですからねえ。いわば、キング・クリムゾンみたいな感じ。メンバー交代の感じやら、出ていった人間の活躍ぶりなど、まさにロックしてますな。
で、このアルバムはその後CDとして一部がリリースされたりしましたけれど、それもお蔵入りになっているようで、なかなか手に入りませんでした。私も最近はアナログレコードを聴く機会が減ってしまいまして、その全貌は記憶の中で鳴り響くのみ(とは言ってもかなり鮮明に鳴ってますが)。
と思いましたら、偶然来月CDが再発売になるようです。1枚ものですから選集になるのでしょうが、再び彼らの名演奏が手に入りやすくなるというのは、うれしいことです。最近思うんですよね。バロックってもっと劇的なんじゃないかって。だから、ゲーベルの解釈はゲテモノではなくて、実は真相に近いのではないかと。
地下室からレコードを引っ張り出してこようかな。今聴きなおせば、また違った感動があるのでは。彼らは先を行きすぎた天才だったのでは。ホント、ロックしてますな。
あとは、村田さんご夫妻(ダンナ様はイタリア人の楽器製作者さんです)の富士山移住を実現させ、我々のブクステフーデのトリオソナタ全曲演奏の方も完結させたいですね。
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コメント
昨日はありがとうございました。楽しかったですね。いつか
富士山にブクステフーデのトリオソナタ全曲が響きわたる日が来ますように!(もちろんほかの曲でもよろしいのですが・・・)
ベルギーにもどったらすぐに弦をお送りしますので、どうぞお試しくださいませ。それでは、また!
投稿: 村田りか | 2005.06.30 22:26
村田さん、どうもありがとうございました。
いやはや、なんか楽しかったですね。
案ずるより産むが易し
一歩踏み出すとなんだか勝手に動き出してうまく行っちゃうものです。
富士山でのアンサンブル楽しみにしてますね!
御主人にもよろしくお伝え下さい。フジヤマはいいですよ。
では、弦の方よろしくおねがいします。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.07.01 05:51
昨日、日本で見つからず、11年前にアメリカで見つけてコピーしてきたラインケンのホルトゥスムジクス第一番を発見しました!私もこのLP集で聴いて感動した口でございます。で、今日はこの日記を発見いたしました。シンクロニシティですね。
でも、御紹介のサイトでダウンロードできるかな?
投稿: 貧乏伯爵 | 2007.03.11 12:53
伯爵さま、私もラインケンの楽譜持ってるはずです。
知り合いがどこか外国の図書館のマイクロフィルムから起こしてもらったものだと思います。
あの曲、というか、あの演奏すごいですよねえ。
その楽譜を持っていって、グレゴリオで弾いたことあるんですけど、なかなかああはならないですね。
今度やってみましょうよ!
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2007.03.11 20:42