『イノセンス』 押井守監督作品
CASSHERN・ガーフィールドとともに、フォトグラファーさんから借りた作品です。ここでも全くのシロウトがこういうマニアックな作品を語ることをお許し下さい。
まずお断りしておきますが、私はGISは観ておりません。また、攻殻機動隊の原作も読んでおりません。ですから、ここに書く私の感想は、まさに根も葉もない私的なモノです。ご了承を。
まず結論から。結構楽しめました。こうして、ガーフィールドとイノセンスを続けて観ると、キャシャーンの特殊性がはっきりわかりますな。ストーリー・テリングの方法はいろいろでしょうけれど、やはりそこに巧拙はありますよ。アイデアばかりが先行し、やりたいことを盛り込んでばかりで削る努力をしないと、あのようになってしまうのでしょう。その点、さすが押井さんは百戦錬磨。うまいこと全体のバランスをとっていました。
あとは、日本語でしょうね。名言箴言を引用しまくるという、ある意味禁じ手を使っているとは言え、やはり言葉自体は重く深いものですから、キャシャーンとは大違いでした。脳内で文字にも変換されないようなお言葉もずいぶんありましたけど(劇中のように、脳内で外部ネットワークを検索できればなあ)、響きだけでも充分耐えられました。
CGについては、基本的に私は古い人間ですので、ちょっと抵抗がありましたね。アニメの部分とのマッチングの悪さ、いや、それがたぶん技法や表現になっているのでしょうが、やはりちょっと辛かった。
私は、人間の脳内イメージというのは(特に夢や過去の記憶は)、静止画の集合体であると考えています、というか実感しています。ですから、アニメや映画は当然しっくり来るんです。CGはその点どうも気持ちが悪い。フィルムチックに、あるいはアニメチックにすることは簡単なはずですし、将来はそういう方向に進むと予想していますが、現段階ではリアルさの追求が結果としてウソ臭さを生んでしまっている。今CGは、草創期であるとともに既に過渡期であると思うのです。実写やアニメと絡ませるのなら、当然そちらへ歩み寄る必要があるでしょう。
新しいことができるようになる、すなわちできることが多くなると、人間は喜び勇んでそれをフル活用しようとする。人類的規模の若気の至りです。クリエーターたちが年をとれば、自然と自然な方向、つまりメディア本位ではなく人間本位の本道に戻ることでしょう。
さてさて、この作品を観て、シロウトの私が最も強く思ったことは、なぜ、アニメ的世界では未来はあのように描かれるのかということです。つまり、レトロ・フューチャー的イメージ。そして、アジアン・テイスト。千と千尋しかり、キャシャーンしかり、このイノセンスしかり。漢字満載の謎の未来空間です。これは実に興味深い。日本人の歴史観、文化観にかかわることだと思います。
不思議なものですね。それまでのウン千年間の記憶なのでしょうか。文化は西からやってきた。大陸からやってきた。縄文文化に突然漢字の大群が押し寄せてきた。超先進国、超未来がやってきた。西欧化したのはここ百年そこそこ。西欧はとっくの最近(?)、日本の現在になった。もう未来ではありません。そんな時、潜在意識の底流から吹き出すイメージは、やはり西の隣国…。
あっ、最後に、これに似たイメージを見出したのは私だけでしょうか。
Amazon イノセンス
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コメント
> アニメの部分とのマッチングの悪さ、いや、それがたぶん技法や表現になっているのでしょうが、やはりちょっと辛かった
あー、コレはツラかったなぁ。第一、CGの多用しすぎは単純に見てて疲れるがな。これじゃ「アニメにCGを使いました」じゃなくって、「CGにストーリーをつけてみました」。…俺はアニメを見たかった(笑)
リアリティと嘘っぽさを同時に抱え込むCGというツールは、押井さんお好みのアイテムのようですね。「イノセンンス」は「押井が自分の趣味を丸出しで作った」と言われていたので多少の覚悟はしていたのですが、実際見てみると、うーん、チョットこのCGだらけにゃアタマ痛いよ(笑)。
CGと実写の相性の良さは、もう何年も前からハリウッドが証明していますが、アニメとの相性も悪くないようなのです。
宮崎監督も、たとえばこの前の「ハウル」とかで特に、結構な頻度でCGを多用してますが、全然気にならないです、というか、あの部分、この部分と指摘してもらわないと全然気がつかない。
どうやら、CGは今や、どのような映像表現にも自由自在に使える便利なツールで、自然なカンジで溶け込ませることぐらいオチャノコサイサイ、あとはどういう表現に奉仕させる為に使うのかという話だけのようです。
となると、アニメ部を、CG部でズタズタに断絶させるように作ったのは、押井さんが正確に意図してやったのだ、ってコトになる。あーしら客は、アニメ絵で展開される世界にリアリティを感じつつ没頭している最中だというのに、いきなりCG製の嘘っぽい絵を流し込もうとするのだから、困惑することこの上ない。しかも、それまでリアルだと思っていた絵は記号論の複製品で、流し込まれたCGこそリアリティの権化だというのだから、なお始末が悪い。まぁそんなコンナで、なんだかムズムズと座りが悪いのだな、この映画は。。。
投稿: illusia | 2005.05.15 00:50
甲殻機動隊(GIS)が大好きな私。この映画も非常に観たいのですが、嫁が GIS を観てくれないので、自分もレンタルできずにいたのです。でも、そうですか、いきなりこちらから入っても大丈夫そうですね。
ちなみに、同監督のアバロンはご覧になりましたか?押井監督の CG に対する考え方が良くわかると思います。
投稿: LUKE | 2005.05.15 02:05
illusiaさん、LUKEさん、コメントどうもです。
押井さんのことですから、当然私たち以上にCGについて考えているでしょうし、
私たちは彼の意図するところに乗っかって、振り回されてるんでしょうね。
そう、もともと作品自体が思いっきりフィクションなわけですから、
アニメとCGとどちらがリアルか、なんて考えるのも躍らされてる証拠なのでは。
実は今日、「ビューティフル・ドリーマー」を借りてきました(笑)。
次は「アバロン」にします。
また、報告できると思います。
なんて、結局躍らされるのが楽しいんですよね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.05.15 12:04