独眼流立体視の術
私はあんまり教科書を使わない教師です。こんなこと宣言するとその筋からお叱りを受けそうですね。まあ、理由やら何やらは面倒ですから書きません。これをお読みの方にはほとんど関係ありませんしね。
ただですねえ、年度の最初の授業では、私も生徒も教科書をなめるように見るんですよ。あっ、読むんじゃなくて見るですよ。それはですねえ、だいたい国語の教科書というのは、最初にキレイなカラー写真が載ってるんですよ。記憶おありでしょう。今一年生で使っている教科書の写真はいいですよ〜。特に漢文パートの「泰山」とか「楓橋」とか。それをみんなで、オーとかハーとかアレーとかいいながらなめるように見るんですよ。そして、私のフツウでないイリュージョン授業が始まるわけです。
いや、幻惑するのが目的ではありません。逆。幻惑から解放してあげるのです。つまり、世の常識やら既成概念やら思い込みやら何やらから解放するのです。それがその人の人生の充実…まあ簡単に言えば、毎日楽しく生きるってことですな…を実現する手っ取り早い方法だからです。
それでは、なぜそのために教科書の最初の写真の凝視なのか。それは、こういうことです。
生徒たちは、あの写真たちを片目で見ています。そしてオーとかなんとか言うのです。実は、彼らの目には、いや脳には、見事な奥行き感を持った3Dの「泰山」や「楓橋」が広がっているのです。もうそこで常識が崩れる。さらに世界史の教科書を出してこさせて、とどめです。
普通、私たちの常識は、両目で見るから立体感を得ることができる、と思い込んでいます。また、写真は平面であるから現実のようなリアルな立体感は得られない、とも思っています。そうですよね。でも実は、片目で写真を見ると、驚くべき立体感を味わえるのです(10人に一人くらい「わかんな〜い」というのがいる)。
では、皆さんにもやっていただきましょう。この写真をクリックして大きくしてみてください。
最初は両目で見て下さい。まあ狙ったような構図ですから、それなりの立体感はあるでしょう。次に片目で見てみてください。そして、脳に思い込ませる。(丸太がこっちに向かって来る…)(子どもの後の風景は10メートルくらい向こうにある…)ほら、どうですか。ものすごいリアルな立体感でしょう。はい、次。
秋桜はもちろん、湖面の奥行き感とか、バックの山々などにも注目してください。ちょっと行きすぎ、はりぼてのような立体感ですらあります。ホントはパンフォーカスだともっと楽しいんですけど。まあ、初歩としてはこれはなかなかいい写真です。はい、次。
見れば見るほど一本一本の木の前後関係がはっきりしてくる。どうですか。面白いでしょう。
なぜ、こういうことが起きるのか。それが生徒への課題です。皆さんも考えてみて下さい。最近ではこの原理を利用してケータイの3Dアプリを作っているところもあるとか。南伸坊さんも何かで書いてました。私はこのことを少年時代に父から教わりました。たいそうビックリしたものです。父は自分が発見した方法だと豪語しておりましたが、ホントのところどうなんでしょう。
ちなみにこの立体視、なぜか写真が鮮明であればあるほど、リアルになります。それで、面白いのはハイビジョンテレビです。普通のテレビだとイマイチなのですが、ハイビジョンになると、がぜん効果が増します。つまり、全ての放送、例えばスポーツ中継なんか、動画で立体ですから、ものすごい臨場感であります。皆さんもとりあえず、手元にある厖大な数の写真を片目で見直してみて下さい。驚きの連続ですよ。あと、絵画ですね。広重なんか最高です。
さあ、こんな具合に、世の中には意外な事実が潜んでいます。それを発見して楽しめる、そういう視点を持てるよう、生徒たちにいろいろなこと(余計なこと)を教えていきたいところですね。まあ、そんなことばっかりやってるんで、生徒がみんなお変人になっていくのか…。
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