MAI-K(倉木麻衣) 『SECRET OF MY HEART』
生徒がほしいというので買ってみました。意外に良い出来でしたね。オリジナルアルバムよりも、私としては楽しめました。
倉木麻衣の歌というのは実に微妙。へたうまと言ってもいいかもしれません。音程はまあまあですが(レコーディングではね)、いかんせん声量がない。そして、特に表現に深さがあるわけではない。しかし、そこがある意味身近であり、カラオケ的であるわけで、つまり今の日本の音楽界では、十分に魅力的だということです。
しかし、いろいろなジャンルの音楽を聴いている自分としては、ちょっと物足りない感じがしていました。カラオケで歌うカミさんの倉木麻衣の方がよっぽど良かったりして。録音的にも、たぶんコーラスだと思うんですが、エフェクターでごまかされてる感じが強くしました。まあ、それが今のJ-POPなわけですけど。
では、そんな倉木麻衣が、MAI-Kとしてアメリカに挑戦したこの作品はどうでしょう。
これは、オリジナルよりも正直いいですよ。まず、アメリカ向けのアレンジがグー。日本の子ども向けの、あのちゃらちゃらした感じは減り、骨太の作りになっています。2002年当時のアメリカのはやりとも言えますが、低音をズシンズシンと効かせます。J-POPのように音で埋め尽くさないのがいいですねえ。しっかり空間があるから、よく響く。
ボーカル自体もまあまあうまいじゃん、という感じです。とてもアメリカのシンガーには聞こえませんけど。英語はやっぱり日本人英語だし。あいかわらず声量ないし。ただ、エフェクトも控え目で(リバーブはかかりまくってますが)、繊細な魅力がうまく出ていますね。
で、ですねえ、これってやっぱりジャパニーズ・ロリなんですよね。ジャケット写真、声、へたうまな英語、そして、子どもの歌がちょっと背伸びしたような楽曲。向こうの人には絶対にロリっぽく聞こえますよ。日本人の女性は、西欧圏ではかなり幼く見えるそうですね。今、アメリカで人気のPuffyも、実年齢より10歳くらい若くとらえられてるらしい。つまり、エキゾチックなロリータなんだと思います。実際、このアルバムのジャケの裏や内側には、京都清水寺の風景が幻想的に映し出されています。日本人からすると、かなりこそばゆいですなあ。
以前書きましたね、なぜ日本人がアメリカで売れないか。アメリカのまねごとをしてもダメなんですよね。「上を向いて歩こう」は日本語の日本の唄だったから売れた。英語で売れた(ビルボードtop40入り)のは、私の記憶では、ピンク・レディー(Pink Ladies)の「Kiss in the Dark」だけのような…。もちろん、このMAI-Kもぜ〜んぜん売れませんでした。Utadaでもきつい。ドリカムなんかもってのほか。松田聖子さまでも無理。ロリの市場が増えているとはいえ、それだけでは大ヒットは難しいですね。
てなわけで、このアルバムは日本人が聴くべきだった。アメリカ的な作りで日本人に聞かせるというのが良かったのでは。洋楽への入り口としても最適だと思いますよ。日本で売り込むべきだったのではないでしょうか。あまり出回っていませんからね。
あっ、そうそう最後に。私が買ったのはアメリカ盤です。ジャケットの匂いが、やっぱりLP時代の輸入盤の匂いなんですよ。いったい、あれは何の匂いなんでしょう。知ってる方教えて下さい。
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